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第32話 決着、そして他の部活

 俺と光輝が先輩たちと戦っている間、アナは鬱蒼と生い茂る森の中を駆け抜け、敵砦へと向かっていた。


 「はぁ、はぁ」


 息を切らしながら鬱蒼と生い茂る森の中を抜けて、砦の前にたどり着いたアナは、しばらく息を整えつつ、余り体力の無さに思い悩んでいた。


 (思ったよりも息切れが早い、もう少し体力を付けないとだめですね……努力しないと……皆の足を引っ張りたくない……それに、誰かに助けられてばかりは嫌だから……)


 「よし、やりますよ~~」


 アナは気合を入れて深く集中した。


 本来、この精神空間に装備品及び防具は持ち込めない。つまり、腕輪の無いアナは魔法を使うことが出来ないのだ。しかし、シン(レイ)の作った特別な腕輪は精神空間に持ち込めるため現実と同じ様に魔法が使えるのだ。


 アナは膨大な魔力を集め、深くイメージすると魔法を唱えた。

 

 「氷魔法 アイシクルランス」


 アナは頭上に一瞬で巨大な氷の柱を作り出す。しかし、その氷の柱はあまりにも巨大で、砦の大きさを有に超えるほどの大きさだった。そんな巨大な氷柱を敵の砦に向けて放つと巨大な氷柱は物凄い勢いで飛んで行き、敵の砦に命中した瞬間、残骸が飛び散り土煙が舞い上がった。アナは思わず腕で顔を覆った。


 マップ全体に終了の合図が鳴る。


 一方でグレイとイリスは戦闘を始める直前で終了の合図が鳴ったため不満そうに言った。


 「こんな幕引きかよ……」


 「次やるときは決着をつけたいわね」


 そして、皆は光に包まれ現実へと戻った。


 現実に戻り、椅子に座りながら目を覚ますと、メイルが響と会話していた。


 「戦闘中に死亡すると自分のチームの砦で復活する。復活は三回まで。四回目は完全破壊で敵チームに得点が入るの。それに本来は旗を奪い合い、どちらが高得点なのかで競う遊びだから今回みたいなのは稀だね」


 「楽しそうだ。刀の腕を磨くいい練習になりそうです」

 

 「そうでしょ!!入部しない?」


 メイルは響に詰め寄るように近づいた。響は少し考えた後、笑顔で答える。


「まだ、他の部活を見たいので返答はもう少し待って貰えないだろうか」


 メイルは少ししょんぼりして小さく呟く。


「そっか……」

 

 その会話に光輝が割って入り、いきなり宣言した。


「俺、入部します!!」


 その言葉にメイルは一気に明るくなった。


「ホント!!よかった~~~」


 メイルは嬉しそうに言いながら光輝に入部届の紙を差し出す。光輝は何の迷いもなく入部届にサインした。


 その一方で他の人達は、お互いの戦闘について称賛し合い、改善点などを話し合っていた。しばらくして会話に一段落着くと、メイルに「入部する気はあるが他の部活を見てから決めたい」と伝え、部室を後にした。


 俺は廊下を歩きながら、皆に行きたい部活があることを伝えた。



 「次、見てみたい部活があるんだけど、いいかな?」


 皆は快く賛成してくれた。そして話し合った結果、俺が希望した鍛冶師研究部のほか、いくつかの部活を見て回ることになった。


 俺達は、部室棟を出て鍛冶師研究部の工房へ向かった。すると工房のある方向から多数の煙と鉄を打つ槌音が途切れることなく聞こえてきた。工房の入口に着くと、中から一人のドワーフが現れ、俺たちに声をかけてきた。


「入部希望者か?」

 

 突然の問いに、俺は慌てて答える。

 

「あ、いえ。興味があって見学に来ただけです」


 ドワーフは小さく「そうか……邪魔はするなよ」とだけ言い、無愛想に工房へ戻っていった。


 俺たちが中へ入ると、そこでは何人ものドワーフが槌を振るい、鉄を鍛えていた。武器を作る者、防具を作る者、それぞれが黙々と作業に没頭している。その奥で、見覚えのある人物が槌を握っていた。グロムハル王国第一王子、ドルドだ。


 「やはり駄目か……」


 彼は何かに悩んでいる様子だった。気になった俺は声をかける。


 「ドルド様、どうかされましたか?」


 俺に気づいたドルドは、思い出したように名を呼んだ。

 

 「お前は……確かレイ・ヨザクラだったな。お前も入部するのか?」


 「いえ、今日は見学に来ただけです」

 

 丁寧に答えると、ドルドは嫌そうな顔をして言った。


 「公式の場以外でその言葉遣いはやめてくれ。気持ち悪い。それにオイラは鍛冶師だからな」

 

 なるほど、そういうことか。俺は納得し、言葉を崩して改めて尋ねる。


 「わかった。ところで、何を悩んでいたんだ?」


 ドルドは少し黙ってから口を開いた。


「実は……入学の数か月前から何本も刀を打っているんだが、どれも切れ味はいいのに折れやすい。どう改善すべきか悩んでいてな」


 俺はドルドの話を聞くと、ドルドの悩みを改善すべくアドバイスをした。


「それなら、炭素量の少ない鋼を炭素量の多い鋼で包み込むといい。具体的には、木炭の量を調整した玉鋼を二種類作って組み合わせるといいぞ」


 「なるほど、木炭の少ない鋼を木炭の多い鋼で包むわけか……」


 ドルドは納得したように頷いた。


 「ありがとう。それにお前さんも鍛冶師か?」


 ドルドは礼を言うと、俺が鍛冶師なのかを尋ねてきた。俺は迷うことなく答えた。


 「ああ、俺も一応、鍛冶師だ」


 「なら今度、お前さんと相槌をしたいものだな」


 そう言うと、ドルドは再び作業に戻っていった。

 

 その後も工房を見て回ったが、特別変わったものはなかった。ただ、並んでいる武器や防具は、さすがドワーフの手によるものだけあって、どれも質の高い品ばかりだった。


 工房を後にした俺たちは、アナが行きたいと言っていた料理研究部へ向かった。部室では多くの女子生徒が菓子作りや料理に励んでおり、俺たちもその活動に混ざることになった。

 

 皐月は部室にあった香辛料と大和産の米を使ってカレーライスを作り、響は和菓子の三色団子を作っていた。ステラはなぜか鍋でポーションを作り始め、光輝はダークマターを生成して周囲を騒然とさせた。俺はというと、アナに「お菓子を教えてほしい」と頼まれ、一緒に菓子作りを楽しんでいた。


 次に訪れたのは、ステラの希望する魔導具作成部だ。俺たちは見学していたが、ステラは早速魔導具を作り始め、その精度と性能の高さに周囲は驚愕。周囲の人達がアナに「ぜひ入部してほしい」と詰め寄ったため、俺たちは慌ててその場を後にした。


 その後は響の希望する部活へ向かう途中、音楽部の勧誘に出会い、皐月が興味を示したため急遽そちらへ。部室では数名が演奏しており、誰が作ったのか分からないその曲名は「ぴょんぴょんウサウサ」。しかも演奏していたのは兎人族で、俺と光輝は(何の冗談だよ)と思いながら、爆笑寸前で笑いをこらえるのに必死だった


 続いて響の希望する剣術研究部では、なぜか俺と皐月が手合わせをすることになり、勝負は俺の勝ちで終わった。さらに光輝の希望で魔法研究部を訪れると、彼はなぜか公爵令嬢エルメシア・ルージュと談笑しており、俺たちは魔法の練習に励んだ。


 こうして一通りの部活を回り終える頃には夕方が近づいていた。そして最終的に、俺たちはレギオンフラッグボードエンジョイ部に入部することを決めた。


 帰り道、俺たちは今日一日の出来事を振り返りながら談笑する。


 「それにしても、料理研究部ではヤバかったな~」


 俺が思い出しながら言うと、皐月がうんうんと頷きながら話し始める。


 「そうだね~光輝がダークマターを作るし……」


 「ステラは何故かポーションを作り始めるし」


 俺がそう言うと、ステラは話題を逸らすように口を開いた。


 「三色団子美味しかった……」

 

 その言葉にアナも思い出したように微笑む。


 「そうですね~響の三色団子、美味しかったです。それに皐月のかれーらいすと言うのもとても美味しかったです」


 褒められた皐月と響は嬉しそうに答える。


 「お口に合ったのなら何より」


 「カレーの香辛料の配合を覚えていたので、それに他の人にも食べてもらえて良かったです」


 俺たちはその後も笑い合いながら、楽しい気分で帰路についた。

 

予定を過ぎてしまい申し訳ありません。次回は来週に投稿できればと考えています。


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