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第31話 先輩と勝負

 「コマリンク・スタート」と唱えた瞬間、俺の意識は別の空間へと引き込まれた。目を開けると、そこには深い森が広がっていた。


 「確か開始前に見たボードでは、全体が森で中央に川が流れているステージだったな」


 このゲームのフィールドはランダムで決定される。山岳、谷、砂漠など多種多様で、その数は膨大だ。同じフィールドが二度と出ないほどのバリエーションがある。

 

「レイ」


 俺は名を呼ばれ振り返ると、そこにはアナと光輝が立っていた。二人の背後には大きな青い砦がそびえている。俺は一度砦を見上げ、再び二人へ視線を戻した。そこで目に入ったのは、光輝が背負っているのは俺もよく見慣れた武器だった。そう、嫌な予感が的中したのである。


 光輝は背に、狙撃銃(SVD)を背負っていた。


 俺は思わずツッコミを入れたくなる衝動を必死にこらえる。

 

(なぜそこで銃をチョイスするんだ!)


 『みんな……聞こえる?』


 ステラの声が頭の中に響く。俺たちはそれぞれ念じて答えた。


 『聞こえるぞステラ』


 『聞こえます。念話は初めてなので……思ったよりも不思議な感覚です』


 『これが念話か、頭の中で皆の声が聞こえるのは不思議な感覚だな。それと、聞こえるよ』


 全員の返事を確認すると、ステラは考えていた戦略を語り始めた。彼女の説明によれば、この砦から二時の方向に敵の砦があり、十時から一時の範囲に敵の旗が散らばっているという。そこでチームを二手に分け、一方は旗を狙ってくる敵プレイヤーを迎え撃ち、足止めをする。

 

 このゲームでは、敵の旗を奪って自分たちの砦に持ち帰れば得点となる。奪われた旗も、敵を倒して取り返し砦に戻せば、リーダーが再配置できる仕組みだ。


 もう一方の役割は敵砦の破壊。砦を落とせば得点に関係なく即勝利となる、一発逆転の手段である。


 『つまりは一発逆転狙いか?』


 俺が尋ねると、ステラは少し間を置いて答えた。


 『はい……なので、砦を破壊できる威力の魔法を出せるレイかアナにお願いしようかと……』

 

 『では、砦の破壊には私が行きます』


 『OK。それじゃあ、俺とレイで敵の足止めをする』


 『それじゃあ行くか!!』

 

 俺の掛け声とともに、チームは二手に分かれて動き出した。


 

 一方、現実世界では、皐月と響がボード上に映し出されたスクリーンを見つめ、そこに映る移動する俺と光輝を目で追いながらメイルに質問を投げかけていた。


「なるほど……プレイヤーの意識は別空間にあるから、現実では眠っているように見えるのだな」


 響は眠る俺たちを一瞥(いちべつ)し、再びボードへ視線を戻す。


 砦が置かれているマス目からレイと光輝のコマが動き出すと、メイルが補足した。


「これは味方や敵のおおまかな位置を示してくれるの。それを念話で仲間に伝えたり、作戦を立てるときに役立てるのよ」


 

 その頃、俺たちは移動しながら戦闘時の立ち位置について念話で話し合っていた。


『光輝は後衛から援護してくれ。俺は前衛で相手を引き付ける』


『了解。おそらく敵は三人でこちらに向かって来る。一人は後衛で魔法使い、もう一人は前衛でカスタム型の刀使い、そして、最後に厄介なのが短剣使い……強敵だから気をつけて』


 光輝は敵の武装や役割を細かく説明する。その様子に、俺は思わず首をかしげた。

 

(やけに詳しいな……そういえば……この世界、光輝がβテストやっていたゲームの世界だった。)


「はあ~」


 俺は思わずため息を漏らした。


 (この異世界に長く居すぎて忘れていたな……。だが、この世界は本当にゲームの世界なのだろうか?)


 そんなことを考えていると、ステラから念話が届いた。


 『もうすぐ前方の川で敵と遭遇する。気をつけて……』


 『了解。俺は後方で狙撃する。狙撃位置につくから、後は任せた』


 光輝はそう言って俺から離れていった。俺はそのまま進み、川原に出る。すると突然、川向こうの森から火の玉が飛んできた。俺は咄嗟に右へ身をかわす。


「危なっ」

 

 俺が思わず声を漏らすと、遠くからかすかにイリエの声が聞こえた。

 

「ごめん、外した」

 

 次の瞬間、俺目掛けてイリスが刀を振り下ろす。俺は素早く刀を抜き、イリス攻撃を刀で受け止め、鍔迫り合いになった。

 

 「あなたも刀を使うのね」


 イリスはそう言って一度距離を取る。直後、前方から再び多数の火の玉が飛来。俺はそれを避けながらイリスへと迫った。


 「はあっ!」


 俺は右から袈裟斬りで、イリスを斬りつける。イリスは身を翻してかわし、声を張り上げる。


「グレイ、今よ!!」


 その声に応じ、イリスの背後から短剣を構えたグレイが迫ってきた。次の瞬間、小さな銃声が響き、グレイが倒れ込む。


 『ナイスアシスト、光輝』

 

 光輝のサイレンサー付き狙撃銃による援護だった。しかし、この世界では銃の威力は限定的だ。魔物を狩ることで種族差はあるが人類の肉体は徐々に強くなるため、本来、地球では致命傷となる銃の威力でも、この世界では足に軽い負傷を負わせる程度にしかならない。


(ナイスアシストではあるが……威力がな~~~)


 俺はそんなことを考えつつ、グレイが倒れたその隙を見逃さなかった。俺はすかさず、地面に倒れているグレイに攻撃しようとした。しかし、イリスがそれを防ぐ、その隙にグレイは後ろへ下がろうとした。


「逃がすか!! 闇魔法 シャドウバインド」


 俺が魔法を唱えると、後ろへ下がろうとするグレイに黒い鎖が巻き付く。イリスは俺に斬りかかり、刀同士の激しい打ち合いとなった。


 一方その頃、イリエは光輝が潜む方向へ無数の火球を放ち、森を炎で包んでいた。その間に彼女はグレイへ駆け寄り、解呪の魔法を唱える。


 「光よ、我が味方の闇を祓う光となれ。 光魔法 ルクスディスペルシオン」


 イリエの杖が黄色く光り輝くと、グレイを拘束していた黒い鎖は粉々に砕け散った。


 イリエが拘束を解除している間、俺はイリスと刀で打ち合っていたが、打ち合いの間どうやら俺達の狙いに気づいたようで話しかけてきた。


 イリエが拘束を解いている間も、俺とイリスの刀はぶつかり合い続けていた。やがてイリスは、俺たちの狙いに気づいたようで、俺に話しかける。


 「やってくれたわね」

 

 「何が!!」


 「あなた達の狙いは拠点の破壊。……本来なら拠点は物凄い耐久値で、破壊は不可能。でも、あなた達の魔法の威力なら可能……。完全に失念していたわ」


 拠点の破壊に気づいたイリエとグレイは、自分たちの拠点へ引き返そうとした。光輝はそれを阻止しようと、イリエに向けて狙撃する。弾丸は彼女の足に命中したが、イリエは怯むことなく魔法を唱えた。

 

 「火よ、我が敵を無数火の玉にて焼き尽くせ 火魔法 ファイヤーバレット」


 無数の火球が、光輝の潜む方向へと飛んでいく。俺もグレイを足止めするため、魔法を放った。


 「させるか!! 火魔法 ファイヤーランス」


 俺は魔法を唱え三本の炎の槍を生成し、グレイに放つ。


 「食らうかよ!! 水よ 水魔法 ウォーターウォール」

 

 グレイは水の壁を展開し、炎の槍を防ぎ切った。火と水がぶつかり合い、辺りに白い水蒸気が立ち込める。グレイはウォーターウォールの中心を突っ切り、俺に飛びかかる。同時に、イリスも俺に斬りかかる。

 

(くそ、避けられない。それなら)

 

「闇魔法 ダークネススモーク」

 

 黒い煙が俺の周囲を覆い、視界を奪う。イリスとグレイは同士討ちを避けるため動きを止め、イリスが黒い煙を払うべく風魔法を唱えた。


 「風よ、 我が周囲を風にて散らせ。風魔法 ウィンドブロウ」


 風が巻き起こり、黒い煙は一気に晴れていく。視界が戻ったとき、イリスとグレイの目の前には、俺が新たにもう一本の刀を携えて立っていた。


 「「その刀、どこから……」」


 二人は驚愕しつつも、警戒の色を強める。


 「さあ、第二ラウンドだ。」


 俺は二人にそう告げる。

 

予定を大幅に過ぎてしまい申し訳ありません。次回は来週に投稿できればと考えています。


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