第28話 学園の入学式
「レイ、おはよう」
女子寮の前で待つ俺のもとへ、アナが小走りに駆け寄ってきた。
「おはよう、アナ。それからステラも」
「うん……」
眠そうに目をこすりながら、ステラも女子寮の出入り口から出てくる。
「手紙開く……」
「ああ、クラス分け発表の手紙な」
「皆で一緒に開きましょう」
この手紙は今朝届いたもので、自身の試験結果と所属クラスが記されている。クラスはAからHまでの八段階に分かれ、知識や実技などを総合した実力の近い者同士が同じクラスに編成される。なかでもAクラスには最も優秀な生徒が集められる。クラス分けは年に一度行われ、努力を重ねた者は上位へ昇格し、怠った者は降格する仕組みだ。
「では、せーので開きましょう」
アナの掛け声とともに俺達は紙を開いた。
「わあ~。皆同じAクラスです。」
アナは嬉しそうに告げた。俺はアナと同じクラスになれたことにほっとしたが、自分の試験結果が気になって仕方なかった。三人のなかではアナの総合点が最も高く、その次がステラだ。一方、俺の得点は書かれていない。もちろん予想はしていたが、代わりにエルセリアからの手紙が丁寧に同封されていた。要約すれば「満点だから点数を載せる必要はないだろう」という内容だった。そして、第一魔法修練場の修理費の請求書が同封されていた。俺は目玉が飛び出る金額に、請求書の紙を静かに閉じた。
クラス発表の手紙を見た後、俺たちは入学式が行われる講堂へ向かった。すでに多くの生徒が集まっていて、座席などは決められていない様子だった。職員の指示で席を詰め、レイ、アナ、ステラの順に並んで座った。
三人で他愛もない会話を交わしながら待っていると、講堂内に人が徐々に集まって行く講堂内のざわめきが次第に大きくなる。そんな中、壇上に一人の妖艶なエルフが立つと、話し声が聞こえる講堂は一瞬で静寂に包まれた。壇上に立つ妖艶なエルフ、そう、エルセリアが変身した姿だ。幼い見た目では他人からなめられるので、人前に立つ時は変身し、真の姿を知る者は少ない。
「新入生、入学おめでとう。学園長のエルセリアです。私は新しい生徒を見られる事を嬉しく思う。そして、新入生には5年間、この学園で様々なことを学んでほしい。最後に注意点だ。入学前には伝えてあるとは思うが、毎年問題を起こす生徒がいるのでもう一度伝える。学園内では権力を振りかざすのは禁止だ。この学園には様々な国の生徒が集まる。最悪の場合、国家間での揉め事にも発展する。この学園に国家間での揉め事を持ち込まないでくれ。以上だ」
学園長エルセリアの挨拶が終わり、生徒会長のリーゼが学園内でのルールなどの説明、その後に教員が今日一日の予定や注意事項など、長々と説明した。
(入学式はどの世界でも退屈だな)
入学式が終わる頃には俺はウトウトして眠くなった。
「レイ、入学式終わりましたよ」
「すみませんウトウトしていました」
「次は教室に移動です。行きましょうレイ」
アナはウトウトして眠りそうな俺の肩を揺らして起こした。アナに起こされ、俺とアナ、ステラの三人はAクラスの教室へ向かった。
「Aクラス。ここですね」
アナが教室の扉を開くとすでに大勢の人が教室にいた。教室には第二王子カエク、ドワーフ族の第一王子ドルド、聖女セシリア、響など見知った人物が多くいた。そして、珍しい事にエルフ族の女子生徒がいた。
教室の中に入り、机の方へ足を進めると、突然俺の背後にある教室の扉が開き、俺は思わず振り返った。
教室に入ってきたその人物に、俺はとても驚き、激しく動揺した。
(光輝と皐月……。なんで二人がこんな所に、でもどうして、どうやって……)
俺は動揺の余り何も考えられずに立っていた。その一方で響がアナ達に気づき、近づいてきた。
「やあ、おはよう、アナ、ステラ、皐月」
響が声を掛けると、それに気づいた皐月も歩いてアナ達に近づき、嬉しそうに声をかけた。
「おはようございます。アナ、ステラ、響、また会えて嬉しいです。」
ステラは少し嬉しそうに言った。
「皆同じAクラス……嬉しい……」
「はい、私も皆さんに会えて嬉しいです」
俺はさらに驚いた。そう、幼馴染の皐月がこの場にいることが驚きなのに、アナ達と仲良く談笑しているからだ。
「顔色悪いけど大丈夫か?」
光輝は顔色の悪い俺を心配に思ったのか声を掛けてきた。
「うん、大丈夫だ。心配してくれてありがとう」
光輝に声をかけられ、なぜだか俺は少し落ち着いた。すると、丁度教室の前の扉が開き、教師が入ってきた。
「全員席につけ、ホームルームを始めるぞ」
教師の掛け声で皆席に着き、俺もアナの隣の席に座った。
「私はこれから五年間、君たちの担任を務めるミカエルだ、担当教科は武術と魔法学だ、よろしく」
そう、俺の担任はかつての弟子であるミカこと、ミカエルだった。俺は今日、驚きすぎてミカが教師になった事を全く驚かなかった。
「まず、一人一人自己紹介と得意なこと話してもらう。左の一列目の席から順番にな」
「私からですね。」
そう言って、エルフ族の女子生徒が立ち上がり、自己紹介を始めた。
「フェアリスティア王国から来た。エルフ族のリル・アルネスです。魔法と弓が得意です」
「ラタトス王国から来た。人間族のカエク・レナウン・ラタトスです。得意な事は剣を振るうこと、気軽に話し掛けてください」
「グロムハル王国から来た。ドワーフ族のドルド・ドロリ・グロムハル。俺は鍛冶師だ、武器を作ることが得意だ、よろしくな」
「神聖システイム教国から来ました。セシリアと申します。得意なことは傷を癒やすことです」
「ラタトス王国、侯爵家の次男ギール・ルブルーテだ。得意な魔法は火魔法だ」
その後、Aクラスの生徒達は次々と自己紹介を行い、俺の番が差し迫って行った。
「ラタトス王国から来ました。エルメシア・ルージュと申します。得意なことは花を育てることです。皆さん気軽に話し掛けていただけると嬉しいです」
「ラタトス王国から来た。コウキ・イノウエです。得意なことは絵を描くことです。よろしくお願いします」
「ラタトス王国から来た。サツキ・クスノキです。お菓子作りが得意です。よろしくお願いします」
「大和公国から来た。ヒビキ・コノエと申します。得意なことはお菓子作りです。」
俺の自己紹介をする番が来ると、俺は少し緊張しながら立ち上がり自己紹介を始めた。
「レイ・ヨザクラです。得意なことは武器や防具を作ることだが、その中でも刀を鍛えるのが得意だ」
俺は自己紹介が終わると少しほっとして席ついた。
(やはり学校の自己紹介は少し緊張するな……)
俺が席に着くとその後、アナ、ステラの順番で自己紹介を行い、何事もなく自己紹介を終えた。そして、ミカは今後の授業について説明してくれた。必修科目と選択科目があるらしく、必修科目が数学、語学、歴史学、地理学、政治学、生物学、防衛軍略学があり、数学、語学、歴史学、地理学、政治学は読んで字の如くで数学は計算など、語学はアシューラ大陸にある言語を学び、歴史学はアシューラ大陸の歴史を学ぶ、地理学はアシューラ大陸の地理について学ぶ、政治学はというと、当然だが貴族が通う学校であるため街の運営や交渉などを学ぶ。生物学と防衛軍略学は、生物学で魔物の種類と習性や生態などを学ぶらしい、防衛軍略学は基本的に魔物に対しての防衛戦略などを学ぶ。選択科目は武術、魔法学、薬学、錬金学があり、四つの科目の中から二つ以上選ばなくてはならない。そして、必修科目と選択科目の他に特別科目と言う科目があり、特別科目で学ぶ帝王学は王族のみしか受講できないらしい、どう言う訳か俺とステラも受講することになった。
「授業に必要な教科書だが明日の朝、部屋に届けるので確認してくれ。今後の日程だが、昼食を食べた後、午後からは部活を好きに見て回ってくれ。部活の参加は必ずではない。以上だ」
ミカは一通り話し終わり、立ち去ろうとしたが、何かを思い出したように振り返り、俺の方を見て言った。
「レイ君は放課後、学園長室に来るように。」
何故か俺だけ呼び出された。周りの生徒が「何をしたんだあいつ」と言わんばかりに俺を見ていた。
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