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第26話 新入生晩餐会

 俺はエルセリアの執務室で人攫いの話をエルセリアから聞いた後、そのままエルセリアと話し込んでいた。


 「そういえば、勇者の話とか聞いてなかったな、エルセリア聞いてもいいか?」


 俺が長椅子に腰掛けてそう訊ねると、目の前に座るエルセリアは紅茶を一口含み、ティーカップをそっと受け皿に置いた。そして静かに言った。

 

 「お主、なぜその話を知っているのか聞こうかの」


 エルセリアは真剣な顔で静かに告げ、俺は視線をそらした。


(どう、話したものかな~~。適当にはぐらかしておくか)


 「俺には立派な情報網があるからな」


 咄嗟に返すと、エルセリアは疑わしげに眉をひそめ、ため息を漏らした。


 「お主にそんな立派な情報網があるとはおもえんのう」


 エルセリアとは長い付き合いのため、俺が適当に言ったことがバレているようすだった。


 「わしが言えることは勇者が学園に入学しているということくらいじゃな」


 エルセリアは他になにか知っているようだったが、何も話してはくれなかった。それどころか少し寂しそうな顔をしているように、俺には見えた。


「ところで、お主こんな場所にいていいのか?」


「何が?」


「この後、新入生晩餐会があるじゃろ」


「あ……」


 そう俺はエルセリアと話し込んですっかり新入生晩餐会の事を忘れていた。そして新入生晩餐会とは新入生を祝う為の晩餐会で出席は原則自由だ。しかし、皇族や王族などは半ば強制的で自国の皇族や王族が同じ世代に居ないのならともかく、同世代の皇族や王族がいる以上、欠席はありえないのだ。つまり護衛である俺とステラも出席しなければならない。会場は寮のすぐ近くにある舞踏館で、普段はパーティーや舞踏会に使われる場所だ。


「では、お姫様をエスコートしてこい」


 エルセリアはニヤニヤと笑いながら、俺に言った。


「行ってくる……」


 大きくため息をついた俺は、礼装に着替えるために男子寮へと戻った。


 「こんな感じで、良いのだろうか……」


 俺は髪型を整えて、礼服を着ると鏡の前に立って服装を確認していた。300年生きている俺でも晩餐会に出るのは初めてなので、以外にも緊張していた。準備を整えると、指定していた待ち合わせ場所である、寮の中庭へ向かった。

 中庭へ着くと、アナとステラよりもは早く付いたようで、俺は二人をしばらく待った。中庭の庭園には夜に青く光る魔導具があちこちに置かれており、満月の月明かりも相まってとても幻想的だった。しばらくすると水色のキラキラと輝くドレスに身を包み、長い髪をまとめたアナが現れた。その隣には、薄緑色のドレスを纏ったステラが控えている。


 「似合っているかしら……」


 アナは恥ずかしそうに俺を見て言った。


 「と……とても似合っています」


 俺はとても可愛いアナに見とれて、照れながら言った。


 「行きましょうアナスタシア」

 

 そして、アナの手を取り会場である舞踏館へ向かった。


 舞踏館へ着いて直ぐ、舞踏館の入口はドレスを着た人や礼服を着た人で溢れていた。


 「おいあれ、アナスタシア皇女殿下だ。」


 「隣りに居る男は誰だ?」


 周りにいる人からそんな声が聞こえつつも、俺達は舞踏館の中へ入った。中に入ると、沢山の丸いテーブルがあり、舞踏館の中心の大きなダンススペースを囲むようにテーブルが並べられていた。テーブルの上には沢山の料理が用意されていた、ダンススペースではまだダンスは始まっていないが大勢の人が会話をしている様子だった。そして、その会話をしている人の中に、多数の女性に囲まれ会話をしている一人の男がいた。男はアナがいることに気づくと、周りの女性に何かを言い、こちらの方へ近づいてきた。


「はじめまして、アナスタシア皇女殿下、私は、ラタトス王国、第二王子、カエク・レナウン・ラタトスです。以後お見知り置きを」


 男は名を名乗り軽くお辞儀をして自己紹介をした。


 「ご挨拶が遅れました。私は、ベルファルス帝国、第三皇女アナスタシア・エルメス・ベルファルスです。以後お見知り置きを」


 アナはドレスの裾を持ちきれいなカーテシーを披露した。その姿はとても美しいものだった。


(美しい……。やはり、住んでいる世界が違うな流石は皇族……)


 「そちらの方は?」


 カエクはアナの後ろにいた俺とステラに気づき、アナに尋ねた。俺は丁寧なお辞儀をして名乗った。


「お初にお目にかかります。カエク王子殿下、私は、レイ・ヨザクラと申します。こっちが妹の、ステラ・ヨザクラです」


 「ヨザクラ……。もしや剣聖の子孫ですか!!」


 カエクは驚いた様子で俺に近寄り、俺とステラに興味津々なようすだった。俺はカエクに息子だと訂正した。


 「いえ、子孫ではなく息子です……」


 「ご子息……。では、剣聖殿はご存命なのか!!」


 「はい……」

 

 興味津々なカエク王子殿下の熱心な質問に、俺は少し引き気味だった。あまりの声の大きさに周囲もざわつき始め、会場の視線が俺たちに集まる。


 その騒ぎのせいで、翌日には剣聖の子供として学園中にその名が知れ渡ることになったのは、言うまでもない。


 しばらくカエク殿下の質問攻めに耐えていた俺だったが、舞踏館の壇上に一人の少女が現れ、話がピタリと止んだ。彼女は淡い薄紫色のドレスに身を包み、長い髪をハーフアップにまとめてウェーブをかけている。紫色の瞳が会場の注目を一瞬で奪った。


「皆さん、本日は集まっていただきありがとうございます。生徒会長のリーゼ・アストライアです。皆さんトウリス第二学園入学おめでとうございます。毎年、新入生の交流の為この場を設けています。今日は楽しんでください。」

投稿遅れてすみません。今後の投稿は不定期になりますが、1週間に1回は投稿するようにします。よろしくお願いします。


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