第25話 寮生活
「ここか、男子寮……」
そう、俺はトウリス第二学園の男子寮に訪れていた。男子寮とは言いつつも、1階から3階が共同フロアになっており、共同フロアは女子寮と繋がっているのだ。無論、男子寮と女子寮の棟には特別な結界が張られているため、お互いに別の寮に入ることか不可能だ。
共同フロアは1階が商人達から仕入れた商品が並ぶ売店と食堂になっているが貴族の子弟たちは食事を基本的に自室で済ませるので使う人はほとんどいない。
2階は会議や話し合いなどをするための部屋が並んでおり、生徒会に使用申請を出せば、よほどの内容でない限り使用許可は下りる。
3階はテラスになっていて男女が一緒に過ごす光景も珍しくないそうな。
居住スペースである男子寮と女子寮の棟の構造は基本的に変わらず、個室と二人部屋があり寝室、ダイニングルーム、お手洗い、入浴ルーム、台所があるらしい、二人部屋も寝室が2つあるだけで基本的には変わらない。
最上階が大浴場になっており天井がガラス張りで夜は星が見えとても綺麗らしい、除き対策もしっかりしているため外からは中のことが見えないらしい、マジックミラーか何かなのだろうか、詳しくは俺にも知らないちなみに大浴場も基本的に使用する人は少なく、入浴は自室でするそうな。
「俺の部屋は6階の6089号」
俺は男子寮に入ると制服を受け取る時渡された紙を見ながら自室を探していた。そう、居住スペースはとても広いのだ。1フロア500部屋あり男子寮だけで5000人が住めるくらい広いため、とても廊下が長く入り組んでいるのだ。なのでこうして、部屋を探しているのだ。
「ここだな」
俺は部屋の前に来ると、魔法の鍵で扉を開けて部屋の中に入った。部屋の中は豪華で、貴族向けの豪華な装飾がされた家具が置いてあり、部屋にはあらかじめ運び込まれたアタッシュケースが置いてあった。アタッシュケースには予備の制服と修練服くらいしか入っていない、俺はアイテムボックスを持っているので大抵の物はアイテムボックスに入れとけばなんとかなるのだ。アタッシュケースの荷物をアイテムボックスに入れなかったのは、何も持ってないと不自然だからだ。
俺は制服をと修練服をクローゼットに収納し、ひと息つき、ふと脳裏に浮かんだ。
(そういえば、エルセリアから呼び出しがあったな……)
俺は呼び出しを受けた理由に心当たりがあるのだ。おそらく、魔法修練場を破壊した件についてだろうとか考えつつ、城のエルセリアがいる執務室へ向かった。
「失礼します」
俺がエルセリアの執務室に入ると笑顔で椅子に座っていた。しかし、その笑顔から確かな怒りがにじみ出いていた。そして、エルセリアは静かに告げた。
「そこに正座したまえ……」
俺は部屋に入るなりビクビクしながら、その場に正座した。しかし、エルセリア表情を変えずに続けた。
「では……」「第一魔法修練場を破壊したことについて弁明を聞こうかのう……」
俺はまず、日本にある究極の謝罪、それはもう見事な土下座を繰り出した。
「申し訳ありませんでした」
俺はエルセリアが頭を上げろと言うまで続けるつもりでいた。やがてエルセリアはため息を付いて言った。
「分かった」「もう頭を上げろ」「まずは理由を説明してくれ、お主のことじゃから何か理由があるのじゃろ」
「そこまで大した理由ではないのですが……」
俺は頭を上げて事の顛末を話した。アナを侮辱されて、そいつにちょっとした仕返しをして、収まらない怒りを晴らすため、その怒りを発散するために魔法修練場を破壊したことを説明した。エルセリア余りの俺の理由には何も言えずに呆れた顔をして大きなため息を付いた。
「お主いったい、いくつじゃ」
「381歳です……」
「それにしては大人気なさすぎるじゃろ……」「10歳かそこいらの奴に」
エルセリアは呆れながら俺のことを諭した。俺は反論もなく深く反省しながら静かに言った。
「はい」「大人気なかったです……」
「それで、話を変えるのじゃが」「例の人攫いの件じゃ……」
エルセリアは話題を変えて真剣な表情で話を切り出した。俺も立上がち真面目な顔でエルセリアの話を聞き始めた。
「話を聞こう」
「ここ数日で学園都市の領地内で起きていた人攫いがピタリと止まったのじゃ」「お主はどう考える」
俺は少し考えてから答えた。
「考えられる内容としては」「攫った人を監禁しておく場所が抑えられたから、情報が漏れることを恐れて一時的に活動を休止している」「または、他拠点が見つかることを恐れて他領地に拠点を移動させている」「もしくは、何らかの目的がありそれを達成したから人攫いをする必要がなくなった」「それか、他の理由か……」「思いつく内容としてはこんなもんかな」
「お主の話じゃと前者二つはまた人攫いが再開することにならんか」
「なるだろうな……」「状況次第では再び動き出す可能性は高い」
エルセリアは重く息を吐き、額に手を当てたまま小さくうなずく。
「そうか……」「いずれにしろ捜査の手は止めずに続けるしかないな……」
深いため息とともに、エルセリアはしばらく頭を抱え込んでいた。
時は遡り、アナとステラが魔法学の実技試験を終えた後、二人は女子寮に来ていた。
「ここが女子寮ですか」
「そう……」「ここの8階の80250号室……」
アナとステラは廊下を歩きながら部屋を探していた。天井の高い広い廊下には、貴族の子弟たちが行き交い、重厚な調度が並んでいる。
「広いですね~」
「レイの話では一つの階に500部屋あるらしい……」「1階から3階が共同スペースで1階が食堂で朝食とか夕食はレイと一緒に食事できる……」
「そうですか」「三人で一緒に食事できるのですか」「楽しみですね」
アナは三人で食事できることを楽しそうしながら廊下を歩いていた。ステラも心なしか嬉しそうにしながら歩いていた。
「つ……」「着きましたこの部屋です……」
ステラは部屋の前で立ち止まり、アナが扉を開けると、あらかじめ運び込まれた荷物が整然と並び、個室と変わらない豪華な装飾の部屋が広がっていた。
「ステラは寝室、右とどちらがいいですか?」
アナがどちらの部屋を使いたいか尋ねると、ステラは間を置いてから答えた。
「…………左」「あと荷解きやるから荷物出していい?」
「はい、私もやります」
ステラは一人で荷解きを始めるつもりだったがアナも荷解きをやると言い出した。二人が荷解きを始めると荷物は以外にもステラの方が多く、そのほとんどが本や魔道具だった。一方でアナの荷物は服やドレスなどが多く、その他は生活必需品だった。やがて荷解きが終わると、アナは机の上に置かれた拳ほどの大きさの円柱の形をした魔道具についてステラに訪ねた。
「アナ、この魔道具は何でしょうか?」
「部屋に結界を張る魔道具」「それと、レイと会話ができる魔道具」
そう、この魔道具はステラが開発した魔道具で、部屋の壁に物理結界、魔法結界、防音結界を張りアナを守るためにステラが作ったのだ。そして、そのついでの機能が同じ魔道具同士の会話機能であり、ステラは地球にあるビデオ通話を参考に作ったのである。ちなみに、知られていないことだが、寮は貴族の子弟が住むので壁にはあらかじめ高性能な結界が張られている。もちろんこの結界は学園長お手製だ。
「それは、すごいですねレイと部屋にいて会話ができるなんて」
アナは魔道具の凄さに驚きつつ、部屋でレイと会話できることに喜んでいた。
「アナここに魔力を注いで」
ステラは魔導具上部の魔石を指差し、魔力を注ぐようアナに言った。
「わかりました」
アナはそう言って魔力を注ぎ、ステラがボタンを押すと、魔石から細い光が天井まで伸びると、部屋全体が薄い膜のようなもので包まれた。しかし、一瞬にして細い光や薄い膜が消えた。
「これで、結界が張れた」
どうやらこれで結界が張れたようだった。
「レイとの会話はどうするのでしょうか?」
アナがステラ訪ねると、ステラは机の上に置いておいた本を開き答えた。
「レイ側の方で同じ魔導具を設置しないと無理……」「夜には会話できると思うけど……」
「そうですか」「ところで、何の本を読んでいるのでしょうか?」
アナはステラの読んでいる本が気になり何を読んでいるのか尋ねた。
「難しい本……」
そう言いながらステラが読んでいたのはレイが異世界から持ってきた本だった。ステラは読んでいた本を机の上に置き、寝室へ行くと、一冊の本を持って戻ってきた。
「アナにおすすめ」
ステラはそう言いながらアナに一冊の本を渡した。それは、レイが異世界から持ってきたラノベだった。
「これは?」「文字が読めません」
「娯楽小説……」「はい……」「メガネかける」
ステラはそう言ってアナに日本語を翻訳できる魔道具のメガネを渡した。アナは渡されたメガネを掛けると日本語が読めるようになった。
「読めます」
そうして二人はしばらくの間、静かな読書を楽しむのだった。
次の投稿は1週間後です。
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