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第24話 怒り、そして弟子との再開

 俺達は、筆記試験を終えて魔法学の実技試験の会場、魔法修練場へと足を運んだ。魔法修練場には既に多くの人が集まり、的に向けて魔法を放っていた。俺達は順番を待っていると、ひとりの偉そうな男が高らかに詠唱を始める。


「火よ、我が敵を、炎の槍にて貫け」「火魔法 ファイヤーランス」


 男が放った火の槍が的に見事命中すると、周囲からは「おおっ」「すげぇ」と感嘆の声が上がった。後ろに控えていた取り巻きの男たち二人は揃って声をそろえる。


「さすがギール・ルブルーテ様」


「あれほどの魔法見たことありません」


 当のギールは当たり前だと言わんばかりに自慢げに言い放つ。


「俺に掛かればあの程度たやすい」「むしろ周りのレベルが低いだけだ」


 ギール嫌味たらしく偉そうに言った。すると、試験官が次の受験者を呼んだ。


「次、アナスタシア・エルメス・ベルファルスさん」


 どうやら、アナが魔法を放つ番のようだった。


「アナ……」「頑張って……」


「アナ頑張ってください」


 俺とステラが声援を送ると、アナは嬉しそうに微笑んで「ありがとう、頑張ります」と返した。アナが定位置へ向かって歩き出したその時、俺は会場から立ち去ろうとするギール・ルブルーテとすれ違った。


 すれ違いざま、ギールは鼻で笑い、小さく呟く。


「魔法が使えない無能はこんなところに来るなよ」


 俺はすれ違いざまに聞こえた、アナを侮辱するその言葉に激しい怒り覚えた。


 俺は密かに闇魔法を使いギールの足のつま先を拘束し、転倒させた。俺は魔法を唱えていなかったので周囲からは突然転倒したように見えた。周囲では小さな笑い声があがり、取り巻きたちはあたふたすると、ギールは舌打ちし、悪態をつきながらその場を立ち去っていった。一方でアナは定位置に立ち、試験官から告げられた。

 

「的に向けて、魔法を全力で放ってください」


 アナは深呼吸をすると静かに魔法を唱えた。


 「氷魔法 アイスニードル」


 その瞬間、地面から鋭い氷の針が出現し、一直線に的を突き刺した。しかし、アナの魔力量は膨大で、魔力濃度も高い為、それでは終わらない。氷の針は的を貫いたものの、その威力は凄まじく、魔法修練場の半分が凍りつき、空気までも澄み渡るような冷気に包まれた。余りの威力に周囲はしばらくの間、沈黙に包まれ、騒然とした。


 「何だあの魔法の威力……」


 「詠唱省略してたぞ」


 「魔法が使えないと聞いたんだが」


 試験官たちは氷の処理に追われ、試験は一時中断となった。

 アナは予想以上の結果に戸惑っていたが、俺はその姿を見て、迷いなく言葉をかけた。

 

 「さすがアナすごい魔法だよ!」


 あたふたとするアナが、俺の言葉に少しだけ表情をほころばせる。

 その様子に、さらに周囲がざわつき始めた。


 「誰だ、あいつ皇女殿下に対して気軽に接しすぎだろ……」


 「皇女殿下のこと、今、愛称で呼んだよね……」


 周囲から困惑と驚きの視線が向けられた。しばらくすると、氷の処理が終わったようで、試験官は次の人の名前を呼んだ。


 「次、レイ・ヨザクラさん」

 

 俺は試験官に呼ばれて、定位置へ立った。俺は先程のギール・ルブルーテへの怒りがおさまらず、その怒りをぶつけるように両手を前に出し物凄い量の魔力を手に集め、魔法を唱えた。


「火魔法 闇魔法 ダークファイヤーノヴァ」「消え去れーーーーー!!」


 俺は怒りに身を任せ、咄嗟に魔力を解き放った。両手からほとばしる黒い炎は、咆哮のような燃焼音を響かせながら瞬く間に視界を漆黒で満たした。爆風のような風圧が周囲に吹き荒れ、人々は反射的に身を守るよう後方へと押し戻された。その猛火は、前方一帯を容赦なく飲み込んだ。魔法修練場の地面はまるで蝋のように溶け落ち、建物の半分が炎で溶け落ちていた、それは魔法修練場の遥か先にある学園の城壁にまで届き、重厚な石造りの防壁に深々と焼け焦げた傷跡を刻んだ。

 

 その凄まじい魔法に周囲は静まり返り騒然とした。


 「あいつ、何者なんだ」


 「ヨザクラとか言ってたけど」


 「ヨザクラ……」「確か剣聖の家名だったような……」


 周囲が騒然とする中、アナとステラが俺に近寄ってきた。ステラは小さくため息をついて、呟く。

 

「レイ……やり過ぎ……」

 

 一方、アナは瞳を輝かせながら、素直に賞賛の言葉を口にする。

 

「さすがレイです」

 

 俺は一瞬だけ驚いたものの、自分を褒められていると気づき、少しだけ照れくさくなる。

 だが内心では、ひとり反省していた。

 

(……怒ってたとはいえ、ちょっと本気出しすぎたか)


 そのとき、ふいにアナが声をかけてきた。

 

「レイ……」

 

 俺はアナの方を向いて答えた。

 

「どうした、アナ?」

 

「……なんでもないの」


 アナはそれだけ言うと、そっと視線を戻す。けれどその瞳の奥には、ほんの僅かな戸惑いが宿っていた。

 

(魔法の発動中……レイに角が見えたような気がしたのだけど)(……気のせい、よね?)


 その後、当然ながら第一魔法修練場は直ぐに修復するのは不能なほど破壊されていたため、魔法学の実技試験は急遽、第二魔法修練場へと会場を移すこととなった。次に試験を受けたのはステラだ。彼女の水魔法はまだレベル2とあって、威力や技術の点では周囲の試験生と大きな差はなかった。だが、魔力の流れは他の試験生とは違い優秀で、俺としては少し誇らしく思えた。そして、アナとステラは全ての選択科目を終えていたため、すでに女子寮へと向かっていた。俺は武術の科目が残っているため、ひとりで武術修練場にいた。広々とした修練場には、他の受験生たちが集まり、試験官との一対一の模擬戦を行っているところだった。武器と武器の打ち合う音が鳴り響いていた。俺は自分の番が来るまで待っていた。


 「次、レイ・ヨザクラさん」「ヨザクラ……」


 試験官は名前を呼んだ後、ぽつりと呟いた。試験官に呼ばれた俺は、軽く返事をして舞台へ向かった。その試験官の姿を見て思わず、足を止める。白髪に深紅の瞳。凛とした立ち姿。彼女は、かつて俺が実の娘のように育てた弟子であの頃とは見違えるほど綺麗だった。気持ちを整えつつ、俺は会場に置かれた武器の中から一本の刀を選び取る。金属製だが、刃は潰されており、練習用であることは一目瞭然だった。舞台に立つと、試験官の彼女は淡々と試験内容について説明した。


「試験のルールだけど、スキルの使用は構わないけど、魔法の使用は禁止だよ」「私と制限時間一杯、戦いそれで点数をつけるから」

 

「わかりました」

 

「コインが地面に落ちたら開始の合図だよ、他に質問は?」


「無いです」


 俺と彼女は淡々と会話をし、俺は鞘から刀を抜き霞の構えをとる。彼女はコインを天高く投げ、同時に剣を抜いて構えた。コインは回転しながら地面に落ち、コインの落ちる音が鳴り響いた瞬間、俺はスキル《身体強化》を使い彼女との距離を一気に詰め、首元を狙って刀を突き出した。彼女は俺の突きを剣で滑らせ攻撃をそらした。俺は地面を蹴り後ろに下がった。彼女はそれを見逃さずに一気に俺との距離を詰めた。俺は右から左へ水平に切り下ろし、彼女を切りつけた。彼女は剣で防ぎつつ左に避けて、ぽつりと呟いた。


「誘われたか……」


 彼女はフェイントを入れつつ俺に近づくと、俺の死角から重い一撃を繰り出した。俺は刀で防ぎ、彼女と鍔迫り合いになった。鍔迫り合いの中俺はふっと笑みを浮かべた。

 そう、彼女の剣筋は、無駄がなく力強かった。それは俺がかつて教えた。攻撃はシンプルに力強く、がしっかりと戦いの中で行われていたことに俺は嬉しいと感じた。


 「本気で行きます……」


 彼女はそう告げて、物凄い力で俺の刀を弾いた。俺はやばいと感じ後ろに下ががり体制を整えた。しかし彼女は一瞬で俺との距離を詰めると、物凄いスピードで剣を振った。俺も負けじと素早く刀を振るい彼女の攻撃を防ぎつつ攻撃した。俺と彼女の攻防はしばらく続き、彼女の体術を織り交ぜた攻撃は彼女の成長が感じられた。そして、攻防の末、俺が振り下ろした重い一撃で彼女の剣が折れた。


 「私の負けですね……」「狙ってやりましたね……」

 

 そう俺は狙って彼女の剣を折ったのだ。俺は攻撃する時、剣の一点を狙いそこに攻撃し続けた。彼女は笑顔で俺に近寄り手を出して言った。


 「流石です……」「お久しぶりですね師匠……」


 「それほど経っていないだろミカ」

 

 俺はそう言ってミカの手を握り握手をした。

 

 「5年ぶりくらいですね」


 「だな……」


 「次があるので、後で話しましょう」


 彼女はそう言って次の人の名前を呼んだ。俺は舞台から降りて、試験がすべて終わったので荷解きをするため男子寮へ向かった。


次の投稿は1週間後です。


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