第16話 学園都市に到着
早朝、アナスタシア様と俺達は朝食を取り終えて、出発の時間だった。
「セラ様、短い間ですがお世話になりました」
「もったいないお言葉ですアナスタシア皇女殿下」「私共も無事を祈っております」「いってらっしゃいませ」
セラと使用人は深々と頭を下げた。 俺達はセラのその言葉を聞き、鳥車へ乗り込んで出発した。御者が鳥達へ飛ぶように命令を出すと、鳥車はふわっと飛び上がった。そして、俺達はグレイフの街を後に学園都市へ向かった。
(気まずいな……)
俺は鳥車の雰囲気に気まずくなった。昨日、エルザをアナスタシア様が説得した辺りからだろうか、アナスタシア様がエルザとまったく話さなくなったのは、一方でエルザの方は何事もなさそうに座っていた。
(姫様はエルザにどんな説得をしたんだ……)(どうしたものか……)
俺がそんな事を考えていた時、赤子が突然ぐずり始めた。フェリスが慌ててあやしたが一向に泣き止まなかった。
「私があやしましょうか……」
俺とアナスタシアはエルザのその言葉に少し驚いた。フェリスも少し驚いたようすだった。
「では、頼んでもいいいか」
そう言ってフェリスは、エルザに赤子を渡すと、エルザは赤子をあやした。すると、赤子がすぐに泣き止んた。
(手慣れているな……)(さすがエルザだな)
俺はエルザの手慣れた赤子のあやし方に俺は関心していた。
それもそのはずエルザは子供の時からメイドをやっているのだから。その事を知らないシンだった。
「姫様、私は何も意地悪している訳ではありません」
(何の話しだ?)
俺はエルザが赤子を抱きながら話す内容が理解できなかった。
「私一人では姫様を守れず危険だから、街を周る事ができないと言う意味で言ったのです」
「すみませんエルザ」
アナスタシア様は申し訳無さそうに謝った。
(いや、この気まずい空気は別の話でだったのかよ!!)
俺は冷静な表情をしながら心の中でツッコんだ。
シンは鳥車の気まずい空気は、フェリスを鳥車に乗せた事で起きた事だと勘違いしていたシンだった。そんなこんなで鳥車の気まずい空気が無くなり、ランソ伯爵領のヨイルの街に着く頃には既に夕方だった。
俺達はヨイルの街の領主館に着陸し、アナスタシア様か鳥車から降りると、そこには、太った領主の男がいた。
「アナスタシア様、ようこそ起こし下さいました」「私は、ブダ・ランソ伯爵と言います」
(この男、無礼なやつだな)
俺はランソ伯爵の態度と言動に無礼だなと思いつつアナスタシア様の後に控えていた。
どうやらシンと同じくエルザも表情や行動には出していなかったが無礼だと感じていたようだった。
「どうも、ブダ・ランソ伯爵」「第三皇女アナスタシア・エルメル・ベルファルスです」
アナスタシア様はドレスの裾を持ちそう挨拶した。挨拶が終わりさっそくアナスタシア様と俺達は部屋に案内されたが、俺はあからさまな見下している扱いに少し腹が立った。アナスタシア様は当然、豪華な部屋に案内されたが俺達の対応は離れのボロい部屋に案内された。
「無礼ですねあの男」「初対面で敬称もなしにいきなり様呼びとは」
俺がエルザとフェリスの部屋を訪れるとエルザがランソ伯爵のアナスタシア様へのあまり無礼さに腹を立てて愚痴をこぼしていた。
「まったくだ」「あの偉そうな態度」
俺もエルザと同じように愚痴をこぼした。
「お主らと同じで私も少し腹が立ったな」
俺の隣にいたフェリスもどうやら腹を立てていようだった。
「エルザ気付いたか?」
「はい気付いていますよ、屋敷の中のメイド達の様子もとても暗い感じでしたね」
俺達を案内するメイドも俺達の横を通り過ぎるメイドも表情が暗い様子だった。エルザとフェリスもどうやらその事に気づいていたようだ。
「早めにこの街を出発したほうが良さそうですね」
「エルザの言う通りだな」「それに、夜も姫様の隣にいたほうが良さそうだな」「任せてもいいか?」
俺はエルザにそう言うと、エルザは当然のような顔をしていた。
「俺は街の方の様子も見て来る」「あとは頼んだ」
そう言って俺はローブを目深に被り領主館をこっそりと出た。
(寂れているな)
俺は街の大通りを歩いていたが人の交通量は少なく、通りかかる人も暗い表情で通り過ぎて行く様子を横目に見ていた。俺が街中を練り歩いていると、俺は酒場の看板を目にすると俺は酒場の中に入った。酒場の中に入ると俺は定食を注文した。俺は定食を待っている間、酒場にいるやつの話しに聞き耳を立てていた。
「ほんと最悪だなあの糞領主、街の税金はものすごく高いし」「俺達はその日生きるので精一杯だってのに」
「声が大きいぞ」
「かまいやしねえよ」「それに冒険者ギルドにも多額の税金を掛けるし」
そんな男達2人の会話が聞こえたり、様々な会話に聞き耳を立てたが話はどれも領主の良くない話や街に付いての愚痴ばかりだった。俺は出された定食を食べて定食の支払いを終えて酒場を出ると、城壁から緊急事態を知らせる鐘の音がなり兵士の声が聞こえてきた。
「魔物だ〜〜〜」「魔物の大群が来たぞ〜〜〜〜」
兵士の大声が聞こえると街中は慌ただしくなり、俺は急いて領主館に戻った。領主館に戻りそこら辺にいるメイドからアナスタシア様のいる場所を聞き出すと、アナスタシア様のいるダイニングへと急いで向かった。俺がダイニングに入ると、中でランソ伯爵と必死で話す兵士がいた。
「すぐに対処すればよかろう」
「しかし、魔物の数が多く、兵士の数が足りません」「とてもではありませんが今いる兵士の数では魔物への対処が追いつきません」
「では冒険者に任せればよかろう」「あやつらは魔物を駆除してくれるのであろう」
俺はランソ伯爵のずさんな対応に呆れ果てた。俺はアナスタシア様の元に近寄るとアナスタシア様とエルザはこの事態を重く受け止めているようだった。
「姫様、非難の準備を」
「民を放おって非難する訳には……」
アナスタシア様とエルザが小声で会話している所に俺が横から入った。
「姫様、只今戻りました」
「良かったです」「心配しました」
アナスタシア様は安心した様子で言った。俺は兵士の話す内容を裏付けるように街の状況についてアナスタシア様にこと細かに説明した。そして俺に魔物の事を任せて欲しいと、俺はアナスタシア様にお願いした。
「姫様、魔物の事は私にお任せください」
「でもシン……」
俺の事を心配しながら見つめるアナスタシア様は深く息を吸って吐くと、覚悟を決めた表情で俺の事を見た。
「任せました」「シン」「無事に帰ってきてください」
アナスタシア様は俺にそう命じると、アナスタシア様は真面目な表情でランソ伯爵の方を見て言った。
「ランソ伯爵」
「なんでしょうアナスタシア様」
ランソ伯爵はアナスタシア様に呼ばれて慌ててアナスタシア様の方を振り向いた。
「ランソ伯爵の今回のずさんな対応、そして、ずさんな街の運営状況など、まとめて皇帝陛下に報告させていただきます」
それを聞いたランソ伯爵は慌ててアナスタシア様に弁明した。俺は兵士と一緒に急いで街の城壁へ向かった。城壁に着くと既に多数の兵士と冒険者が戦っていた。一人の兵士が掛け寄ってきた。
「領主様は何と」「やはり無理か」
そう言う兵士の会話に俺は割り込んだ。
「俺は第三皇女殿下に使える執事のシンだ、すまんがこの場は俺の言う通りに」「魔物は俺が城壁の外に出て倒すから他の者は守りを固めるように」
俺は兵士にそう伝えると城壁の外へ飛び降りた。俺は空中で無数の魔物に向けて手刀で切り払うと、空を斬るように大きな斬撃が魔物に向けて飛んで行き、俺の放った斬撃は破裂する様な音を立てながら多数のゴブリンやオークの魔物を斬った。そして俺が地面に着地すると目の前に五メートル以上ある二足歩行のブタの魔物であるジャイアントオークがいた。
「フゴーーーーー」
ジャイアントオークは俺の方を見て大きく叫んだ。
「うるせぇな」
俺がそう言うと、ジャイアントオークは棍棒を持ち、俺目掛けて振りかぶった。俺は上から来る棍棒を後ろに大きくジャンプして避けた。ジャイアントオークが振り下ろした棍棒は地面をえぐった。
「危ねえな」
俺はそう言って空中で手刀を振り下ろした。俺の飛ばした斬撃はジャイアントオークだけでは無く後ろにいた何匹かのゴブリンも巻き込んで切り裂いた。真っ二つになったジャイアントオークの死体が左右に倒れると、ジャイアントオークの死体に何匹かのゴブリンが潰された。城壁の上から一部始終見ていた兵士は驚いた。
「ジャイアントオークを一瞬で倒すなんて……」「おい、急いで守りを固めるように他の奴らに」
「了解しました」
多数の魔物やジャイアントオークを倒す所を見ていた兵士は急いで守りを固めるように他の兵士に伝えた。
一方で俺は魔物と交戦していた。
「俺のスキルでサイコロステーキになりやがれ」
俺はそう言って一気に駆け出し、目にも留まらぬ速さで魔物たちに接近した。斬撃を次々と放ち、ゴブリンやオークを次々と斬り倒していく。矢や魔法が俺に向かって放たれるが、俺はそれらを華麗に回避しながら前進を続けた。
一匹のジャイアントオークが俺の背後から襲い掛かる。しかし、俺はその動きを察知し、振り返りざまに手刀を振るって斬撃を飛ばす。オークは一瞬で真っ二つに切り裂かれ、そのまま地面に倒れ込んだ。
「まだまだ終わらねぇぞ」
俺は再び魔物の群れに向かって突進した。俺のスキル、空斬は次々と魔物たちを斬り裂き、魔物は次々とバラバラになった。そして、朝日が登る頃には魔物の討伐が終え、地面には魔物の死体が散乱していた。俺は疲れてその場に倒れた。
「疲れた~~~~~~」
一晩中戦い流石に疲れた俺はウトウトしてその場に眠ってしまった。そして俺は1日寝てしまい、俺が起きたのは4日目の夕方だった。
「ここは……」「鳥車の中か……」
「ようやく起きましたね」「シン」「心配したんですよ」
鳥車で寝ている俺が目を覚ますと、俺はアナスタシア様に膝枕されていた。そして俺の目に映るのは、鳥車の窓から風が入り、風で髪がなびくアナスタシア様だった。俺はアナスタシア様の可愛さにしばらくの間、見とれていた。
「シン見て下さい」「学園都市が見えて来ましたよ」
そう言って窓の外を見るアナスタシア様だった。俺はアナスタシア様の膝枕に起き上がりたくなかったが、体を起こして窓の外を見た。そこにあったのは大きな湖の中心にある島、島の上には街があり、島には湖のほとりと島を結ぶ石で作られた大きな橋がかかっていた。
「きれいですねシン」
「はい、そうですね姫様」
そう、ここから俺とアナスタシア様の学園生活が始まる。
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