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第13話 街のようす

 俺達が乗る鳥車はグレイフの街の領主館に着陸し、アナスタシア様が鳥車を降りると、そこには狼人族の女性がいた。


「ようこそお越しくだました」「アナスタシア皇女殿下」


 狼人族の女性はスカートの裾を持ち、アナスタシアにお辞儀をしてそう言った。


「私はグレイフの街の代官をしております」「セラ・ルクセクと申します」


「今夜はお世話になります」


「話は伺っております」「どうぞこちらへ」


 アナスタシア様と俺達はセラに案内されてセラの後を付いて行った。そう、あらかじめアナスタシア様が泊まる街に手紙を出していたのだ。そして、アナスタシア様と俺はセラに部屋へ案内された。


「アナスタシア様、今夜はこの部屋をお使い下さい」「使用人の方々は隣の部屋をお使い下さい」「夕食はメイドがお呼びしますので」


「ありがとうございます」


「勿体ないお言葉、では私はこれで」


 アナスタシアの言葉にセラはそう言ってお辞儀をし、部屋を後にした。


「姫様、私も仕事があるのでこの場を離れてもよろしいですか?」


「仕事?」


「はい」「皇帝陛下からの任された仕事です」「就寝前には戻って来ますので」


「お父様……陛下からですか」「では離れる事を許可します」


 俺はアナスタシア様の護衛をエルザと近衛兵にこの場を任せて、ローブを羽織り領主館から出て街の中を散策し始めた。そう、俺が陛下から任された仕事は街の視察だ。


 陛下がシンに街の視察を秘密裏に任せたのは細かいことに気づくため、シンの観察力や洞察力を買っての事らしい。


 (報告書とかだるいな……)


 俺はそんな事を思い大きなため息をついて夕方の大通りへ向かった。夕方の大通りは賑わいを見せていた。俺は大通りを歩きながら辺りを見回しながら歩いていたら屋台で魚を焼いている店主に話しかけられた。


「そこのお兄さん焼き魚を買って行かないかい」


 俺は立ち止まると串に刺さっている焼き魚を買うことにした。


「じゃあ一本もらおう」


「まいどあり鉄貨一枚だよ」


 俺は店主に鉄貨一枚を手渡すと店先で食べ始めた。俺は焼き魚を食べながら店主に訪ねた。


「店主さん、この街に治安の悪い場所はあるの?」


 「ああ、この街の北側に貧民街があるよ」「昔と比べて、今の代官に変わってから貧民街の規模も縮小して治安も比較的よくなったけど……」「お兄さん間違っても近づかないほうがいいよ」


 「店主さん忠告ありがとう」


 俺は焼き魚を食べ終えると再び歩き始めた。


(活気で溢れてるな……)(さっきの店主さんの言った通り、今の代官が街を上手に運営している証拠だな)


 俺は大通りの賑わいを見てそんなことを考えながら街の北側にある貧民街へ歩いて行った。俺が街の北側に向かうと街の雰囲気がガラリと変わり、周りからの冷たい視線と敵意が俺に向けられるのを感じた。


(こういう場所はどこでも変わらないな……)


 俺はその視線にローブのフードを目深にかぶり、しばらく周りを散策した。


(確かに少し小さい感じがするな、この貧民街)(それにしても、子供が一人も見当たらないな……)


 俺はしばらく貧民街を散策すると、貧民街に子供が一人も居ない事に気付いた。親に捨てられて子供が貧民街に流れ着くなど、よくありがちな事だったりするのだが、不思議なことに子供が一人も居なかったのだ。俺はその事を不思議に思いつつも街の東側の方へ歩いて行くと、娼館が並ぶ通りに出た。すると突然、娼婦のお姉さんが俺の腕に抱きついてきた。


「ねえお兄さん、私と一緒に遊ばない」


(柔らかい何とわ言わないが)


 シンは心の中で葛藤していた。


(このままお姉さんと遊びたい)(でも……)(仕事中なんだよな~~~)


「その誘いは嬉しいけど、この後、用事があってねまた今度来た時サービスしてくれると嬉しいな」


 俺はそう言って、娼婦のお姉さんに金貨を渡した、娼婦のお姉さんは少しびっくりした様子だったが金貨を受け取ると嬉しそうに言った。


「ありがと、また今度来た時サービスするよ」


 俺はハッとすると、娼婦のお姉さんに道を訪ねた。


「この街に孤児院とかある?」


「あるよ、街の南側に孤児院が」


「ありがとう助かった」


 俺は娼婦のお姉さんにそう言うと、街の南側にある孤児院へ、人に道を訪ねながら向かった。


 「ここが孤児院か……」


 俺が孤児院の前に立ち止まり、そう言って孤児院の扉をノックすると、おばさんが扉を開いた。


 「どちら様ですか」


 「寄付をしたくて」


 俺はお金の入った袋を渡そうそうとしたが、孤児院のおばさんが断った。


 「いえ、大丈夫です」「代官様から支援をしてもらっているので」


 「そうなんですね」「その話、詳しく聞いてもい良いですか」

 

 「立ち話はなんですから、どうぞ中へ」


 おばさんはシンを孤児院の中へ入れると、中では子供たちが、賑やかに夕食を食べていた。


 俺は案内され椅子に座り、おばさんと話し始めた。


 「始めは身寄りのない子供を助けたくて初めたんです」「子供たちに畑仕事を手伝ってもらって、その代わりに食べ物をあげたりして」「それで今の代官様から孤児院を作るからそこの院長になってくれと言われて」「それで孤児院を初めて、今の代官様から食べ物、衣服、住む場所の支援を受けているからお金は必要ないんです」


 「なるほどそうなんですね」「今の街はどうですか?」


 「昔と比べて良い街になったと思いますよ」


 俺はおばさんのその言葉に、なぜか少し安心した。そして俺は子供達の方を見ると、子供の数が思いの他多いい事に気づいた。


 (貧民街に子供が居なかった理由はこれか……)

「お話ありがとうございます」


 俺はそう言って孤児院から出ると、考え事をしながら領主館の方へ歩いて行った。


(街の方は問題なし)(帰って報告書を作るか……)


 俺が領主館に戻ると館内が慌ただしい様子だった。


(慌ただしいな……)(何があったんだ?)


 「まさか……」


 アナスタシア様に何かあったのかと、俺の脳裏に災厄の想定がよぎった。俺は急いでアナスタシア様の部屋に向かい慌てて部屋に入った。


 「姫様!!」


 俺が勢いよく部屋に入ると、アナスタシア様は何事もなく椅子に座り紅茶を飲んでいた。


 「シン、そんなに慌ててどうかしたんですか?」


 アナスタシア様は俺の慌てようを不思議に思い聞いてきた。


 「館内が騒がしので姫様になにかあったのかと思い慌てて……」


 「私はこの通りなんともありませんよ」「森の中から謎の光が出ているらしいです」


 「なるほど、それで館内が慌ただしいのですね」


 俺はカーテンをめくり、窓の外を見た。すると、この館内からでもわかるほど城壁の外が緑色に光っていた。俺はそれを見てすぐにカーテンを締めると、俺は不思議と謎の緑色の光が気になった。


 「気になってる顔をしていますよシン」


 「え……」「そんな事はありませんよ」


 俺は慌てて否定すると、アナスタシア様は俺が謎の緑色の光が気になっている様子に気づいていた。


 「気になるなら行って来てもいいですよ」


 「そんなわけには……」


 俺は少し迷った。本来であれば非常事態の時こそ主のもとにいて、主を守るのが従者の努め。しかし俺はこの時、謎の光の所に行かなきゃいけない気がした。

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