鉄工所の話。1
ある日の現場は鉄工所でした。
その鉄工所のホームページを見ると
鋼鉄を加工し、高速道路の鉄骨部材を作ったり
かなり大規模で手堅いお仕事をしていました。
レッカーで現場に入り、
作業内容を確認すると、
工場の屋内に門型クレーンを新設するということでした。
準備があるからしばらく待機しといて。
ということで初めて入る鉄工所の雰囲気を運転席から観察してました。
昭和気質の雰囲気漂うベテランの鉄鋼マン(おじいちゃん)が若手の職人さんや外国人研修生に指示を出したりしています。
おじいちゃんの周囲には10人くらいの職人さんがそれぞれ作業を行っていて、
おじいちゃんが監督しています。
おじいちゃんが何か気になる事があると、
「おい!!」
と叫びます。
呼んだであろう職人さんにおじいちゃんの視線はロックオンされています。が、
呼ばれた職人さんはそれぞれ集中して作業をしているため
「おい!」
で誰が呼ばれたのか分からないので
全員の手が止まり、全員がおじいちゃんに振り返ります。
呼ばれたのが自分ではないことが判明すると
再び作業に戻ります。
しかし、事あるごとに叫ぶのです。
「おい!」と。
頻度としては5分に1回ぐらいでしょうか?
それぞれの名前で呼べばいちいち全員の手が止まる事もないのに。効率上がらないなぁ。
無駄が多いなぁ。
と思ってました。
休憩中、職人さんに
吊人「なんであのおじいちゃんは職人さんをそれぞれの名前で呼ばないんですか?」
と聞いてみたところ理由が判明しました。
年を取りすぎて名前が覚えられないんだそうです。
ベトナムやフィリピンからの外国人留学生の名前は特に。
それってもはや引退する理由として成り立つのでは?
と思ってしまいますが
他社の事なので口出しすることではありません。
休憩後。
小太りのおっちゃんが登場しました。
職人さんは脚立で梁に登り
門型クレーンの設置に必要な部材の固定をします。
が、手際が悪いのかモタモタと悪戦苦闘しています。
すると、その小太りのおっちゃんが
「何モタモタとやっとんねん!さっさとやらんか!!
叩き落として〇すぞ!」
デカい声で言ってはならないレベルの暴言が工場内に響きます。
「お前はホントにいっつもモタモタモタモタ!
えぇ加減にしとかな、シバくぞ!?」
さらなる追い打ちをかけます。
職人さんも萎縮してしまって
「はぃ、すみません…」
としか言えない。
えぇー。
鉄工マンは気性の荒いイメージはあったけど、
これ、完全ブラックなパワハラやんー。
ボイスレコーダーか何かで録音して
出るトコ出たらそこそこのお金貰えるやつやん。
上司か何か知らんけど、職人さんも我慢せず
何かしらアクション起こせばいいのにー。
鉄工所のホームページをもう一度確認してみます。
数ある項目のひとつに
代表者挨拶
というのがありました。
そこをタップしてみると…。
小太りのおっちゃん、代表取締役社長でした。
写真付きで紹介されてました。
まじかー。
レッカーに乗れなくなっても
この工場に転職は絶対にないな。
固く心に決める吊人であった。