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13話「悪霊の情報と着信」

 市の職員に案内されるがままに優司達は神社の中へと入っていくと、そこには至って普通の和室が広がっていて人が住めるような環境が整えられているようであった。


 彼が最初に足を踏み入れた部屋は畳敷きに昔ながらのちゃぶ台が置いてあって、さらに座布団が数枚重ねられて部屋の隅に置かれていると言った具合である。


「おぉ、ここが神社の中なのか……。初めて入ったな」


 優司は神社の中に入るという普段経験出来ない物珍しさからか、周囲に顔を向けては好奇心に駆られて色々と物色をしていた。


「あまりはしゃがないでよ? こっちまで恥ずかしくなる」


 だがその隣では幽香が呆れた表情で彼を見ては右手で頭を抱えて項垂れている様子であった。

 

「あ、ああ。すまないな。こういう経験はあまりないもので」


 声を掛けられて優司は頭を軽く掻きながら返事をする。


「逆にあったら怖いよ……」


 幽香は目を細めながら短く溜息を吐いて肩の力が抜けているようである。

 

「おーい一年達! 野村さんから依頼の内容を聞くから荷物を置いたら集まってくれ!」


 奥の部屋から京一の声が木霊して響く。


「「はいっ!」」


 二人は緩んでいた気持ちが一瞬にして引き締められたのかしっかりと返事をする。そして優司達は言われた通りに背負っていた荷物をその場に置くと、京一と玲子が居る部屋へと向かった。


「よし、全員揃ったな。では改めて今回の依頼内容の詳しい話を聞かせて下さい」


 優司達が集まった事を確認すると京一は真剣な顔つきで玲子へと視線を向ける。 


「は、はい! わかりましたぁ。……あれは先月の出来事でした。私が抱えていた仕事が長引いてしまい帰るのが深夜の時間帯になっていた頃です。その日は丁度この神社に落書きや危険物が置かれていないかを確認をする為の見回りが私でして、一応市の職員なので手抜きは駄目かと思い仕事を終えてその足で神社へと向かいました」


 彼に促されて玲子がこの神社で起こった出来事を話してくと、三人はそれを黙って聞くことに集中していた。


「……それからざっと見回りをしたあと時間も遅くて電車もなくなってしまい、私はこの神社で一泊することにしました。幸いにも寝泊りだけなら設備は揃っていたので。……そして私が披露の影響で寝かかっていた頃、ある音が突然外の方から聞こえてきたのです。私は地元の不良が何か悪さでもしに来たのかと注意する為に重たい体を起こして外へと出ました……」


 彼女は淡々とした口調で語っていくと最後の方は何かを思い出した様子で言葉に躊躇いのようなものが生まれて変な間が出来ていた。


「ん? どうしました野村さん?」


 その様子が気になったのか京一が訊ねる。


「あ、いえ……。今でもあれは本当に現実の光景だったのかと不思議で……」


 玲子は自分が見た出来事が夢だったのではないかと言う気持ちを少なからず抱いているようであった。 


「大丈夫ですよ。悪霊を初めて見た人は大抵混乱するものですから」


 京一はそういう人を多く見てきたのか冷静な声色で返す。だが確かに彼に言っている事は優司にも理解できた。なんせ彼自身も悪霊を目の当たりにした時、これは夢なのではと疑いたくなるほどの出来事であったからだ。


「そ、そうですか。……えっと、それから外へと出た私は音の聞こえる方へと向かって注意をする為に声を掛けようとしました。けれど私はそこで違和感を感じたのです。……その人は真夜中だと言うのに異様に輪郭がはっきりと見えて白装束を着いていた事に。しかしその時の私は披露のせいで一刻も早く寝たくて、取り敢えず注意だけ早々に済ませて神社に戻ろうとしました」


 玲子は京一に言葉を返すと再びこの神社で起こった出来事を話し始めると、優司はその話の中に幾つか気になる点があった。

 だが今は彼女の話を聞くことが優先されるので彼は訊ねる事はせずに押し黙る。


「……それから私がその白装束を着た人物に声を掛けると、その人は無言のままゆっくりと振り返って私を見てきました。そしてその人と顔を合わせた瞬間に私は時が止まったかのように体が動かなくなりました」


 彼女は段々と声色を低くしていくと同時に手が小刻みに震え出していて、優司はそんな彼女を見てよほど怖い思いをしたのだろうと予想出来た。


「何故なら……その人は目の部分が無くて、ただの黒色の空間が広がっていたんです! しかも右手にはナタのような刃物を持っていて、刃の部分には血のような赤い液体が滴っていたんです! 私はそれを見た瞬間に一目散に神社を降りて近くのコンビニへと向かって朝まで過ごしました」


 彼女は突如として震えていた両手を胸元の辺りまで上げると、自身が目の当たりにした恐怖を必死に三人に伝えようとしている様子であった。


「……そのあとは事情を話して会社の先輩と共にあの場所へと再び確認へと向かいました。何かしらの事件だったら直ぐに通報しないといけないのと、神社に荷物を置いていってしまったので……」


 上げていた両手を下げて玲子は落ち着きを取り戻しながら話を終えた。

 そして全ての事情を聞き終えてこの場に暫しの静寂が訪れたあと、


「なるほど。つまり今回の依頼は野村さんが見たと言う、その白装束でナタを持った人物の除霊で間違いないですね?」


 京一は要点だけを汲み取り彼女へと訊ねて依頼の内容を再確認した。


「は、はい……」


 玲子は弱々しく言葉を返す。


「うーむ。一つ疑問なんですが、どうして野村さんはその白装束を着た人物が幽霊だと分かったんです? 例え目の部分が変に見えたとしてもそれは恐怖感から来る錯覚だったかも知れないですよね?」


 京一は両腕を組みながら何か考えるような仕草を見せて”白装束”を着た人物が本当に幽霊なのかどうか疑問に思っているようであった。


「そ、それは私が色々と気になってしまい市の書庫で、過去にこの神社で起こった事件や事故を調べたんです。すると一つの事件が見つかり、過去に首を切られた若いカップルの遺体が見つかったと言う事がありまして……。しかもその事件が起こる前に頻繁にあの神社には白装束を纏った人物が目撃されていたらしいのですが、その人物が逮捕されたという記事はありません。……それから私が一番あの人物を幽霊だと断定できる根拠は――」


 彼女はこの神社で起こった事を自分で調べたらしく、その結果この神社は曰く付きであることが分かったらしい。そして玲子は最後に重たそうな口調で白装束を着た人物についての事を言うと、この場での話は終わりとなった。

 


◆◆◆◆◆◆◆◆



「よし……ではさきほど野村さんから聞いた情報を元に作戦を練ろうか」


 玲子が仕事の都合で一旦役所へと帰ると、京一がちゃぶ台を囲みつつ作戦会議を開き始めた。


「了解です」

「承知致しました」


 優司と幽香は座布団に深く腰を付けて話し合いの体制を整える。そしてこの神社は土日の間だけは宿泊可能とのことらしく、逆に言えばその間に依頼を達成しなければならないのだ。


「まず白装束についてだが野村さんが最後に言っていた事が正しければ十中八九、悪霊が人の形を成しているだろう」


 京一が人差し指を立たせて悪霊についての憶測を語っていくと、それは優司とて同じ見解であった。


「つまり……相当の力を蓄えている悪霊と言うことですね」


 優司の隣に座っている幽香が眉を潜めながら呟く。


「ああ、そうだ。そしてこの悪霊は俺の予想では夜限定に現れる者だと思っている。理由としては先程の話を聞く限り全て夜の間に起こっているからだ」


 京一はその悪霊が出る時間帯と理由を話した。そしてそれを聞くと幽香達は納得した様子で頷いて、


「じゃぁ、俺達は夜が来るまでこの神社で待機という事ですか?」


 そのまま優司は手を顎に当てながら質問を投げ掛けた。

 それは夜になるまでに何かしら自分達でやれる事はないのかという意味合いを込めたものである。


「うん、そうなるね。だけどやるべき事はあるよ。それは除霊具の手入れであったり、この神社の周囲を下見したりとね」


 小さく頷きつつ京一は彼の質問を返していくと、その言葉の意味を理解出来たのか幽香は両手を小さく合わせて力強い視線を優司に向けてくる。


「……えっ? な、なに?」


 そこで優司は一体彼は何に気が付いたのだろうかと考え始めるが、それは唐突にも和室に鳴り響く着信音によって遮られた。しかも縁起でもない事にその着信音は某有名ホラー映画に使われているもので、それが流れ始めたら確実に殺されるというやつである。

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