表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第7話 今日、急遽、同居

 今日、急遽、同居人が増えた。

 なんだろうか、この早口言葉みたいなものは……


 と、まあそれはいいとして。


「お前は誰だ?」

「と聞かれたら……答えてやるのが世の情け……世界の破壊を――」

「おい、それ以上をダメだ! コンプライアンス、略してコンプラに関わる」


 そう、この近代化したご時世。コンプライアンスというのはとても、とても大切なのである。


「ところで、なんで俺の家に……何が目的だ?」


 家に机とソファーなんて気の利いたものはないので、俺はベッドに腰かけ、目の前に彼女を立たせる。


「それは……えへへ」

「おい、照れるな」


 何故か頬を赤く染める彼女に、俺はすかさずツッコミを入れる。


「というかだ、お前は魔人なんだろ。こんなところに来て大丈夫なのか?」

「それを言うならあなたも。私はあなたの敵なんですけど……そう易々と家にいれて大丈夫なんですか?」

「構わない、お前が俺を襲うようには見えない」


 というのは実際嘘で、もし仮に俺を本気で殺そうとしているなら……今ここで魔力を押さえている理由がない。なんせ抑えた魔力というのは、そう易々と戻るものでもないのだ。もし本気で俺を殺そうとしていたならば……家にくるのではなく街の外、

つまり魔力を探知されない場所に誘導しなくちゃいけない。


「なら話しますけど、私は今日からあなたのお世話をすることになりました。つまり

専属メイド……ですね」


 と言って、また顔を赤らめる。


 やめろと言っているのに。


「本当にそれが目的か?」

「はい。そうです」

「まあいい、お前みたいな魔人をほおっておくわけにもいかないしな……しょうがないから家にいさせてやるよ…………で、何をしてくれるんだ?」

「決まってるじゃないですか、夜のお世話ですよ」

「それは結構だ」


 やっぱりコイツ、追い出したほうがいいかもしれない。


「では、まあ……料理、家事、洗濯、といったところですかね」


 見たところ……と、メイドは俺の部屋に目をやった。


「ご飯は外で済まして、掃除は……年に一回、洗濯はたまったらクリーニングに持っていくといった感じでしょうか?」

「悪かったな汚部屋で」

「いいですよ、分かってたので」

「……まさかストーカーじゃないよな?」

「そんなワケ…………ないじゃないですか」


 なんか間があったような気がするが、ひとまず置いておく。大体察したが、おそらくはフィリーがよこしたのだろう。『財務大臣誘拐事件』の汚名を晴らすために。


「じゃあ寝るぞ。俺は今日疲れてんだ」


 そうして、俺が寝ようと布団にもぐると、


「そうですね」


 と言って、彼女も布団に潜り込んできた。


「何してるんだ?」

「添い寝ですよ、えへへ」


 ……えへへ、じゃないんだが。


「床で寝ろ、床で」

「まさか、年頃の女の子を床で寝かせるつもりですか?」

「俺は知ってるからな。魔人の中には若そうに見えて百歳平気で越えてる奴」

「へえ、そうなんですね」


 まあ、他人事ということは……多分、彼女は違うのだろう。ちなみに某メイドは300歳である。


 しかし、そうなると……本当に年頃の女の子(魔人)と寝ることになるが……なんとなくそれは憚られた。


「だったら…………」


 としばらく悩んで、結局出た結論というのが。


「クソッ……俺が床で寝るよ」


 しかしそう言った時にはもう遅かった。というのも、横から小さくかわいらしいいびきが聞こえたのである。


「――ああ、マジもんの女の子だったのか」


 俺は身体をぎゅっと小さな手で掴まれながら、天上を見上げ絶望する。


 寝れない……と。




 よくじつぅ。


 おれは……すごくぅ、ねむいですぅ。


 あさひが、のぼってきたのがあ、かーてんごしに、みえました。


「ふわあ」と、隣からあくびが聞こえた。


「おはようございます」

「ウン、オハヨウ。トッテモイイユメガミレタヨ」

「なんだか眠そうですね」

「朝は弱いんだ」


 いや朝に弱いというか……そういう次元の話ではないんだが。なんせ俺は寝ていないのだから。


「というわけで、今から朝食を作りますんで……寝てていいですよ?」

「ありがと……おやす……――」




「起きてください、朝食ができました」


 そう言われて、俺は目を覚ました。

 というよりは、家に他人がいることに驚いて目を覚ました。


「なんか、いい匂いがするな」


 鼻腔をくすぐるのは、パンが焼けた香ばしい匂い。


「今何時だ?」

「そうですね、寝不足っぽかったので……ちょっと遅めですけど九時です」

「お前、どっかでメイドやってたことあるか?」

「実は……ないんですねこれが」

「ないのかよ」


 そうして俺は着替えて、リビングに行って……驚いた。


 リビングに長方形のテーブルが一つと、椅子が四つと、そしてソファーとテレビまで用意されていた。さらに、リビングがキレイに掃除されているではありませんか。


「どどどどど、どうしたんだよこれは!」


 驚きを隠せない。あれだけ散らかっていて、さらにゴミ以外は何もなかった、正真正銘の汚部屋が……こうも変貌するものでしょうか。


 しかも、机の上にはまるでいつも外で食べているような、いやそれよりも豪華でおいしおうな朝食があるのだ。



「お前、どっかでメイドやったこと……」

「ないです」


 そんなまさか……そう思いながら俺は椅子につく。同時に、彼女も向かい側……ではなく隣の椅子に座った。


「なんで隣?」

「ダメですか?」


 俺が戸惑いながら尋ねると、彼女は肩を俺にくっつけて、上目遣いで俺をみた。


「わかった、わかったから……肩をくっつけるな。俺にも一応彼女がいるんだ」

「……そうなんですね」


 俺は突き放すようなことをいったつもりだったのだが、彼女は何故か微笑を浮かべると、くっつけていた肩を離した。そうして俺は、不思議に思いながらも久々の家での朝食にありつくのであった。


「それじゃあ、いただきます!」

ぜひ、ブクマや評価、感想など、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ