【第3話】 『奈美を救え』
「そいえば、ラプラスの奴、愛する人の名前がどうとか言ってたな。」
そう言って、昴流は、ラプラスに貰った正方形型のスマートフォンのようなものを取り出して、手に持った。
「てか、ここホントに路地裏か?
さっきよりめっちゃ明るいぞ。でも、この家ってあそこにもあったよな。」
場所は2023年の路地裏と全く一緒。
しかし17年前とまでなればまるで別の街かのような見た目をしている。
そんな路地裏と言うよりかは、住宅街で昴流は愛する人の名前とは何なのか考えていた。
「愛する人か。やっぱり奈美なのか。本当に奈美なのか。いや、奈美に違いない。俺の愛する人は奈美しかいない。」
人がいない夜の住宅街とはいえ、1人で女の子の名前を連呼するのは傍から見たら、異様である。
「奈美って入力するしかないか。」
昴流は、奈美以外考えられなかった。
そして、昴流は、その正方形型の機械に電源を入れた。
[愛する人の名前を入力してください。]
その液晶から、そう文字が出てきた。
それと同時にスマートフォンのフリック入力のような画面も表示された。
[村上奈美]
昴流は、心に決め、かたい表情でそう入力した。
まだ付き合ってないとはいえ、両想いはほぼ確定しているようなものだ。
昴流はそう入力するしかなかった。
[その人がいる年代と日付を入力してください。]
次は数字と一緒に、そう表示された。
「待てよ、あの日を入力したいんだが、7月20日か、7月21日か忘れてしまったじゃねぇか。どうするか。21な気がする。21にしよう。」
本当は7月20日である。
この時、昴流は1日ズレた日付を入力したのだ。
[2023.07.21]
昴流は入力した。
[申し訳ありません。2023.07.21にその人物は存在しておりません。]
昴流は衝撃を受けた。
機械の故障を疑ったが、すぐ昴流は自分がいなくなったのが7月20日だと気づき、すぐ入力した。
[2023.07.20]
[わかりました。2023.07.20 村上奈美さんにおかけ致します。]
そう文字が出た直後、電話マークが出てきて、発信音が流れだした。
この時、20時頃だっただろうか。
昴流は夜の住宅街の中、街灯の下で奈美に電話をかけた。
しかし、奈美と電話が出来るという喜びよりも、この翌日、奈美がいないのかという疑いつつも、恐怖でしかなかった。
ただ奈美にはそれを伝えることがどうしても出来なかった。
[申し訳ありません。繋がりませんでした。]
そう表示された。
奈美は確かにいつも20時頃に夜ご飯を食べていた。
昴流はまた後で掛け直すことにした。
そう思った時だった。
[ラプラス様より着信がありました。]
あのラプラスからこの機械に電話をかけてきたのだ。
なんのことかと思い、すぐ電話に出た。
[ガチャ]
「もしもし、藤田だけど。ラプラスか?」
奈美のことが頭から離れず、少し震えたような声でそう言った。
「正しくそうだ。どうやら衝撃の事実をもう知ってしまったようだね、藤田くん。」
「あれってどういうことなんだよ。
2023年の明日にはもう奈美はいないってことなのか。」
「おー、察しがいいね、藤田くん。
さすが、僕が認めた男だ。あなたの愛する人は明日にはもう居ない。明日の、夜頃亡くなる。」
「!?、どういうことだよ、ラプラス!」
「そういうことだよ、藤田くん。くれぐれもこの事は奈美くんには、伝えてはいけないよ。
2006年にいることも、明日奈美くんが亡くなることもね。」
「わ、分かった。俺はどうすればいいんだ。」
「君がいる2006年7月20日、その日に凶悪な殺人事件が起きるんだ。その犯人こそが、今回奈美くんを、殺す犯人でもあるのだよ。だからそいつを始末してくれ。」
「その犯人は誰なんだよ。」
「それがね。私でも分からないんだよ。
同一犯ということくらいしか情報がないからね。藤田くん、本当に奈美くんのことを愛しているのなら、今からやることはわかっているよね。」
「もちろんだ。絶対に捕まえて、奈美を取り返す。」
「期待していますよ。藤田昴流くん。」
涙が出そうになった昴流だったが、見当もつかない中すぐに行動を起こした、昴流だった。