【第2話】 『2006』
よくよく考えてみれば、本当に昴流が2006年に行っているのだとしたら、何故電話が繋がったのだろうか。
━━━2023年 路地裏にて
「こんなとこに呼び出してなんのつもりだ。」
薄暗い少し臭う路地裏で昴流は言う。
カラスが路地裏のゴミをいじってるせいか本当に臭う。
「まあまあ、そう怒るな。
お前にやってもらいたいことがあるから呼び出したんだよ。藤田くん。」
「だから、なんで俺の名前を知ってるんだよ。」
「俺はねいわゆるタイムトラベラーってやつなんだ。」
昴流の質問に対して、少し間があったように感じた。
どうやら『ラプラス』の正体は、タイムトラベラーらしい。誠か否か、分からないが。
「タイムトラベラー?
そんなやつ世の中にいる訳ねぇだろ。笑わせんな。」
少しクスッとしながら昴流は言う。
相変わらず少し薄暗い路地裏で、2人は5分ちょっと話していた。
「まあ詳しい事情はまた後ほど話そう。」
そうラプラスは言ったが、その詳しい事情が知らされるのは随分と後のことだった。
「とにかく、なんの用なんだラプラスよ。」
「とりあえず本題に入る前にお前にこの2つの機器を渡そう。」
そう言ってラプラスが渡したものは、デジタル調で「2023」
と書かれた黒色の手のひらに収まる程度の箱型の機器と、もうひとつは、今の細長のスマートフォンとは似ているようで似ていない、液晶付きの正方形型の機械だった。
そしてラプラスは、
「1つは、お前をランダムな年代に飛ばす機械だ。」
と言った。
どうやら「2023」というのは、今の西暦のことで、この機械があればどの年代にも行けるらしい。
ただし、いつかは分からないそう。
「じゃあもう1つの正方形のスマホみたいなものは…」
「今からいつかの年代にお前を飛ばす。そこで愛する人の名前をその機械に入力してみろ。」
詳しくは教えてくれなかったが、この時昴流は何となくこの機械が何なのか察していたらしい。
「愛する人…?」
「それはお前が1番分かっているはずだ。」
そうラプラスは言い、昴流は2023年の路地裏から消えたのだ。
そう。このようなことがあって2006年に彼は飛ばされたのだ。
「『2006』…?てことは、ここは2006年の路地裏!?」
今度は少し明るめの、住宅街に飛ばされた昴流であった。




