【第1話】 『ラプラス』
2023年7月20日。
夏休みにさしかかろうとしていた少し薄暗い雲がかかっていた日の夕方のことだった。
「あー、今日も疲れたなー。お前もそう思うだろ?」
「まあでも明日から休みじゃん!」
温度31度湿度92%と、じめじめした空気の中、2人の男女が下校中、街中を歩いている。
「奈美よ、お前俺のこと好きか?」
「何よ急に。」
この2人は藤田昴流と村上奈美。
幼稚園からの幼馴染で、両想いだと分かっているのに、何故か付き合わない2人である。
「だってよー。俺は付き合いてぇけどよ。
お前、いつ言ってもまだ早いまだ早いって俺らもう高校2年生だぜ?もうそろそろ付き合わねぇか?」
「まだ、早いのよ。私だって昴流のこと好きだし、私だって付き合いたいわよ。でも、まだ、まだなのよ。」
「じゃあなんで…」
そう昴流が言いかけた時、ある黒スーツに黒ズボンでフードを被った見るからに怪しげな男に話しかけられた。
「な、何ですか?」
昴流は咄嗟に言葉を発した。
「俺は『ラプラス』と言う。よく覚えておけ。」
「ほー、ラプラスさんね。さては、外国人かなんかですか?日本語お上手ですね。なにか困ったことでも?」
昴流は何故かドヤ顔でそのラプラスと名乗る男に言った。
「れっきとした日本人だバカヤロゥ!」
怒鳴り口調でラプラスは怒っていた。
それには昴流も奈美も唖然としていた。
「まあそんなことはどうでもいい。とにかく藤田昴流。お前と話がしたい。少しついてきてくれ。」
「な、なんで俺の名前を!?」
「ちょっと、あなたどこの誰だか知らないけどなんのつもり?私たちの邪魔をしないでくれる?」
昴流は驚き、奈美は怒っていた。
夕方の18時頃だっただろうか。
夏とは言え、全体が黒い雲であるせいか、暗くなってきていた。
「奈美、すぐ戻る。」
「うん、早くしてね。」
だが彼はそれ以降戻ってくることは無かった。
なぜなら2006年に行ってしまったからだ。
その事実は奈美に知らされることはなかった。
そして、一時間経って夜の19時頃。
完全に暗くなり、雨が降り始めている中、1人の女性は雨とともに流れていたものがあった。
━━━━━━プルルルル…
「はい、村上です。」
「奈美か!?俺だ、昴流だ!」
「え?昴流?どこにいるのよ!!!」
「悪いが、それは教えられねえ。ラプラスに禁じられてるんや。」
「すぐ戻れるの?それとももう戻れないの?」
「大丈夫や、すぐにもどる。任務を済ませてからな!」
「な、何よ任務って!…」
ブチッ
昴流がいなくなった日の23時頃にその電話が来たらしい。
どうやら本当に昴流は2006年に行ってしまったらしい。
果たしてその任務とは…