【第15話】 『完全閉鎖』
「とにかく、これを早く何とかしねぇとな。」
「これがどうかしたの?」
奈美は昴流の発言に不安そうな表情を浮かべて、昴流に質問した。
「いや、お前には関係ない。俺が何とかする。」
そう言って昴流は立ち上がり、座席の下を中心に隈無く探した。
「やっぱりか。」
全ての座席下に、毒ガスが噴射されると思われる装置が仕掛けられていた。
「ねぇ。もしかして爆弾とかじゃないよね。。」
当たっているようで外れている。
奈美は、本当に深刻そうな顔をしていた。
「大丈夫。そんなもんじゃねぇ。お前は大人しくしとくんやぞ。」
「分かった。昴流を信じるよ。何のことだか分かんないけど、昴流にかけてみるよ。」
「ありがとな。」
電車の中で、2人の会話が響く。
乗客は、ちらっとこちらの方を見ていたが、やはり、何故こんなにもスピードを出して走る必要があるのかの話題の方が強く、見向きもせず、深刻な顔をしている乗客が大半を占めていた。
「とりあえず、他の車両も見てみるか...。」
そう言って昴流は、隣の第5車両へと入り、2,3席程見て、第4車両へと戻った。
どうやら、その装置は無かったらしい。
昴流はホッとした。
そして、昴流は乗客にこう呼びかけた。
「皆さん。落ち着いて聞いてください。
どうやらこの車両には、毒ガス噴射装置が仕掛けられていました。」
ザワザワ…
乗客は、瞬く間に騒ぎ出した。
そりゃそうだ。毒ガスなんて噴射されたら、この世の終わりだ。命の危機を感じ始めた乗客の中には、うずくまって泣きだす人もいたぐらいだ。
「ですが、他の車両には仕掛けられてないことが分かりました。なのですぐに、第3車両、第5車両に分かれて移動してください。」
それでも泣いている人もいたが、大抵の人は、安心したような表情ですぐ動き始めた。
だが、すぐにドアを開けようとした乗客が衝撃的な事を言った。
「君、ドアが開かないよ。」
「こっちもだよ。」
反対側のドアを開けようとした人もそう言った。
「何ですって!?」
その瞬間、乗客全員が固まった。
「こんな事だったら、窓を開けて換気するんだ!」
そう1人の乗客が言い、窓を開けようとしたが、窓も全く開かなかった。
「クソっ!まさか見られているのか...?」
「ねぇ。なんかだんだん数値が減ってるよ。」
奈美にそう言われて、座席下を覗くと、『14:52』と赤文字で書かれており、カウントダウンかのようにだんだん数字が減っていた。




