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第91話


ベリーが突然城から出て行った後、竜騎士達が探しに行ったのだが暗闇だった為直ぐに見失ったとソフィアに連絡が入った。


「ベリーちゃん、何処へ行ったの。直ぐ帰ってくるかしら」


ソフィアは竜達が眠る竜舎へと向かった。


竜騎士団の訓練場を通りかかると、リカルドと団員達がランプの灯りの元で荷物を運んでいる姿が見えたのでソフィアはリカルドに声をかけた。


「リカ兄様」


「ソフィア?どうした、こんな所に一人で来るなど危ないではないか」


「すみません、ベリーちゃんが戻って来てないかと思って」


「そうか、ならば私も一緒に行って確かめよう」


「そんな、リカ兄様はルイスとオルティス様を探しに行く準備をされているのに、私の為にリカ兄様の手を煩わせる訳にはいきません。大丈夫です、竜舎は直ぐそこですもの」


「もう準備は整った。もう空が白んできたから、あと半刻もしたら出立できる。それまでは団員達に休息を取らせるので問題ない。

ソフィア、城の中は安全だと言いたいが何が起こるかわからない、君を一人で行かせるわけにはいかない」


リカルドが一度口に出したら引かない性格だと知ってるソフィアは一人で行くのを諦めた。


「リカ兄様、ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」


「ああ、では行くとしよう」


二人が歩き出そうとした時、突然一人の団員が叫んだ。


「アルバ隊長、空から何かやって来ます!」


空に黒い点が現れ、その影は見る見る間に大きくなり、やがて姿を表し地鳴りを立てて降り立った。


「ベリーちゃん!!」


「ベリー、帰ってきたのか」


ベリーは辺りをキョロキョロと見渡すと直ぐにソフィアの姿を見つけて凄い勢いで走り寄ってきた。


「ギャウー(ソフィアただいま〜)」


「良かった。心配してたのよ、ベリーちゃん何処へ行ってたの?後、その手に持っている籠は何?」


ベリーは「ギャウ(うふっ)」と一声鳴くと持っていた籠の中にソフィアをポイっと入れた。


「えっ?えっ?」


周りで見ていたリカルドと団員達もベリーの突然の行動に驚き固まってしまった。


ベリーは上機嫌で「ギャウー(行くよー)」とソフィアが入った籠を前足で掴み飛び立った。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?ベリーちゃん!!!?」


「ギャウギャウー(大丈夫、大丈夫)」


ソフィアの叫び声で固まっていたリカルドと団員達は我にかえり慌てだした。


「なんてことだ!ベリーがソフィアを連れ去るとは。誰かこの事をライムンド殿下に報告を、私は直ぐにベリーとソフィアを追う。探索魔法が出来る者1名私と一緒に来るように」


「はっ」


「残りの者はライムンド殿下の指示のもと、グラシアとオルティスの捜索にあたるように」


リカルドは指示を出したあと団員1名を連れ、急いでベリーの後を追った。


空へと上がり、飛び去ってから数分と経ってないはずなのに辺りを見渡すがベリーの姿がどこにも見えなかった。


「何処へ行ったのだ、ベリーとソフィアは」


「アルバ隊長、探索魔法によるとベリーはここから10時の方向を飛行している様です。どんどん離されます」


「そうか、急いで後を追うぞ」


「はっ」


「それにしてもなんて速さだ、これが野生との差か…」


必死に追うリカルドの事も知らず、籠に入ったソフィアを持ったままベリーは鼻歌を歌いながら、もの凄い勢いで飛んでいる。


「ベリーちゃん、どこへ行くのか教えて?」


「ギャウーギャウギャウ(えへへっ。ベリーねアンデとルイス見つけたの、あと緑の竜ともう一人)」


「本当に!?」


「ギャウ(うん!アンデの気配とソフィアの気配を辿ったら森の中に居たの)」


「私の気配?ルイスが戦争へ行く前に渡した魔石から発したのかしら。見つかって良かったわ、 ルイスもオルティス様も無事なのね。ありがとうベリーちゃんって凄いのね」


「ギャウー(わーい、ソフィアに褒められたー)」


「ベリーちゃん、ルイスとオルティス様怪我してなかった?」


「ごめんねソフィア、暗かったからベリーわかんない」


「そうなのね…。ねぇ、ベリーちゃん、魔の森って強い魔物が沢山いるでしょう、一晩ルイスとオルティス様が過ごして大丈夫だったのかしら」


「ギャウギャウ(側に竜が二体いたからなんとかね〜一体だったら夜は無理かも、アンデ達は野生じゃないから特にね〜。私が行った時周りにいっぱい居たからとりあえず威嚇しといたよ。私の愛するアンデに何かしたら許さないって言ったら皆逃げてったよ)」


「ベリーちゃんって強いのね」


「ギャウ〜(えへっ、それほどでも〜)」


「ベリーちゃん、あとどれくらいで着くの?」


「ギャウ(あとちょっとだよ〜)」


ルイス達をベリーが見つけてきてくれて安心したのか、寝不足だったソフィアはベリーの魔力に包まれ、籠の中でも寒くなく程良く揺れていたことも合わさり高所を飛んでいる恐怖を忘れうとうとしていた。


「ソフィア起きて、そろそろルイスの所に着くよ」


ベリーに起こされたソフィアは恐る恐る籠の縁に手を置き、外に顔を出すと、そこは見渡すかぎりの鬱蒼とした木々が目に飛び込んできた。


「凄いわ、こんなにも広いのね、魔の森を空から見るなんて初めて」


ベリーは森の木々の間をソフィアに当たらない様にそっと着地した。

ベリーとソフィアの目の前にはアンデと側に横たわっているルイスの姿があった。


ソフィアはベリーに籠の中から出してもらい、ルイスの元へと走った。


「ルイス!!」


ルイスに近づくと彼の着ている服があちこち裂け、腕は大きく切られて痛々しい姿がソフィアの目に入った。


「大丈夫?ねぇ、ルイスお願い、目を開けて!」


焦ったソフィアはルイスの頬を優しく叩き、揺さぶり、彼が目を開けてくれるのを待つ。

だがルイスの目は一向に開く事は無く、ぐったりと力なく動かない。


「嫌よ、嫌っ!お願いだから目を覚まして、私を残して逝かないで…ルイス、ルイス!!」


ソフィアの目から大粒の涙が溢れだし、ルイスの頬へと流れ落ちていく。何度も何度もルイスの名前を呼び続けるソフィアはルイスの武骨な節くれた手をぎゅっと握りしめた。


そんなソフィアの思いが通じたのか


「う、ん…?あぁ俺いつの間にか気を失っていたのか。…ん?あれ?ソフィアなぜ君がこんな所に??…」


ルイスが目を覚ましたことに喜ぶソフィアの目からは更に大粒な涙がポロポロとこぼれ落ちる。


「ルイスっ!目を覚ましたのね、生きていてくれて良かった…本当に心配したのよ!」


「すまない、心配かけたな。怪我は大したことはないのだが、血を流しすぎて動けそうにないんだ」


「こんなに酷い傷口なのに大した怪我じゃないわけないでしょ!!!」


「す、すまない」


「今直ぐ治すからじっとしていて」


「いや…だが」


ルイスは、ソフィアがキューちゃんを呼び出す事を止めようとするが口を開く事さえ許されなかった。


「良いからじっとしていて!」


「はい!」


ソフィアを怒らせてはいけないと前回学んだはずのルイスは、再びソフィアを怒らせてしまい後に後悔することになるのだった。


怒ることは一旦置いといて、ソフィアは影から従魔のキューちゃんを呼び出した。

キューちゃんはソフィアの肩に乗り、一度ソフィアへ頬擦りするといくよと言わんばかりに「コーーーン」と鳴いた。

ソフィアとキューちゃんが光に包まれ、ソフィアの魔力が増幅された。


《パーフェクトヒール》


ソフィアが唱えるとルイスも光に包まれたのだが、勢い余ったのか光が辺り一帯にまで拡がってしまった。


少し離れて横たわっているオルティスは虚ろな目でソフィア達を見ていた。


「…光の中にいらっしゃるのは女神様か?ああ…自分も光に包まれて…暖かい…」


光がゆっくりと収まり、今まで遠くに聞こえていた魔物達の鳴き声も聞こえなくなり、森に静寂な空気が流れた。


「ルイス痛い所は無い?」


「ああ、ありがとう。ソフィアのおかげで何処も痛くない」


「良かった」


「ソフィア」


「あっ」


ルイスはソフィアを肩を抱き寄せ、口づけをしようと顔を近づけた。

その時


「ここに居たのかソフィア、ベリー!探したぞ」


ゴォっと強い風が吹き、森中に響くバリトンボイスに驚いたソフィアとルイスが見上げるとそこには白い竜とリカルドの姿があった。


「リカ兄様!?」「アルバ隊長?」


リカルドはすぐさま地面へ降り立ちソフィアの元へと駆けつけた。


「ベリーを追って来たのだが、探索魔法でも見つけられなくなってしまい困っていた時に森が光ったのだ。光の方へ来たらお前達の姿を見つけた、あの光はなんだ?」


「さ、さあ…なんのことかしら?」


リカルドにはキューちゃんのことを話していないので誤魔化すことにした。


(いつかはリカ兄様にも話さないといけないわね)


「アルバ隊長」


「グラシアか、良かった無事で。一緒に行ったオルティスは無事か?」


「はい、怪我をしていますが命に問題はありません」


「何処だ?」


「あちらです」


ルイスはリカルドを案内しオルティスの元へと行くとオルティスはリョクの側で気持ち良さそうに寝ていた。


「怪我をしていると聞いたが?」


「そ、そうですね。確か腰を打ち身体が動かないと言っておられたのですが」


二人がどう見てもオルティスは時々寝返りをうっていて動けない様には見えなかった。

ルイスはオルティスの体を揺さぶり起こした。


「オルティス殿、起きて下さい」


「はっ、はい」


急に起こされ、がばっと起き上がったオルティスは自分が動けることに驚き手足を動かした。


「あれ?自分は動けなかったはず…」


手足を確認してるオルティスにリカルドは心配して声をかけた。


「オルティス、大丈夫か?」


「アっ!アルバ隊長自ら探しに来て下さったのですか。ありがとうございます、昨夜までは首から下か動けなかったのですが、なぜだか今は動かせる様で大丈夫です」


「…そうか、良かった。二人共無事で良かった、他の団員達も心配していたから二人が無事だと分かれば喜ぶだろう」


リカルドはソフィアとベリー、行方不明だった二人の無事が分かった為、上空で待機していた竜騎士を呼び、城へ伝えるように命じたのだった。


「グラシア、オルティス、昨日何があったのか話してくれ」


「「はっ」」


オルティスが先に自身が倒れるまでの経緯を話し、続いてルイスが戦った元A級ランクの冒険者クーガーのことを話した。


「そうか、良くやった。この事は私からライムンド殿下に報告しておこう」


「はい。アルバ隊長、元第ニ騎士団副団長パブロ・アロソンの兄ハイメ・アロソン侯爵子息だけは生存しており、捕縛しているのですが」


「その者は何処にいる?」


リカルドに問われ、ルイスとオルティスが居たはずの場所を見るが縛られているはずのハイメ・アロソンの姿が見えない。


「私が眠ってしまったから捕縛の魔法が解けて逃げてしまったのか?!」


慌て焦るオルティスの側で「ギャウー」とジェードが鳴いた。


ジェードの声がした方向を三人が見ると、そこには枝の先にぶら下がっているハイメ・アロソンがいた。


「「「!!?」」」


「ジェード、お前が捕まえておいてくれたのか?」


「ギャウ」


「ありがとう、ジェード助かったよ」


「ギャウギャウ」


褒めてというように顔を近づけたジェードの頭をオルティスは優しく撫でる。


「お前が私のパートナーで良かったよ」


「見つかって良かった。オルティスはハイメ・アロソンを下ろし再度捕縛を。時期に応援の者達がくるだろう、オルティスはその者達に合流し事後処理をするように。グラシアは先にソフィアとベリーを連れて王城へ戻ってくれ、いつまでもソフィアをこんな所に置いて置くわけにはいかない」


「はっ、かしこまりました」


ルイスとリカルドがソフィアとベリーの居る場所へと目を向けると、ソフィアはベリーにもたりかかり眠っていた。


「…嫁入り前の女性がこんな所で寝るとは」


「先程まではベリーと戯れていたようですが、待たせ過ぎた様ですね」


「そのようだな」


「それではアルバ隊長、一足先に失礼致します」


ルイスはリカルドに一礼すると、ソフィアの元へと走って行った。


「ソフィア、起きて」


「えっ、あっ、はい。ごめんなさい、私いつの間にか寝てしまったのね」


「すまない、待たせすぎた」


「いいえ、ルイスはお仕事だから時間がかかるのは当たり前よ。私はベリーちゃんの体温が心地良くて寝てしまったのだけなの」


「そうか、気持ち良く寝ていたところすまないが、アルバ隊長がソフィアとベリーを連れて先に城へ帰るように命じられたのだ」


「そうね、では私は籠の中へ…」


「ちょっ、ちょっと待ってソフィア、まさかまたその籠に乗って帰るつもりか?」


「違うの?」


キョトンと首を傾げるソフィアに、ルイスは少し笑って手を差し出した。


「ソフィア、私と一緒にアンデ乗って帰ろう」


「うんっ」


ルイスはアンデに颯爽と乗るとソフィアの手を引っ張り自分の前に座らせた。


「アルバ隊長、それでは自分達は先に城へ戻ります」


「ソフィアを頼んだ」


「はっ」


「リカ兄様、探しに来て下さりありがとうございました」


「もう無茶はしないでくれ」


「…はい」


リカルドとオルティスに見送られ、ルイスとソフィアが乗ったアンデが飛び立った。

その後ろをベリーがついて行く。


「ベリーちゃん今回はありがとうね、ルイスやアンデ、オルティス様とジェードが無事に見つかったのはベリーちゃんのおかげよ。帰ったらベリーちゃんの好きな物プレゼントするわね」


「ギャウー(わーい、なにがいいかな〜)」


喜んでいるベリーを嬉しそうに見ていたソフィアだが、何か声が聞こえると後方へと目を向けた。


「ギャウーー、ギャウーー」


「ルイス、後ろから何か飛んでくるわ」


「なに?!」


その声の主はあっという間にソフィア達に追いつき、その姿を表した。

ベリーより少し小ぶりで濃いピンク色の竜だ。


「ギャウー(見つけた!待ってーお姉ちゃーん)」


「ギャウッ(えっ、なんで妹がここにー?)」


「ギャウギャウ(なんで帰ってきてくれないの?酷い!お姉ちゃんが帰ってくるのをずっと待っていたのにウルウル)」


「ギャウ(私は運命の番と出会えたの!森なんかに帰るわけないの〜私はアンデと王都に戻るのっ、貴女は森へ帰るのよ)」


「ギャウー(お姉ちゃんがいなくて寂しいの、だったら私も付いてく)」


「ギャウ…(えー…)」


「ギャウギャウ(お姉ちゃん、隣の方はお姉ちゃんの番なんでしょ?紹介して欲しいな)」


「ギャウギャウ(やだー、なんであんたに紹介しなきゃいけないのー)」


「ギャウー(酷いよ!こんなに可愛い妹に紹介できないなんてっ)」


「ギャウ〜(やっぱり森に帰りなよ〜)」


「ギャウ〜(嫌です〜このままお姉ちゃんに付いていきます〜)」


「ギャウ…(はぁ…)」


竜二体の会話が終わったようなのでソフィアはベリーに事情を聞いた。ベリーはしょんぼりしながらソフィアに説明しだした。


「ギャウ…ギャウ…(この竜は私の妹で、このまま私に付いて行きたいんだって、言い出したらきかないから…ごめんねソフィア迷惑かける…)」


「濃いピンクの竜は妹さんなのね。妹さんも王都に来るの?入れるかしら?」


「ギャウ…(私も入れたから入れると思うよ。はぁ…妹が来たら私のアンデとのラブラブな生活が…)」


「あら、ベリーちゃんは妹さんが嫌い?」


「ギャウー(うーん、過剰な甘えん坊だから相手にしてるとちょっと疲れるかな…嫌いじゃないよっ)」


「あら…大変だったのね」


ソフィアはベリーと妹の事を全てルイスに説明し相談することにした。


ソフィアの話を聞きルイスは暫く悩んでいたが、とりあえずこのまま連れて帰り、王の判断に任せようということになった。


「ソフィア、もう王城に着く。ベリーの妹君の事は任せてくれ、ただ通訳が必要になったら頼らせてくれ」


「はい、勿論です」


その頃、地上では騒ぎになっていた


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