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第89話

二人きりの時間が終わり、明日に備えルイスは宿舎へと帰らなければならない。

指を絡めたまま扉の前まで来るが、しばらく触れ合えない事が分かっている二人はどちらも手を離せないでいた。


「名残惜しいがもう行かなければならない。ソフィアとの約束は必ず守るから安心して待っていて欲しい」


「はい、無事に帰ってきて下さいね」


「ああ」

ルイスは名残惜しそうにソフィアの手を離し背を向けた。


ソフィアは開けた扉の間からルイスの姿が見えなくなるまで見送っていた。

だが、ルイスが廊下に出て十数歩歩いた所で何かに躓き突然しゃがみこんだ。


ソフィアは慌てて部屋から飛び出しルイスに駆け寄った。

ルイスを見るとどうやら靴の紐が切れているようだ。


「ルイス大丈夫?」


「大丈夫だ。紐が傷んでいたんだろう、歩いた拍子に切れてしまったようだ」


「そ、そうなのね。靴紐取り替えましょうか?」


「いや、大丈夫だ。明日は替えの靴を履いていくから問題ない」


「そう、良かったわ。あっ、ルイスにこれを渡し忘れてたわ」


「?」


ソフィアは思いついた様にポケットの中から手の中に収まる位小さな革袋を取り出しルイスに渡した。


「これは?中に何か入っているようだが出してみてもいいか?」


「ええ」


ルイスが革袋から手のひらにコロンと出てきたのはソフィアの瞳の色に似た小さな石だった。


「綺麗だな、魔石か?」


「そうよ、私の魔力を結晶化させて作ったの。

レティは作るのが上手なんだけど私は作るのが苦手で、ルイスと付き合い出してから作り始めたのにまだその位にしか大きくならなくて…。

本当はもっと大きくなってからアクセサリーにして渡したかったの、それに小さいから何も付与出来てなくて、ただの石だけどお守りに持って行って欲しいの」


「ありがとうソフィア。ソフィアだと思って持って行く」


ルイスはそっと石を革袋へ戻すと、大事そうに胸のポケットへしまった。


「ソフィア、部屋まで送ろう」


「部屋はすぐそこよ?大丈夫よ」


「少しでも愛するソフィアと一緒にいたい口実だ、送らせてくれ」


「ふふっ、ありがとうルイス」


ルイスは部屋までの短い距離にもかかわらずソフィアを送り届け、扉の前で軽く口付けを交わした後宿舎へと帰って行った。



廊下で警備に当たっていた兵士は遠くで二人のやり取りを見ていた。二人のあまりにもイチャイチャぶりに大量の砂糖を吐きそうになる。

「くそっ、イチャイチャしやがって、うらやましい。…はぁ、早く彼女欲しいな」とさめざめと心の中で呟いた。

その後兵士の中で、あの強面の第三騎士団長は婚約者にはめちゃくちゃ甘いと噂が広まったのだった。








あくる日、まだ夜が明けきらぬ早朝、王城の広場に竜騎士団員と相方の竜十組が集まっていた。

隊列をくみ、王の言葉を聞いている。

王の話の後、騎士団統括であるライムンドが出立の合図をすると竜騎士団員は竜に乗り、空砲が城中に鳴り響くとリカルドを先頭に一斉に飛び出した。


ソフィアは出立式に参加出来ない為、城の一番高い塔の屋上からレティシアと両親と共に竜騎士団が飛び立つ姿を見送るしかなかった。

竜騎士団の姿が見えなくなるまでずっと空を見上げていたソフィアは空に向かいルイスの為に祈る。


「どうぞ無事に帰ってきますように…」


ソフィアの呟いた祈りの声は突然吹いた冬の冷たい風の中へ消えていった。














ルイス達竜騎士団が出立してから、ソフィアとレティシアはお茶を飲みながらルイスとロベルトが帰って来たら何か二人の好物を作ろうと話しをして過ごしていた。


「お姉ちゃん、寒いからシチューが良いんじゃない?」


「そうね、あとは唐揚げと黒豚さんのハンバーグは外せないわね」


「お義兄さんもロベルトさんも大好きだもんね」


「あと何が喜ぶかしら」


冬の夜は早く、気がつけば日も沈みかけた時、急に城中がざわめき出しソフィアとレティシアが不安がっていると、部屋の扉がノックされる。


「ソフィア様、レイナルド王太子殿下がお呼びになられております、至急執務室に来るようにとのことです」


急なレイナルドの呼び出しにソフィアは驚き、慌てて返事をかえした。


「今行きます」


「私も行く」


ソフィアとレティシアは足早に執務室に急いだ。

執務室に入るとレイナルドとリカルドが険しい顔で何やら話をしている。

話に夢中になっているからか、レイナルドもリカルドもソフィアとレティシアが入ってきたのも気が付かないでいた。

話の途中で遮るのもどうかと思い戸惑うがレイナルドに呼び出されたのだからとソフィアはレイナルドに話しかける。


「あ、あの…レイお兄様」


「あっ、ソフィア。レティシアも来てくれたのか」


「レイお兄様何があったのですか?リカ兄様、戦争に行かれてたのではなかったのですか?」


「ああ…そのことでソフィアに来てもらったのだ。とりあえず二人共座ってくれ」


レイナルドとリカルドは一人がけのソファーに座り、ソフィアとレティシアは二人がけのソファーに座った。


四人が座ると侍女達すべての者達は退出を命じられ部屋を出て行った。


レイナルドが険しい顔をしながら口を開いた。


「今しがたリカルドが帰ってきて報告を受けたのだが…戦いは数刻で終わり、我が国の勝利で終わった。だが…」


レイナルドは言いづらそうで口を閉ざしてしまい、リカルドが代わりに話始める。


「本格的に戦闘が始まる少し前、両軍とも魔の森上空で睨み合いが続いていたのだが、オルティス第二騎士団長が魔の森の中に異変を感じグラシア第三騎士団長と共に様子を見に行きそのまま行方不明になってしまったのだ」


「そっ、そんなっ!ルイスが?」


「私は報告の為、先に帰国したのだが他の者達はまだ捜している最中だ。ただ日が落ちてしまうと魔の森の魔獣達が活発になり危険になるからもうすぐ残りの者達も帰ってくることになるだろう」


「で、ではルイス達は?」


「…また夜明けと共に捜索することになる」


「ルイスっ」


大型の危険な魔物がいる魔の森に一晩中過ごすなんて命の保証はない。いくら竜が一緒にいても安心はできない。

リカルドの言葉に衝撃を受けたソフィアは立ち上がるが、突然の目眩で床に倒れそのまま気を失ってしまった。


「お姉ちゃん!?」


「「ソフィア!?」」


レティシアとレイナルド、リカルドが慌ててソフィアの元へと駆けつけるがソフィアは気を失って目を開けることはなかった。












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