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第85話

ある日のお昼、王女シャルロットの部屋にレティシアが現れた。


「シャロちゃーん!!ライ兄様からお小遣い貰ったからお揃いのお洋服買いにいかない?」


レティシアの手には、この前ライムンドが倒した魔物を換金したお金が入った袋が握られている。


「まぁ!ライ兄様ったら相変わらずレティちゃんに甘いですわね」


突如レティシアが部屋に来るのに慣れているシャルロットも使用人も一切動ずる事なくレティシアを部屋へ迎え入れた。


「そうかな?シャロちゃんとお揃いの服の為にくれたからシャロちゃんと一緒で妹扱いだと思うよ?」


「ははっ…(にぶにぶなレティちゃんは一生ライ兄様の気持ちには気が付かなさそうですわね)


それで、お洋服はいつのもお店に買いにいきますの?」


いつのもお店とは、王家御用達のドレス工房の事をシャルロットは指していた。


「んー…それも良いけど、この前お姉ちゃんが団長さんにドレスを買って貰ったお店も良いなって思ってるんだ。

私、ルナ・ルースさんにご厚意でワンピース頂いちゃってるから、ちゃんとお客さんとして買いにいかないといけないかなって」


「まぁ、確かにそうですわね。

ルナ・ルースと言えばここ数年でうなぎ上りのドレス工房でしたわよね、社交界で有名ですわ」


「うん、お姉ちゃんのドレスとっても綺麗だったし、貰ったワンピースも素敵だったんだ」


「それでしたら、今回はそのお店に行きましょうか。

私も気になっていたんですの」


「うん!作るのは部屋着が良いかな?それとも普段着?」


「ドレスはどうですか?レティちゃんももうすぐで成人しますし、恋人が爵位持ってましたら、パートナーとして建国祭に出れますわよ」


「ドレスはライ兄様から沢山貰ってるから別にいらないかな、着る機会も王城に来る時以外あんまりないし」


部屋のクローゼットに沢山入っているライムンドから貰ったドレスの山を思い出してレティシアは首を横に振った。


「レティちゃんったら…(他の殿方から貰ったドレスを着たら恋人が妬いてしまうのでは?確かライ兄様があげたドレスには必ず金色か紫が入っていた筈ですもの。

まぁ、存分に妬かれれば良いですわ、この鈍感ちゃんは殿方の嫉妬を身を持って知らないと一生分からないですからね)」


二人は用意された馬車に乗り込み、貴族街にあるルナ・ルースの店まで向かった。


「たまには店に赴くのも楽しいですわね」


「私もシャロちゃんと買い物来るの久しぶりで楽しいよ」



工房に入ると、相変わらずばっちりと化粧とヘアメイクを決めたルナ・ルースが頭を下げて待ち構えていた。


「シャルロット王女殿下、本日はお越しくださりありがとうございます」


「急な訪問ですみません」


「とんでもございません、本日はどういった物をお考えですか?」


「友人とお揃いの服を作って頂きたいのです」


「ご友人ですか?…ってレティシアちゃんじゃないのぉ!」


頭を上げたルナ・ルースがシャルロットの横にいるレティシアの姿を目にし、驚愕した。


「ルナ・ルースさんお久しぶりです!」


「あら〜、レティシアちゃんったら王女殿下のご友人だったのねぇ。

びっくりしてヒールで床をぶち抜くところだったわぁ」


「それは、凄い強度のヒールだね」


ルナ・ルースの足元を見たレティシアは、相変わらず立っていれるのが不思議なくらい高いピンヒールを履きこなしているルナ・ルースを尊敬した。

きっと自分が履いたら立つことすら出来ないだろうと。


「こほんっ、王女殿下失礼致しました。驚きの余り無作法を…」


「ふふっ、お気になさらないで気軽になさって下さい。

レティちゃんが頂いたワンピースがとても素敵だとお聞きしたので是非友人とお揃いの品を作って頂きたいのです」


「まぁ、ありがとうございます!美しいお二人に着てもらえるとは、洋服も喜びますわぁ。では、お部屋にご案内致します」


案内された応接室で使用人達を下がらせた3人はどんな洋服を作ろうか、話し合いが始まった。


「部屋着も良いかなって思ったけど、これからもっと寒くなるしショールも良いかな?それだったらシャロちゃんも気軽にドレスの上から着れるよね」


「そうですわね!そういえばレティちゃん、ヴァレンティナ様とソフィー姉様とお揃いで大白兎の毛皮でコートを作るってこの間言ってましたわよね?」


「うん、大白兎の毛皮はもうないけど……あ、そう言えば、ブリザードベアの毛皮なら前に狩ったのがあるよ」


真冬の少しの時期にしか姿を表さない幻と言われている真っ白な綺麗な毛をした熊であるブリザードベアを前の冬に北の森と魔物森の境界線当たりで偶然出会い狩ったのだ。


1体売ったら屋敷1つ買えるほどの値段になるブリザードベアを計4体も狩ったのだが、次はいつお目にかかれるか分からないほどに貴重なブリーザドベアを売るのは少し勿体無いとレティシアは思った。


だが、コートを作るにも冬下旬だったため、次の冬で良いかと思いインベントリの奥にしまいこまれていたのだった。


「まぁ!でしたらその毛皮でショールを作ってもらいましょう」


「うん、そうだね!」


「ちょ、ちょっと待って下さい。レティシアちゃん、今ブリザードベアって仰っしゃったわよねぇ?」


「はい、毛皮まるっと4体分あるんでショール作れると思うんですけど」


「えぇ、1体で二人分を十分作れるわぁ!そうじゃなくて、このブリザードベアはいったいどこで手に入れたのぉ?市場に出回ったなんて情報無かったのに」


「私が北の森で狩って来たんだよ」


「え?レティシアちゃんが?き、北の森で!?」


えっへんと胸を張るレティシアにルナ・ルースは驚き目を見開いた。

北の森はそんじょそこらの冒険者が足を踏み入れれば生きて帰ってこれない程に危険な場所だからだ。


「ふふっ、レティちゃんはAランク冒険者ですもの、北の森で狩りするなどお手の物ですわよね」


「Aランク冒険者…噂でレティシアちゃん達が英雄様のご息女と耳にしていたけど、本人もAランクだなんて実際に聞くと驚いたわぁ」


「レティちゃんは可愛いですものね、ぱっと見強そうには見えないから、仕方がないですわ」


「それって褒められてる?」


「勿論、褒めてますわ」


プクーっと膨らますレティシアの頬をシャルロットが指でツンっと押す姿は仲のいい姉妹にしか見えない。


そんなじゃれ合ってる二人の目の前ではルナ・ルースがレティシアから渡されたブリーザドベアの毛皮を見てプルプルと震えていた。


「レティシアちゃん、お願いがあるのぉ!」




「お願いですか?」


「ブリザードベアの毛皮を売って欲しいのよぉ、勿論いい値で良いわ!」


「良いですよ」


「えぇ!良いのぉ!?本当に良いのねぇ!?」


「うん、ショール作ってもらえるなら残りは売っても構わないですし…あ!出来ればお姉ちゃんとセラ姉様にも作って欲しいから2体なら売れるかな」


「あら、お姉様方にもプレゼントされますの?」


「うん…何故だろう、シャロちゃんと二人だけでこのショールを着てたらなんか嫌な予感がする」


「あぁ、確かに…」


姉達を差し置いて妹二人だけで王妃も持っていないような高級なショールを身に着けていたら、いったいどうなるか想像に固くない。


「だから、お姉ちゃんとセラ姉様のショールは私達のショールより大人っぽいデザインでお願いします、社交場でも着れそうなやつで」


「勿論よぉ!腕によりをかけて張り切って作らせてもらうわねぇ!

ブリザードベアを売ってくれる代わりにショール代は頂かないわぁ!」


「え、でも」


「良いのよぉ!幻と言われているブリザードベアよ、普通なら手に入らないのよぉ!」


テンション爆上がりのルナ・ルースはレティシアから渡されたブリザードベアの毛皮を見てうっとりとしている。

そして、まさか制作の代金をタダにされると思っていなかったレティシアは面を食らっていた。


「そ、そっか…ライ兄様に貰ったお小遣い、使えてない」


ずっしりと袋の中に入っている金貨を思い出してレティシアは遠い目をし、お金を使うどころかブリザードベアの代金が足されて増えたのであった。


「あら、でしたらライ兄様に何かプレゼントされたらどうです?」


「そっか!ライ兄様に何をあげたら喜んでくれるかな?」


「レティちゃんに貰えるたらそこらへんに落ちてる木のみでもきっと喜びますわ」


「いや、それはどうだろ」


「いえ、絶対に喜んで金庫の中にしまうと思いますけど、木のみではお金が使えませんものね。

でしたらライ兄様がこの前、使っていた腕輪型の魔導具が壊れてしまったので買い直さないとと言っておりましたわよ」


「そっか!じゃあシャロちゃん、この後に魔導具屋さんに行ってもいい?」


「勿論ですわ」


ライムンドはきっと、レティシアにプレゼントされた物なら木のみでも本当に喜ぶであろうが、きっと何時でも身に着けていられる装飾品ならば泣いて喜ぶであろう。


その後シャロの助言により選ばれたのは金にピンクの魔石が嵌められた腕輪だった。レティシアはライムンドには少し可愛すぎるのでは無いかと思ったがシャルロットが勧めで決めたのであった。

その魔導具をレティシアに渡されたライムンドの反応は想像以上の喜びであったそうだ。


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