第82話
大変お待たせしました(・_・;)
「ロベルト君、レティちゃん、改めて今回の事本当に申し訳ありませんでした」
十分に反省し正座から開放されたアルセニオは6人揃って席に着き、改めてロベルトとレティシアに謝罪したのだった。
「先程も言ったが全て私の寂しさと嫉妬からきた発言なんだ、そのせいで二人を傷つけてしまった。君達が店から出た後ルイス君からロベルト君の事を熱く語られてね、いかにレティちゃんが惚れた男は素晴らしい人なのか知らされたよ」
ロベルトはまさかルイスが自分の事を擁護してくれているとは思わず、おもわずロベルトがルイスの方を見ると目が合い、ルイスは照れくさそうに笑った。
「…お父さん、もういいよ…」
反省し謝罪を繰り返すアルセニオを見て、先程まで怒っていたレティシアだったがレティシアは父が自分のことを想ってくれている故の発言だったことを知って許す気持ちになったのだった。
ロベルトは席から立ち上がりアルセニオとヴァレンティナに向かい頭を下げた。
「アルセニオ様ヴァレンティナ様、自分はまだまだ若輩者で認めて頂くには時間がかかるかもしれません。ですが、今よりももっと精進し強くなってレティシアさんを幸せにしてみせます。
ですのでレティシアさんと結婚を前提に交際を認めて下さい、お願いします」
「頭を上げて下さい。もちろんよロベルトさん、二人で幸せになってね」
ヴァレンティナは席から立ち上がり、頭を上げたロベルトの手を取り「娘をよろしくね」と取った手をぎゅっと握りしめた。
「も、もちろん私も二人の事を認めるさ。二人で仲良くな」
アルセニオも立ち上がり、ヴァレンティナに代わりロベルトの手を取り握りしめた。(その時握った手が少し力が強かったのはアルセニオの僅かな抵抗だろうとロベルトは感じた)
「ありがとうございます」
「ありがとう!お父さん、お母さん」
レティシアはアルセニオとヴァレンティナに駆け寄り、歓喜のあまり二人に飛びついた。
ヴァレンティナが嬉しそうにレティシアを抱きしめる。
「あらあら、お嫁さんに行くって娘が甘えん坊で子供みたいで困っちゃうわね」
「むぅ~まだ成人するまで半年あるもん、それまで甘えるのっ」
「ふふっ、困った娘ね」
そう言いながらもヴァレンティナは愛おしそうにレティシアの頭を撫でた。
レティシアは母の温もりを堪能した後、アルセニオに向かい抱きついた。
「お父さん、ありがとう」
アルセニオはレティシアをぎゅっと抱きしめ返して「ロベルト君と幸せにな」と背中をぽんぽんと叩いた。
「うん」
なんとかロベルトとレティシアの仲も認めてもらい、結局ロベルトとレティシアの結婚のことはソフィアとルイスの結婚後に追々決めて行こうということになった。
ようやく落ち着いたのでソフィアとルイスの結婚式の予定などを詰めていこうとしたが、店内に七時を報せる鐘の音が鳴りヴァレンティナが慌てて立ち上がった。
「あらやだ、もうこんな時間!夕飯の準備何もしてないわ!
ソフィアちゃん、レティちゃんごめんね、悪いんだけどルイスさんとロベルトさんと四人で外食してきてくれるかしら、実は私とアルセニオは夕飯食べたら王城へ行くことになってたの。でも今から作ってたら間に合わないから私達は向こうで食べるわ」
「また王城へ行くの?頻繁に行ってるけど何かあったの?」
ソフィアが心配そうな顔で母に詰め寄る。
お城に両親が呼ばれるのは良くあることだが、ここ最近はやけに多い気がしてならない。
「大丈夫よ、大した事ないわ。ちょっと相談されてるだけよ」
「そう…」
心配そうな顔をするソフィアをヴァレンティナはギュッと抱きしめて頭を撫でる。
「帰ってきたらソフィアちゃんの結婚式の事をもっと詳しく決めましょうね。とりあえず私達は王城へ行ってくるわ。
ああ、そうそう知人からレストランを開店したから来てほしいって言われたんだったわ」
そう言ってヴァレンティナはソフィアに4枚の招待券を渡した。
「私達は後日行くから今日は四人で行ってきてね」
「えっ、うん。分かった」
まくしたてる様にヴァレンティナが話すので四人が呆気にとられていると「ごめんなさいね、行ってくるわ」と慌ててヴァレンティナとアルセニオは足早に店から出掛けて行ってしまった。
ヴァレンティナに渡されたチケットの店に行くにあたってルイスとロベルトは礼服を汚してはいけないからと一旦着替えに騎士団に戻り、馬車を用意しレストランに行くことになった。
「お姉ちゃん〜何の料理のレストランなの?」
「チケットに店名以外は書いてないから分からないわ、何のお店かしらね?あっ着いた、ここみたいよ」
貴族街にかまえる店の外観は高級感のある佇まいで黒いレンガを基調とした建物だ。
そして掲げる看板には帝国から直輸入の店と書いてあった。
「何が食べられるか楽しみね」
「うん」
ルイスがソフィアをエスコートし、ロベルトはレティシアと手を繋ぎ店内に入って行く。
店内は落ち着いた雰囲気で中も黒を基調とし、天井の帝国産のガラスで出来たシャンデリアや間接照明はとてもシックで上品さを醸し出していた。
受付には身なりを整えた店員が微笑み、四人に丁寧にお辞儀をする。
「いらっしゃいませ、四名様ですか?」
「はい、あのこれを貰ったのですが…」
ソフィアはハンドバックから母から貰ったチケットを店員に渡すと、店員はチケットを確認した。
「英雄様のお知り合いでしたか、御来店ありがとうございます。こちらへどうぞ」
店員が案内してくれたのは個室になっており、とても過ごしやすそうだ。
四人が席に着くと店員が店やメニューの説明を始めた。
「本日は当店に御来店頂きありがとうございます。当店は帝国の牧場から直輸入した黒牛さんを提供させて頂くステーキ専門店です。
黒牛さんとは帝国が黒豚さんと同じく力を入れて品種改良し、やっと他国へも出せる程に量産できるようになりました。
今はまだプレオープン中なので御招待させて頂いた方しか御利用できないのですが、12月にはオープンいたします。
黒牛さんは肉と脂身のバランスが良く、とても柔らかく甘い香りが特徴的です。
部位はお好きな場所をお選び頂けます、その中でも当店のオススメは脂身と肉のバランス良いサーロインと柔らかく脂身の少ない赤身のヒレでございます。焼き方は5段階ありますのでメニューを御覧下さい」
渡されたメニューを見るが、店のオススメが気になったルイスとロベルトはサーロインステーキをミディアムレアで400グラム、ソフィアはヒレステーキをミディアムで150グラム頼んだ。
「レティ、決まった?」
3人がすんなり決めてしまう中、レティシアはサーロインかヒレかで迷っていた。
「うーん悩んじゃう…」
「ふふっ、レティはお肉大好きだものね。じゃあ私のヒレを少しあげるからレティはサーロインにしたら?」
「えっ良いの?じゃあサーロインをミディアムで200グラムでお願いします!」
「すみません、私のヒレを150グラムから250グラムに変更して下さい」
「かしこまりました」
見た目によらず沢山食べるレティシアの事を考えたソフィアも肉のグラムを変更した。
注文してしばらくすると、店員がルイスとロベルトの頼んだ赤ワインと、ソフィアとレティシアの頼んだ果実水を持ってきた。
ソフィアもお酒を嗜むが妹のレティシアはまだ成人前で飲めないので一緒の飲み物を選んだ。
四人はグラスを持ち「「「「乾杯」」」」と言ってグラスを傾けた。
「お姉ちゃん、団長さん、あらためて婚約おめでとう!」
「ありがとう」
「ありがとう、レティも無事にお父さんとお母さんから許してもらえたからもう実質婚約よね。おめでとうレティ、おめでとうございますロベルトさん」
「ありがとうございます。ソフィアさんこれからもよろしくお願いします」
「ロベルト、俺は?」
「…ルイス団長これからもよろしくお願いします」
ロベルトの返事にルイスは少し引っかかったがスルーすることにした。いつかロベルトにお義兄さんと呼ばせようと密かに思うのだった。
「お姉ちゃん、ありがとう!これからは団長さんって呼ばないでルイスお義兄さんって呼ばなきゃね、私のことはレティシアって呼んで欲しいな」
「レ…レティシアありがとう、これからもよろしく頼む」
「はーい」
レティシアにお義兄さんと呼ばれて心の中でジーンっと感動したルイスであった。
四人が談笑しているとドアがノックされ、返事をするとドアが開いてワゴンを押して店員が入ってきた。ワゴンの上にはジュウジュウと鉄板の上で焼ける肉が乗せてあり、焼けた肉のいい匂いが部屋中に充満する。
「お待たせしました」
店員が手際よく各自にステーキとサラダとパンを配膳していった。
「ごゆっくりお召し上がり下さい」
店員が退出すると、四人は早速ナイフとフォークを手にし肉を切り口へ運んだ。
「美味しいー!凄いねこのお肉、今まで食べたお肉の中で1番柔らかくて美味しい。口の中で溶けちゃう、脂身あま~い」
「本当ね、赤身なのに柔らかくて美味しいわ。ほらレティ、ヒレも食べてみたら?」
「ありがとうお姉ちゃん」
レティシアがソフィアから貰ったヒレステーキを一口口にすると、「これはこれで美味しい!うーん幸せ〜」と幸せいっぱいの笑顔でステーキを噛みしめている。
ふとソフィアが隣に座っているルイスと斜め向かいに座っているロベルトを見ると、普段は何かしら食べては感想を言う二人が黙ってステーキを食べている。
「ルイス、ロベルトさん、黙ってしまってどうしたの?ステーキ口に合わなかった?」
「はっ!ソフィア、なっなんでもない…あまりの美味しさに衝撃を受けていただけだ。黒豚さんを食べた時も驚いたが、この黒牛さんの味は何十倍もの衝撃だ!帝国とは凄いな、こんなにも美味しい黒牛さんや黒豚さんを育てあげるとは」
「本当です。この柔らかさ、肉がジューシーで脂身も甘くて、嗅いだことのないこの甘く焼けた肉の香りが素晴らしいです。この肉を知ってしまっては他の肉が物足りなくなってしまいます」
「あらあら凄い褒めようね」
「ああ、チケットを下さったヴァレンティナ様に感謝しかない」
後日、ルイスとロベルトはお礼にヴァレンティナの好きな花を贈ろうと心に誓うのだった。




