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第78話



ルイスはソフィアと別れ自分の屋敷へ戻った後、お土産を持って第三騎士団へと向った。

大きな木の樽を両肩に乗せて第三騎士団の正門を潜ると次から次へと団員達から声をかけられる。


「団長おかえりなさい」


「おかえりなさい」


「ああ、留守中ありがとう。土産を食堂に置いておくから仕事が終わった者から飲んでくれ」


「やった!いつものアレですよね?」


「ああ、エールだ。飲み過ぎるなよ」


「はーい。ありがとうございまーす」


「団長、自分達仕事が終わったので食堂に届けます」


「そうか?ならば頼む」


団員達はルイスから樽を受け取ると嬉しそうに食堂へ運んで行った。


「さて、執務室へ寄ってからソフィアの元へ行こうとするか…」


執務室の扉を開けると室内には書類を整理しているロベルトの姿があった。


「ロベルト」


「あっ、団長おかえりなさい」


「ただいま。留守中ありがとう、おかげで今年も無事に帰省してこられた」


「お疲れ様でした。ソフィアさんとの旅行はいかがでしたか?」


「ああ、楽しく過ごせた」


「それは良かったです」


十日もの間、第三騎士団を任せていたロベルトを労るようにソファに座らせ、ルイスも対面に座った。


「土産だ。今年のエールは中々に上物が出来ていた」


「毎年ありがとうございます」


ロベルトはルイスから貰った小樽を受け取った。


「そうだ、ロベルトよ、お前俺に何か言うことがあるんじゃないか?」


「いえ、特に報告はありませんが…」


「胸に手を当ててよーく考えろ」


ロベルトは胸に手を当て考えるが何も浮かばない、何か団長に伝え忘れた事が無かったかと頭をフル回転させるが、やはり何も思い出せない。


「団長、何もありません」


何か報告することが抜け落ちているかと思いロベルトは書類に手を付けようとしたが、ルイスがそれを止めた。


「違う!仕事の事ではなく、ソフィアの妹君の事だ!ソフィアから聞いたぞ」


ロベルトはルイスに言うのをすっかり忘れており、今言われて思い出した。


「あっ…あれ言ってませんでした?すみません、完全に仕事の事しか考えていませんでした」


「公私混合しないのは素晴らしいが、流石に教えて欲しかったぞ

なんでも、交際ゼロ日で結婚を前提に交際を申し込んだそうだな」


「はぁ、それがどうかしました?」


ルイスは机をコツコツ叩きながらロベルトに問い詰める。


「ロベルト、お前、俺がソフィアに告白した時におかしいと言わなかったか?言ったよな?」


「ええ、言いました。あの時は世間一般の話をしたんですが、まさか自分が恋に落ちて告白した時に結婚を申し込むなんてあの時は思いませんでした」


「まったく…俺にはあれだけボロくそに言ってたくせに」


「まあ、恋は人を変えるのです。(とてつもない強敵が近くにいたから、なりふり構っていられなかったのが事実だけど)」


「本当だな、普段冷静沈着なロベルトがこうも変わるとは思わなかった」


「お褒めにあずかり光栄です」


「褒めてないぞ…」


言いたいことを言って少しすっきりしたルイスは、ロベルトにソフィアと結婚する旨を伝えた。


「というわけで俺はお前のお義兄さんになるわけだ。お義兄さんと呼んてくれてもいいんだぞ」


「いえ、まだ暫くは遠慮させていただきます」


苦虫を潰したような顔でロベルトはルイスの申し出を断った。


「そうか残念だな」


にやっと笑って立ち上がりルイスはロベルトの肩をバンバンと叩いた。


「痛いですよ団長」


「はははっ、さて俺はこれからソフィアの所へ行くのだがロベルトはどうする?」


「私もレティと約束しているので行きます」


「就業時間も過ぎているし、では一緒に行くか?」


「…はい」


なんとなく一緒に行きたくない気がするが二人バラバラで行くと先方に迷惑がかかる。

ロベルトはレティシアとの約束の為、しかたなくルイスと共に【まんぷく亭】に向かう事にした。


執務室を出て廊下を歩きながらロベルトは人がいないのを確認しルイスに小声で声をかける。


「団長」


ルイスを呼ぶ声は先程とは違い、真剣な顔つきのロベルトにルイスは何か起きたのか察する。


「緊急の知らせでもないのですが、北の国が動きが活発になっているとの報告がありました…もしかしたら1ヶ月以内に仕掛けてくるかもしれないとの事です」


「そうか、そろそろだとは思ったがやはりな。さらに警戒しなければならないな」


普通の仕事だけでも忙しいというのに、北の国のせいで余計に忙しい年末になりそうだと、二人は重いため息をついた。


「そうですね、まったく…毎度負けるくせにちょくちょく戦を仕掛けてくるからたちが悪い」


数年前の戦争ではルイスもロベルトも武勲を立てられるいい機会だと張り切っていたが、管理職になってからは仕事が増えるだけで良いことはないと愚痴る。


「本当に困った奴らだ」


「北の国は不毛の地ですので、我が国が羨ましいのは分かりますが。戦争よりも他の事に労力を使えば少しでも発展するでしょうに」


「自分で1から作るよりも、出来た物を奪うほうが良いと思っているのだろう」


二人はぼやきながら【まんぷく亭】へと向ったのだった。



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