第75話
晩餐前、ソフィアはルイスの部屋でお茶を飲みながら街での出来事を話した。
「今日はルイスさんと街へ行けなかったのは残念でしたけど、
私、母やレティ以外の女性と買い物に行ったことが無かったから楽しかったです」
「楽しめて良かった。来年は俺ももっとソフィアと街や行楽地へ行けたらと思う」
「はい、来年はもっとルイスさんと見て回りたいです。それにまた来年も皆さんと街へ行こうって約束したんです、今からたのしみです」
「彼女らもきっと楽しみにしてるだろう。来年が待ち遠しいな」
「はい」
部屋の窓から夕陽が差し込み、部屋の中がオレンジ色に染まりだした。
「ソフィア、そろそろバルコニーへ行かないか?」
「はい」
ルイスはソフィアの手を取りバルコニーへと歩み出る。
「ここからの夕陽は何度見ても素晴らしいですね」
「ああ、本当に綺麗だ。ソフィアと出会うまではこの夕陽が一番綺麗だと思っていだが、今はソフィアが世界で一番綺麗だと言っても過言ではないな」
「もう、過言ですよ」
「いや、本当に…」
突然、ルイスは逞しい腕でぎゅっとソフィアを抱きしめる。
「ソフィア…。俺と…」
「ルイスさん?」
ルイスは何か話そうとするも次の言葉が出てこない。どうしたのか分からないソフィアはルイスに話しかけようと口を開きかけたその時、ルイスの口が開いた。
「ソフィア…俺と結婚してくれないか。
昨日、ソフィアがクラウディオに言った言葉を聞いて俺はとても嬉しかった。こんな俺の事をソフィアが肯定し好きだと言ってくれて、こんなにも俺のことを好いてくれるのはソフィアしかいないと実感した。
これからもずっとソフィアと笑いあっていたい、俺の隣を歩いて欲しい。
四月に告白してまだ1年も経っていないが、もう我慢できない俺は愚かだと思う。
だが、またクラウディオみたいなソフィアに言い寄る男が表れるかもと思うと気が気じゃないんだ…」
「ルイスさん…」
ルイスがソフィアの前で片膝をつき跪く、ソフィアの手のひらにそっと口付けを落とした。
その姿は恋い焦がれる騎士が愛おしい女に縋りついているように見えた。
ソフィアは自分を見上げるルイスの深紅の瞳が夕焼けでより赤く燃えている様に見える。
それはまるで自分への燃える恋心を表しているみたいで、目が離せなかった。
「私、ルイス・グラシアはソフィアを一生愛すると誓う。武骨で愛想もない私だがソフィアと共に幸せな家庭を作りたい。どうか私と結婚して欲しい」
ソフィアに向ける真っ直ぐで真剣な眼差しは、まるで主に忠誠を誓う騎士のよう。熱い眼差しにソフィアの胸は締め付けられた。
「……はい。
私もルイスさんを愛してます、ずっとずっと側にいたいです」
ルイスは立ち上がるとポケットから小さな箱を取り出し中の指輪を取り出した。
「ありがとうソフィア。ソフィアと結婚出来るなんて嬉しい、これを受け取って欲しい」
ルイスはソフィアの左の薬指に指輪をはめると指輪に口づけをする。
ソフィアは頬を染めながらルイスのはめてくれた指輪を見てみるとそれは昨日宝飾店で買うのを断った物だった。
「ルイスさん、この指輪って…」
「昨日、宝飾店でソフィアに似合っていたから、ソフィアが他を見ている時に買ったんだ。いつかプロポーズする時に渡そうと思って」
「!」
「仕事中はつけられないだろうが、二人きりの時につけてくれたら嬉しい」
ソフィアは指輪をはめた左手を右手で覆い胸の中で抱きしめる。
「ありがとうございますルイスさん、とても嬉しいです」
「喜んでもらえて良かった」
「ルイスさん…」
「ソフィア…」
ルイスとソフィアは見つめ合い、ルイスはソフィアの腰をぐっと抱き寄せる。
耳元でルイスに小さな声で「口付けても良いだろうか?」と問われたソフィアは返事の代わりに黙って目を瞑った。
ルイスの指がソフィアの顎をそっと持ち上げ、ルイスの唇はソフィアの柔らかな唇に重なった。
「ソフィア、好きだ…愛してる」
「私も…んっ…」
ルイスは愛を囁きながら何度もソフィアに啄むように口付ける。ソフィアも幸せを噛みしめるようにルイスの口付けを受け入れた。
二人はお互いの温もりが心地よくて抱き合っていたが、気が付くといつの間にか夕陽は沈み、辺りは静かに虫の声だけが鳴り響いていたのだった。




