第74話
グラシア領の屋敷に滞在する最終日となった朝、サロンでソフィアに平謝りするルイスの姿があった。
「ソフィアすまない、昨日といい今日といい土産を買いに行く約束が守れなかった」
「いいえ、大丈夫です。ルイスのお仕事の方が大事ですもの」
昨日はクラウディオが突然屋敷にやって来て一悶着起きてしまったせいで仕事が中断してしまい夕方まで仕事がかかってしまった。
なので次の日こそソフィアと街へ行こうと約束したが、今日の朝、叔父から大事な客が来ることになったと知らされ、領主としてルイスは会わなければならずソフィアと街へ出かけることが出来なくなってしまったのだ。
「私一人で行ってきますから」
「それは駄目だ。いくら治安が良くても万が一のことがあってはならない。ソフィア一人では行かせることは出来ない」
「では侍女さんをお借りしても宜しいですか?」
「ソフィアがそう言うのであれば…いや、あと1人護衛をつけるならば良いか…」
「ありがとうございます。朝食を食べたら準備して行ってきますね」
「ああ、それまでに侍女と護衛を選んでおこう」
「はい、お願いします」
「はぁ…」
ルイスはソフィアと街へ行けなかったことに肩をがっくり落とししょんぼりしていたが、そんなルイスを他所にソフィアは妹レティシアや母以外の同性と初めて買い物へ行くことに心が浮かれていた。
朝食後、ソフィアが準備を終えてエントランスに行くと、ルイスと護衛らしき女性と侍女のアマリアが待っていた。
「お待たせしました」
「いや、俺達も今来たところだ。ソフィア紹介しよう、今日ソフィアを護衛するパウラと侍女のアマリアだ」
「パウラさん、アマリアさんが一緒に行ってくれるのですね、今日はよろしくお願いします」
「ソフィア様の買い物へ付いていけるなんて嬉しいです。侍女達と誰が付いてくか揉めたんですけど、私がじゃんけんで勝ったんです!」
「まぁ、私に付いていくだけなのに揉めただなんて、何だかこそばゆいです」
「侍女達にソフィア様は大人気なんです」
「ふふっ、光栄です」
「パウラと申します。今日はソフィア様の護衛を務めさせて頂きます」
「頼もしいですね、よろしくお願いします。ではルイスさん行ってきます。お土産楽しみにしていて下さいね」
「ああ、楽しみにしてる。気をつけて行ってくれ、くれぐれも一人にならないようにな」
ルイスに見送られ、ソフィアは侍女と護衛と屋敷を出発したのだった。
三人は馬車の中で仲良くなり、街の中心街へ着いてからはガールズトークを楽しみながらあちこちのお店を見て回っている。
「ソフィア様これなんかいかがですか?」
「あら素敵ですね、レティとシャロちゃんに似合いそうです」
「ソフィア様これ可愛いです」
「どれも可愛くて悩んでしまいます」
キャイキャイとはしゃぎながら店内を見て回っているとソフィアの目に可愛らしいボタニカル柄のマグカップが目に止まった。ソフィアは一目で気に入り店員を呼び止めた。
「すみません、このペアのマグカップを色違いで3セット下さい」
「はーい、ありがとうございます」
ソフィアはその後も沢山のお土産を購入し、店を出たあと休憩しようとパウラとアマリアを誘い喫茶店へと向かった。
一方屋敷に残ったルイスは客が帰った応接室で叔父とお茶を飲んでいた。
「はぁ…」
「どうした、ルイス?ため息なんかして」
「昨日、クラウディオが来て、ソフィアがクラウディオに怒りながら自分の事をどれだけ好きか力説してくれたんです。自分としても一生涯ソフィアだけと考えているんですが…」
「ならば早くプロポーズしたらどうなんだ?」
「ソフィアに付き合ってもらえる前、一度失敗しているんです…。
ソフィアと出会い告白するまで自分は伯爵家当主だとソフィアに伝えるのを忘れており、尚且つ付き合うのをすっ飛ばし婚約&プロポーズ紛いの事をしてしまい、一度断られているのです…。
ロベルトの助言…嫌あれは説教だな。とにかくロベルトが背中を蹴飛ばしてくれたから今ソフィアと付き合ってもらえているんです。
なのに、あれからまだ1年経っていないのに一日も早く婚約したい自分がいるんです」
「そうだったのか…確かにソフィア様は貴族が嫌で城から出たという噂もあったからな…。
もっとルイスに惚れてもらわねばプロポーズに首を縦に振ってくれないかもな」
叔父の後ろに立っていた執事と侍女が突然話に割って入ってきた。
「ルイス様!そんなヘタレな事でどうするのです、もっとぐいぐいいかなければ他の男に取られてしまいますぞ。あんなに素晴らしいソフィア様を取られる前に早くプロポーズしなければ!!」
「そうですよルイス様、ぐだぐだ考えても無駄です!もう両思いなんだから大丈夫ですよ!!それよりソフィア様の目が覚める前に伯爵夫人になって頂きましょう」
「お、おう」
二人に背中を押されルイスは決心するのだった。
もし、ソフィアと別れることがあったら使用人全員に無視されるかもしれない程に、ソフィアは使用人全員に好かれていた。
昼過ぎソフィア達を乗せた馬車が街から帰って来た。
エントランスに入るとルイスがソフィアの帰りを待っていた。
「おかえりソフィア、お土産良いものあったか?」
ルイスが待っていてくれてた事が嬉しくてソフィアは小走りで駆け寄る。
「ルイスさん、ただいま帰りました。素敵なお土産沢山買ってきました」
「それは良かった」
「パウラさんとアマリアさんのおかげで楽しくお買い物ができました。あっ、そうだ」
ソフィアはパウラとアマリアの下へ行くと大きな紙袋を手渡した。
「パウラさん、アマリアさん、今日は一緒に行って下さりありがとうございました。さっき寄った喫茶店で食べたクッキーが美味しかったので屋敷の皆さんにもと思って、良かったら皆さんで召し上がって下さい」
「「ありがとうございます!」」
ソフィアの気遣いと優しさに屋敷の者達はファンになり「絶対ルイス様と結婚してもらわねば!そしてソフィア様の担当は私だ」と各各々が心に決めたのだった。
「ソフィア、晩餐前にお茶をしないか?今日であの夕陽も暫く見れないから二人で見たいんだ」
「はい、では後でルイスさんの部屋にうかがいますね」
「あぁ、街へ行って疲れただろう、ゆっくり休んで。夕方待ってる」
「はい」




