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第68話

ソフィアが木の下にうずくまる生き物をそっと手の平に乗せて観察してみると、その生き物は体長20センチ位でキラキラと輝く羽に金色の髪をしていた。


「これは…もしかしたら精霊かしら?物語の挿絵でしか知らないけど、こんな姿をしていたわ」


「精霊?昔の文献にしか登場しないあの精霊か?まさか…本当に存在するとは。怪我をしているみたいだな」


「ええ、額を怪我してるからそのせいで気絶しているんだと思います。今、治癒魔法をかけてみますね」


ソフィアは手に集中しながら、「前にもこんな事があったわね」とデジャヴを感じていた。


「キューちゃんの時もこんな感じだったわね」


ソフィアはうずくまっている生き物を手で包み込み、治りますようにと心を込めて治癒魔法をかける。


「ヒール」


ソフィアは治癒魔法をかけたあと手を開くと生き物はぴくっと動き静かに目を開けた。そしてその紫色の大きな目はソフィアを凝視したあと急に起き上がりきょろきょろと辺りを見渡し口を開いた。


「あっ…あれ?あの、ここは?貴女は誰?」


「気がついたみたいで良かった。私はソフィア、隣にいるのはルイスさん。あなたこの木の下で倒れてたのよ」


「そうなんだ!助けてくれてありがとう」


「大丈夫?痛いとこは無いかしら?」


「もう大丈夫!ほらっ!!」


そう言ってキラキラと輝く羽根を羽ばたかせてソフィアの周りをクルクル回って見せる。


「元気になって良かったわ。ねえ、あなたはもしかして精霊さん?」


「そうだよ!普段は精霊の国に居るんだけど、ここの湖や森が好きだからよく来るの。風が気持ちよくて飛んでたら急に大きな鳥の魔物に追いかけられて、夢中で逃げてたら木にぶつかっちゃて…気がついたら貴女の手の中だったの」


「そう、怖かったわね」


「こんなこと初めてだよ〜、こんなことがバレたら精霊女王に心配されてここへ来ることを禁止されちゃう」


「精霊女王ってこの国の初代王と結ばれた方か?確か文献でそう書かれていたような」


ソフィアと精霊のやり取りを見守っていたルイスだが、精霊女王の名前を聞いて思わず精霊に聞いてしまった。


「そうそう、今でもラブラブなんだよ~」


「えっ?今でもって…」


「王様は王子に王位を譲ったあとお二人で精霊の国に来られたんだ。お二人ったら何百年経っても新婚さんみたいで、側にいる精霊達は砂糖吐きそうだよ…あっ!これは言っちゃいけないんだった、ごめん内緒にしてね」


お喋り好きな精霊は喋り過ぎたのに気が付いて慌てて口を押さえた。


「え、ええ…」


「ああ…」


聞いてはいけない事を聞いてしまった気がするが、精霊女王と初代王の事を誰かに話しても誰も信じてはくれないだろうと二人は思った。


「そろそろ精霊の国に帰らなきゃ。本当に助けてくれてありがとう、お礼と言ってはなんだけど〈精霊の祝福〉を授けるね〜効果は内緒、いつか分かるまでのお楽しみ〜」


精霊はソフィアとルイスの頭上に金色のキラキラを振り撒き、頬にキスをして去って行った。


「はぁ…行ってしまった」


「ふふ、精霊さん可愛い方でしたね」


「ああ、シャルロッテ王女にどこか似ていたな。文献は本当で、初代王は精霊女王を妃にしていたんだ」


「物語だけの話だとばかりに思ってました」


「精霊は本当にいたんだな、とはいえ精霊に会ったなんて誰に言っても信じてはくれないだろう」


「ええ、そうですね。二人の秘密にしておきませんか?」


「そうだな、そうしよう」


「そういえば去り際に〈精霊の祝福〉を授けたって言ってましたけど、いつ分かるか楽しみですね」


「〈精霊の祝福〉とは先ず何なのか、気になるから王都に帰ったら王立図書館に行って調べてみよう」


「私も一緒に行っていいですか?」


「もちろんだ、帰ったら行こう」


「はい」




不思議な出会いをした二人は馬車に乗り込み、クラロの街の屋敷へと向かった。


街の入口である門をくぐった馬車は石畳の道を進み街の中へと進んで行く。街は白と青を基調とした建物が建ち並んでいて、その建物の窓や玄関前、その他街のいたる所に色とりどりの花々が植られていて初めて見るソフィアは目を奪われていた。この時期は観光シーズンなこともあって沢山の人達が溢れかえっていてとても賑わいをみせていた。


「ルイスさん、クラロの街って王都に負けないくらい賑わっているんですね」


「今は観光シーズンだから特に観光客で賑わっているんだ。グラシア領は紅葉と街並みが綺麗だと言われて結構有名なんだ」


「途中に行った湖から見た森の紅葉は、ずっと見ていたいくらい綺麗でした。クラロの街も沢山の花が植わっていて街並みと合わさってなんて素敵なんでしょう」


「そう言ってもらえて嬉しいよ。そういえばソフィアは何の花が好きなんだ?」


「私は桜が大好きです!ピンク色の小さな花が満開に咲く時も、儚げにはらはらと散っていく姿も大好きなんです」


「桜か…どことなくソフィアに似ているな」


「私がですか?」


「ああ、美しい所も儚げな所も。ソフィアはまるで桜の精霊の様だ」


「精霊だなんて…恥ずかしいわ」


ルイスはソフィアの隣に座りなおすと、ソフィアの髪をひとすくいして髪に口付けた。


「本当のことだよ」


「!!」


旅に出て三日目、ルイスが日にちが経つにつれソフィアとの距離を詰めてくることがソフィアとしては嬉しいのだが心臓が持つか心配だった。



馬車は街を抜けて林の中を走って行く。少しでこぼこしていて時折小さな石を踏むのか座席の上でソフィアが跳ねる。


「ソフィア、屋敷までの道は少し悪い、危ないから俺の膝の上に乗るといい」


「だっ…大丈夫です」


「そうか?残念だな」


ルイスがクスクス笑う姿を見てソフィアは少し怒った。


「ルイスさん!からかったでしょ!?」


「いや本当に残念だと思っているが」


「もう!」


「ほら、ソフィアおいで」


「本当にだいじょっ」

ガタンと大きな音と共に馬車が揺れソフィアが大きく跳ねた。


「ソフィア大丈夫か?すまない、街の整備を先にして屋敷までの道は後回しにしてるから道が悪いんだ」


ルイスは自分の元へくるよう手を差し出した。ソフィアは恥ずかしかったがルイスの好意に甘えてルイスの膝の上に座ることにした。


「おじゃまします?」


ルイスはソフィアを膝の上に乗せると、ルイスの逞しい腕でソフィアの体を支えた。そのおかげで多少馬車が揺れてもソフィアはびくともしなかった。



「ねぇルイスさん、帰りも同じ道で帰りますか?」


「同じ道で帰るか、少し遠回りだが違う景色を見ながら別の道で帰るか考え中なんだ」


「別の道でも楽しそうですね」


「そうだな、ソフィアが良いのならそうしようか」


「はい」


ソフィアは少しでもルイスと一緒にいたい、旅行がもっと長く続いたら側にいれるのに…そんな思いが旅行が続くにつれ強くなっていった。付き合い始めて半年、ソフィアの中でルイスへの想いはどんどん膨れ上がっていた。




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