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第65話



2日目の朝、二人がホテルを出るとあいにく雨が降っていた。


「残念です。雨が降っていたら街に出て歩いて観光できないですね」


「ああ、残念だが街の観光はまたの機会にして、今日は雨だからゆっくり馬車で走らせて進もう」


「はい」


しかたなく街の観光を諦めて二人は馬車に乗り込んだ。

馬車は街を抜け林の中をゆっくりと進んで行く。突然石でも踏んだのだろうか、ガッタンという音と共に馬車が大きく揺れた。


「キャッ」


ソフィアが座席から放り出される様な形でルイスの胸に飛び込んだ。


「おっと、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です。…あっ!」


気がつくとソフィアはルイスに抱き着くような体勢になっており、ルイスはソフィアの背中へ腕を廻し抱き支えていた。


「ご、ごめんなさい」


余りのルイスとの距離の近さにソフィアの頬が紅色に染まる。

そんなソフィアを見てルイスは優しい笑みを浮かべる。


「ソフィアは本当に愛らしいな」


そう言ってルイスはソフィアを自分の膝の上に乗せ、おでこへキスをした。


「この辺りは道が悪いから、暫くこのままでいよう」


ルイスは揺れる道路を言い訳にし、ソフィアの身体を支える様に抱き締める。


「ルイスさん…」


すっぽりと腕の中に包まれたソフィアはルイスの胸に頬を擦り寄せた。



________________________________________



昼食は泊まったホテルで作って貰った軽食を馬車の中でとり、時折、馬車の中ではあるが休憩しながら今日泊まるグラシア領の入口となる街のホテルへと向かった。


グラシア領に入ると雨も止み、途中の街で観光出来なかったこともあって予定より少し早めにホテルに着いた二人はチェックインを済ませた後、夕飯まで街を散策することにした。


この街は隣の領地の直ぐ側にあるだけあって、グラシア領地で採れた物を輸出する物や、他領からグラシア領へ輸入した物が集まり、商人達が溢れかえって賑やかである。


商人が出す店も沢山あり、その商品目当てに観光客もやって来る。

商人達や観光に来ている人達に買ってもらおうと近隣の村々から地場産品を売りに出す屋台もあった。


夜は街の中央広場に夜市が出る。夕飯を屋台で取る者も多く、夜市になると食事を出す屋台も増え、あちこちから屋台で作られる食べ物の匂いが漂ってくる。


二人は手を繋ぎ、賑やかな街の中を楽しんでいた。


「凄い沢山の屋台と溢れかえる人達…王都の街とはまた違った賑やかさですね」


「そうだな、ここは商人達の集まる街で、いろんな所から人や物が集まって、いろんな食べ物や商品を売っていて賑わっているんだ」


「見てるだけで楽しいです」


「ここの夜市を目当てにやってくる人達も多いからな」


「だから夜でもこんなに人が多いのですね」


「観光客は夜市の料理も目当てにやって来る。夜市の料理は安くて美味いんだ。

屋台の美味しそうな匂いを嗅いでいたらお腹が空いてきたな、ソフィアそろそろホテルへ戻らないか?」


「ええ、私もお腹が空きました。ホテルへ帰りましょう」


「今度来る時はもっと時間を取ってゆっくり見て周ろうな」


「はい、今度来た時は夜市の料理食べてみたいです」


「ああ、そうしよう」



_________________________________________



ホテル内にあるレストランで夕食を済ませ、ルイスはソフィアを部屋まで送るため手を繋いで廊下を歩いていた。

ルイスが部屋の前で止まるとソフィアの方へ向き直り、繋いだ手を引っ張りソフィアを引き寄せ抱きしめる。


「おやすみソフィア、また明日8時に部屋に迎えに行く」


そう言うとルイスはソフィアのおでこへキスを落とした。


ソフィアはおでこにキスをされ、もしかしたらこの後口付けされるかもと期待して瞼を閉じ少し上を向いて待つが、何も起きないので(あれっ?)と思い、瞼を開くと目に入ったのは耳まで真っ赤な顔をしたルイスだった。


唇にキスされず残念に思ったソフィアだが、ルイスも頑張ってくれているのだと顔を見れば分かった。

だけど、もう少しだけ進展したいと思ったソフィアは受け身なだけではいけないと、自分も頑張ってみようと決心した。


「……ルイスさん」


ソフィアは小さく囁く様にルイスの名前を呟いたかとおもうとシャツの胸元をぐっと引っ張り顔を引き寄せた。

そして精一杯背伸びをしてルイスの頬へ少し触れるだけのキスをした。


「おやすみなさいルイスさん、また明日」

そう言ってソフィアは部屋へ入って行った。


ルイスはソフィアに突然頬にキスをされ、真っ赤な顔が更に赤くなり固まってしまった。

そしてルイスは廊下を通りかかった従業員に声をかけられるまで暫くその場に固まっていたのだった。



一方、部屋へ入ったソフィアはドアを閉めるなり、その場にへたり込み心の声が漏れないように両手で口を押さえて叫んだ。


(やっちゃった、自分からキスしちゃった!)







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