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第56話

ロベルト目線




「はっ…はっ……レティシアさんっ」


いったいどこにいるんだ。


彼女が行きそうな所を探すが何時まで経っても彼女を見つける事が出来ない。


彼女を探している途中で、知り合いの警邏隊の人間や騎士達に聞いて周ったが、彼女の姿を見た人物はいなかった。


雲はどんどん黒く染まり、そしてポツリ…ポツリと雨が降ってきた。


「早く見つけないとっ…」


彼女が風邪を引いてしまったらいけないと思い、走る速度を上げた。


徐々に雨脚が強くなっていき、ぐっしょりと濡れた服のせいで身体が重たい。


彼女がどこかで雨宿りしてくれていたら良いなと思い、周りを見回しながら走る。


その途中で豪華な馬車とすれ違った。

見た所王家の馬車の様だが、そんな事を今気にしている場合ではない。


「もしかして…王都から出てしまったのか?」


彼女ならありえる…。

そう思ったら西門へ行こうと方角を変える。


だが、1度まんぷく亭の側を通るので、彼女が帰ってきていないか確認をしてから西門へと向かう事にした。


濡れる道をビチャビチャと走っていると前から傘をさしたソフィアさんが向かってきた。

もしかしてレティシアさんが戻ってきたのかと淡い期待を抱いてソフィアさんの元へと駆け寄る。


「ロベルトさん!」


「ソフィアさんっ…レティシアさんは戻って来たのですか?」


彼女が外にいるという事は、レティシアさんが戻ってきたのだとばかり思った私はそう彼女に問いかけた。


「いえ……実はライ君が西門を出て少しした所の街道でレティの事を見つけてくれたの」


やはり、王都を出てしまっていたのか。

それにしても、まさか第二王子がレティシアさんの事を見つけるとは…。


「そうなのですね…すみません、私はレティシアさんの事を見つけられませんでした」


不甲斐ない自分はソフィアさんに頭を下げた。


「いえ…流石に王都外に出ていたとは私も思わなかったので…。

それに、こんなにびしょ濡れになりながらも、レティを探してくれて感謝しかないです」


「あの…それで、レティシアさんは今は家にいらっしゃるのですか」


「それが…ライ君が王城でレティの事を預かると、連絡を頂いて。

なのでロベルトさんに知らせようと探していたんです」


「王城で…」


ロベルトは先程すれ違った王家の馬車を思い出した、もしかしたら彼女はその馬車に乗っていたのかもしれない。


「ロベルトさん、レティの事を探してくれてありがとうございました。

風邪を引いてしまうので早く服を着替えないと…」


そう言ってソフィアさんは傘を傾けて自分がこれ以上濡れないようにしてくれたが、それを止めた。


「大丈夫です、鍛えているのでこれくらいで風邪など引きません。

それよりソフィアさんが濡れてしまってはいけませんし、暗いので家までお送りします」


「ですが…」


「もしソフィアさんの身に何かあったらルイス団長に何をされるか分かったものではないので、私の為だと思ってお願いします」


「ふふっ…そうですか、ではお言葉に甘えてお願いします」


そうして自分はソフィアさんを無事に【まんぷく亭】まで送り届け、騎士団の宿舎まで戻ったのだった。


直ぐに脱衣所まで向かい濡れた服を脱ぎ、シャワーを浴びる。


頭の中では、レティシアさんの事でいっぱいだった。


団員達が自分の部屋を訪れるまで、前の日の楽しかった出来事を噛み締めながら休日を部屋で満喫していた。


そんな平和な休日を壊す様に勢い良く叩かれる扉を、何だろうと思いながら開くと、数人の団員が慌てた様子だったので何か緊急な要件かと身構えた。


そして団員達から聞かされた話は、想像していた話とは違ったが、自分の中ではとても緊急な要件だった。


「マルティン子爵令嬢…」


シャワーを浴びながら団員達から聞いた令嬢の名前を呟いた。


その名の令嬢は確か、数ヶ月前に強制的にさせられた見合い相手だった。

爵位が上の人間に頼まれたら騎士爵の自分は断れず、いやいや行った見合いだった。

自分の顔や体型はどうやら令嬢達にとって、とても良い容姿らしく、騎士爵を王から頂いてからよく強制的に見合いをさせられている。


勿論全て断っているが、それでも自分の容姿が好きなのか結婚して欲しい、婿入りして欲しいと言われるのが後を絶たない。

ルイス団長がその度に助けてくれていたので今までは問題なかったのだが、今回のマルティン子爵はグラシア伯爵の言葉に耳を傾けなかったのだ。


「クソッ…」


平民で無くなった時から、なるべく心は乱さず口調も昔と違い丁寧に話すように心がけて来たが、そんな事はどうでも良くなってきた。


「好きな女性すら守れない…まして、自分のせいで傷つけるなんて…」


団員達から聞いた令嬢がレティシアさんに向かって吐いた暴言の数々を思い出す。


「婚約者ではないと…自分が好きなのはレティシアさんだと早く弁解したかった、謝って……そして…」


情けなくも告白して恋人になって欲しいと頼もうと思っていたのに…。

彼女の事を見つけたのはライムンド殿下だった。


「レティシアさん………」


ザザァァ……


頭から勢い良く降りかかるシャワーは冷えきった身体を温めてくれるが、心は冷たく凍った様だった。





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