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第26話

続きー





春の薔薇が咲き乱れる庭が一望出来るバルコニーに、白い猫脚のテーブルと椅子が配置され、テーブルの上には美味しそうな焼き菓子が沢山置かれている。


そんなバルコニーに一人、この国で唯一の王女であるシャルロットが先に席に着いて待っていた。


「お待たせしてごめんなさいね、シャルちゃん」


「大丈夫ですわ!ソフィーお姉様、レティちゃんもようこそ!あら、ライお兄様までいらしたのね」


腰まで伸びたフワフワな金の髪と、吸い込まれそうになる紫色の瞳、小さな顔に大きなパチっとした目、ぽってりとしたサクランボ色の艶のある唇はまるでお人形さんの様に愛らしい容姿をしているシャルロットは、久しぶりに会えた姉妹に嬉しそうに笑いかけた。


「シャルちゃんお待たせ!」


「俺は送り届けただけだから、もう戻る」


姉妹を送り届けたライムンドはレティシアの頭をポンポンと撫で部屋を後にしようとする。


「ありがとう、ライお兄様」


「良いんだよ、レティ。またな」


レティシアはライムンドを部屋の外まで見送る、そんな姿をソフィアとシャルロットはバルコニーから見て、小さな声で話した。


「相変わらず、ライお兄様はレティちゃんに甘々ですわ」


「本当にそうよね、でもレティ絶対にライ君の気持ちに気付いていないわよね」


「そうですわよね…私的にはライお兄様とくっついてくれたら嬉しいのですけど」


ボソボソと小さく話す二人の声はレティシアの耳は届かず春のそよ風に消えていった。



「改めて、お久しぶりですわ!ソフィー姉様、レティちゃん、会えて嬉しいですわ」


「久しぶりシャルちゃん!これ、皆で食べようとケーキ焼いてきたの、はい!!プレミアム・ストロベリータルトだよ」


インベントリの中から、箱を取り出し中身を見せるレティシアはケーキを切り分けて貰う為に側に控えていた侍女に渡した。


「まぁ!!嬉しいですわ、レティちゃんの作るケーキは格別なのですもの」


シャルロットは昔からレティシアの作るケーキが大の好物である。

そんなシャルロットの為にレティシアはシャルロットに喜んで欲しくて、お茶会の度に手作りのお菓子を作って来るのである。


特にシャルロットがフルーツを使ったお菓子が好きな為、レティシアは季節のフルーツを取り入れたケーキを作って持ってくる事が多い。

そして今回のプレミアム・ストロベリーは市場に出回る期間が1週間というとても短い期間しかない貴重なフルーツであり、極上に甘く程よい酸味で大粒の為、とても人気で直ぐに売り切れてしまうのだ。


そんなフルーツをどうやって手に入れたかと言うと。

ソフィアがプレミアム・ストロベリーで作ったレティシアのお菓子が食べたくて、行き付けの果物屋に頼んで取って置いて貰ったのだ。

果物屋の店主も、いつも沢山のフルーツを買ってくれるソフィアの為に人肌脱いで、特別に取り置きしてくれたのだ。


しばらくすると、ケーキを切り分けてくれた侍女がワゴンを押してやってきた。

三人にケーキとお茶が配られると、お茶会の始まりだ。


シャルロットは侍女に下がる様に伝え、バルコニーには三人だけになった。



まず、シャルロットが早速一口ケーキを口にすると、目をキラキラと輝かせた。


「ん〜!美味しいですわ、流石レティちゃんのケーキ!プレミアム・ストロベリーの甘みと酸味がタルトの生地と良く合います」


「えへへ、そう言って貰えて嬉しいな!いっぱい食べてね」


「はいっ!」


もぐもぐと、幸せそうに食べるシャルロットを見てソフィアとレティシアも嬉しそうに笑った。

三人は味わいながら、ケーキを食べてお茶を頂き、ホッと息を付いた。


「「「美味しかった」わ」ですわ」


ケーキを食べ終えた三人は、今度は会話に花を咲かせた。 


「そう言えばソフィー姉様、レティちゃん、先日は大変でしたわね。何でもオークの大群が表れたとかで…。

討伐をお手伝いされたと伺いましたわ」


「うん、流石にオークキングが出てくるとは思わなかったよ。あの魔物って西の森の奥でしか出ない筈なのに……ってそれを言ったら普通のオークだって浅瀬になんて出ない筈なんだけど」


「オークキングが…それで大丈夫でしたの?」


「実はね、私がオークキングに襲われそうになったのよ」


「ソフィー姉様が!?」


「えぇ、逃げ遅れてしまって。それをルイスさんが助けてくれたの」


「ルイスさん………あぁ、第三騎士団の団長様ですね」


「そうよ、私を守ってオークキングの斧を受け止めて庇ってくれたの、その代わりにルイスさんが大怪我を負ってしまったのだけど」


ソフィアの話を聞いたシャルロットは痛ましげな顔をした。


「そうでしたのね…それでその方は」


「お姉ちゃんの治癒魔法で治せて無事だよ!」


「まぁ!良かったですわ!」


「もう!レティったら。私の力じゃなくてキューちゃんの力のおかげよ、あの子がいなければ私はルイスさんの怪我を治してあげる事が出来なかったわ」


「ふふ、キューちゃん様も大活躍でしたのね」


シャルロットもキューちゃんの事を知っている数少ない人物の一人である。


「あ!そうそう(団長さんと言えば)お姉ちゃんに恋人が出来たんだよ」


「レ、レティ!?」


「え!!!ソフィーお姉様に!こ、恋人が!?お相手はどなたですの?」


レティシアの発言に思わず席を立ち机に手を付きソフィアの方へ身体を前に乗り出すシャルロット。


「シ、シャルちゃんたら」


余りの様子に引くソフィアに、はっと気づき、はしたない事をしたと思い直したシャルロットは席へ座り直した。


「そ、それで…ソフィー姉様のお相手とは?」


「えっと…その…ルイスさ、んです」


そう口にしたソフィアの顔はゆでダコの様に真っ赤になってしまった。


「まぁまぁまぁ!!!ルイスさんとは、先程のソフィー姉様を身を立てにしても守り抜いた方ですわね、確か第三騎士団の団長様はグラシア伯爵家のご当主でしたわ!と言う事は、ソフィー姉様は伯爵夫人になられるのですわね!」


「ふ、夫人って…シャルちゃん気が早いわよ」


「まぁ!ソフィー姉様ったら、グラシア様がお姉様を手放すなどあるわけがございませんもの。全く気など早くないですわ」


「そ、そうかしら」


「えぇ!それにしてもソフィー姉様はグラシア様のどちらに惚れられたのですの?やはり命を助けて頂いたからかしら?それとも、グラシア様の筋肉ですか?確かあの方の筋肉も、それはそれは素晴らしいと常々思っておりましたのよ!ソフィー姉様もそう思われたのでしょう?」


「確かに…ルイスさんの筋肉もとても素敵よ?あの逞しい腕に抱き締められた時は、気絶してしまいそうになる程に素晴らしかったわ、でも、それよりも何よりもルイスさんはとても優しくて、あの方といると楽しくてずっと側にいたい、お話していたいと思ったの。

そして普段は余り表情を崩さない方なのですけど、時折私に微笑むお顔が素敵過ぎて。

贈り物を下さった時は耳を赤くしながら、恥ずかしそうに渡す姿にキュンとしてしまったの。

先日の討伐の時は私の事を身をもって助けて下さり、大怪我を負ったのは自分だというのに私の心配をして下さったあの方の……」


「ストップ!ストップ!お姉ちゃん!シャルちゃん固まってるよ」


「あら?シャルちゃん?」


「あ、甘く見ていましたわ…ソフィー姉様がここまで惚気けられるとは、危うく砂糖を吐いてしまう所でした」


ソフィアの惚気にお腹いっぱいになった。シャルロットとレティシアは、遅い初恋は大人になってからかかった麻疹の様だと良く言われるがソフィアは典型的な例だなと二人は思ったのであった。


「はぁ…それにしても、ソフィー姉様が羨ましいですわ。私も早くあの方と結ばれたいですわ!」


「シャルちゃんはリカ兄様の事がずーっと大好きだもんね」


「そうですわ!」


レティシアの言う、リカ兄様とはこの国の第一騎士団の団長である、リカルド・アルバ公爵の事である。

現在、29歳の独身貴族である彼もとても良いガタイの持ち主でありルイスよりも更に身長が高く190cm超という巨体である為、顔は良いのだが、婚約者が出来ず公爵家当主というのに結婚出来ずにいるのだ。

彼もソフィアとレティシアの兄的な存在で、産まれた時から良くしてくれてる人物である。


「なぜ、リカルド様は私の告白を毎度毎度スルーされるのですか!?いつも好きだと伝えると、あの方も私の事を大切に思ってると答える下さるのですが、その声には全く恋愛感情が入っていないのですわ!」


幾度となく告白をしては、まるで妹に好きだと言われた兄が答える様な返事を返してくるリカルドにシャルロットは奮起した。


「んー……リカ兄様とシャルちゃんは12歳離れているからね」


レティシアとシャルロットは同い年である。

シャルロットは現在16歳だが今年の誕生日を迎えたら17歳になる、そしてリカルドは29歳である。

12歳も離れていたら妹にしかみれないリカルドに無理はない。


「うぅぅ…年齢差が辛いですわ」


「でも、シャルちゃんもリカ兄様もまだ婚約者がいないから、まだまだ頑張れると思うわ」


「ソフィーお姉様、そうですわよね!私頑張りますわ!!」


「頑張れ!シャルちゃん!」


「それと、レティちゃんはどうなのです?誰か気になる方はいらっしゃいませんの?」


「んー………私は特にいないかな」


「そ、そうですのね」


そのレティシアの答えに

(ライお兄様、レティちゃんにあれだけアプローチしても一切気付いていらっしゃらないみたいですわ、ご愁傷さまですお兄様)

兄に向けて心の中で両手を合わせたシャルロットであった。







続くー

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