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第99話






レティシアとロベルトに見送られたソフィアはルイスの待つタウンハウスへと向かった。

ソフィアがタウンハウスに着くと、ルイスが屋敷の門扉の前に立っていた。


馬車が止まるとルイスは扉を開け手を差し出すと、ソフィアはルイスの手を取り馬車から降りる。


「ソフィア、良く来てくれた」


「寒いのに外で待っててくれたの?」


「ああ、早くソフィアに会いたくて、我慢できずにここで待っていた」


「もう、風邪ひいちゃうわ。こんなに冷たくなっちゃって」


ソフィアは両手でルイスの頬を包み込んだ。


「…ソフィアの手は温かいな、ここでソフィアを抱きしめたいが二人ともこのままでは風邪をひいて寝正月になってしまう。早く屋敷に入って温まろう、家令達がソフィアに会いたがっている」


「はい」


屋敷に入り、ルイスはソフィアに執事を始め数人の侍女達を紹介していった。


「…後は料理人達と庭師がいるんだがまた後で紹介しよう。とりあえず侍女長、ソフィアを部屋に案内してやってくれ」


「はい、かしこまりました」


「ソフィア、ゆっくり休んでくれ。昼食は一緒に取ろう」


「はい、ではまた後で」




侍女長に案内されたソフィアは部屋に入る。

ソフィアの目に飛び込んできたのは白に金の縁どりした家具と白いレースのカーテンに落ちついた赤い色の厚地のカーテン、部屋の奥には天蓋付きの大きなベッドがあった。


「こちらがソフィア様のお部屋になります。隣は旦那様のお部屋で、あちらの扉で繋がっております。反対の扉は浴室となっております」


「素敵なお部屋ですね。えっと、ルイスの隣の部屋ですか?」


「はい、ソフィア様はルイス様の奥様になられる方ですので」


「そ、そうなんですね、わかりました」


今は一部の人達しか知らないとはいえ婚姻届を出していて実質上はもうソフィアはルイスの妻なのでこの部屋を使うことはおかしくはない。

今さらだがルイスの隣の部屋で今夜から寝るのだと思うとソフィアはなんだか恥ずかしさがこみ上げてきた。


(領地の屋敷の時は気にならなかったのに…)


ソフィアは頭の中がぐるぐるして侍女長が話しかけていることに気がつかない。


「ソフィア様…ソフィア様?いかがなされましたか?」


「…はっはい、何でもないです」


「お着替えされるのでしたらお手伝いさせていただきますが、いかがいたしましょうか?」


「着替えは自分で出来るので大丈夫です」


「かしこまりました。ではお茶をお持ち致しますので少々お待ちくださいませ」


侍女長が部屋を出ていくとソフィアは着替え、クッションを抱えながらソファに座った。


「奥様か…なんか恥ずかしいなっ」






昼食の時間になりルイスとソフィアは食事を共にした後、陽当りの良いサンルームの長いソファに寄り添いながら二人きりの時間を楽しんだ。


「よく来てくれた、ご両親に反対されて来れないかと思ってた」


「ルイス、迎えの馬車ありがとう。ルイスのお屋敷に泊まるのは母が許可してくれたの、父には内緒でね。二人共一昨日から急な討伐依頼で出かけてしまったの、しばらくは帰って来ないと思うから父はわからないと思うわ」


「そうか、ヴァレンティナ様には感謝しないとな」


「ふふ、今日から数日お世話になります」


「ずっと居てくれても良いんだが…」


ルイスはアルセニオの顔がふと脳裏に浮かんで言葉を止めた。


「何もない屋敷だがゆっくりしていってくれ。ただ3日の夕方には伯父夫妻が来るから、残念だが二人きりでいられる時間は余りないが…」


「ううん、いつもより長く一緒にいられるもの、数日だけでも二人きりになれて嬉しいわ」


「ああ、ソフィアと二人で年末年始を過ごせるなんて俺も嬉しく思う。そういえば、ソフィアに渡したい物があるのだが」


ルイスが手を叩くと、執事がビロード仕立ての箱をトレーに乗せて持ってきた。


ルイスは箱を受け取るとソフィアに手渡す。


「今度の舞踏会の為に領地から取り寄せた、気に入ってくれたら良いのだが」


「ありがとうルイス、嬉しいわ」


ソフィアがそっと箱を開けると中には三連の真珠のネックレスとルビーと真珠で作られたイヤリングが入っていた。


ソフィアは豪華なアクセサリーに驚きを隠せない。


「ルイス、こんなに高価なアクセサリーは受け取れないわ。こんなに豪華な真珠は王族の方達しか持っていないわ」


「これは我がグラシア領地で真珠の養殖場の者達がより良い物を選び、一流の職人がソフィアの為に作った物だ。

ソフィアに着けてもらえれば領民達も喜ぶだろう。

イヤリングは伯父上からのプレゼントで、石を選んだのは叔母上なんだ。ソフィアが着けている姿を見せればさぞ喜んでくれると思う。

王族の方達が持っていないならともかく、持っているならあまり気にしなくても良いんじゃないか?」


「そうかしら。わかったわ、素直に受け取らせてもらうね。ありがとうルイス嬉しいわ、当日着けるの楽しみにしてるね」


「ああ、喜んでもらえて良かった」






新年の舞踏会当日


エントランスホールではルイスがソフィアを待っている。

階段を降りてくる音に気が付きルイスは目線を上に上げると、ソフィアが優雅にゆっくりと降りてきた。


(ソフィア、なんて綺麗なんだ…)


ルイスはソフィアの美しい姿に目を奪われ声が出ない。


「待たせてごめんね。ルイス」


「……」


「ルイス?」


「…あっ、ああ、なんて綺麗なんだろうか、ソフィアは国で一番、いや女神よりも美しい」


ルイスはソフィアの手を取り指先に口づけた。


「ルイスの贈ってくれたアクセサリーやドレスのお陰だわ、こんなに素敵なドレスまで贈ってもらえて嬉しいわ、ありがとうルイス。

でも女神よりだなんて大袈裟ね」


「いや、大袈裟なものか。ソフィアより美しい人などいるわけがない」


「ふふっ、ありがとう。ルイスがそう言ってくれると嬉しいわ」


「舞踏会でソフィアを他の男達に見せるのは嫌だな、行くのを止めるか…」


「前も同じ事言ってたわ」


「……言ってたな、でも何度でも言いたくなる程ソフィアが美しいのだからしかたがないだろう?」

ルイスはソフィアの細い腰を引き寄せると、ちゅっとソフィアの前髪に口づけた。


「唇にしたいが化粧が落ちたら侍女達にしかられてしまう、今はこれで我慢しよう」


「もう……」


「馬車が来たようだ、では行こうか。ソフィア手を」


「はい」


ルイスはソフィアの手を取り馬車に乗り込み城へと向かった。






日も傾き、ライトアップされた城には次々と馬車が入って行く。

ルイスとソフィアの乗った馬車も止まり、先に降りたルイスの手を取りソフィアが降りる。

ソフィアが降りた瞬間、馬車の周りにいた人々はソフィアへと目を向けた。

ソフィアの美しさに皆の会話が止まり辺りは静まり息を飲んだ。


(ほうっ…)


ルイスとソフィアが周りの貴族達に軽く会釈をし、階段を登り城の中へと入って行った。


二人の背中を見ながら再び人々は会話を始める。

 


「ソフィア様と婚約者のグラシア殿か。ソフィア様はヴァレンティナ様に似てきて、お美しくなられて」


「ああ、春には御結婚されるそうだ」


「グラシア殿がうらやましい」


「本当に」







舞踏会の会場へ入る為に扉の前に立つ二人は名前を呼ばれた。


「ルイス・グラシア侯爵、並びにソフィア・グラシア侯爵夫人の入場です」


先に入っていた貴族達からざわめき立った。


「グラシア侯爵?彼は伯爵だったはずだが…」


「隣のソフィア様、今夫人と呼ばれていなかったか?」


二人が入ってくる姿にざわめきが止まり、誰もがソフィアの美しさに目を奪われる。


入り口に凛として立つソフィアを見て、女神が降臨したと錯覚をおこした。


並ぶ貴族達の前を通り過ぎるルイスとソフィアは圧巻だった。


ピンクゴールドの髪の前髪を少し残し、残りは後に纏め上げ、ハートカットのドレスは真紅のレースと同色のシルクサテンで仕立てていて、生地に縫い付けられた小さなダイヤが歩く度にキラキラと光輝いている。

そして更にソフィアの首にかかる真珠の三連ネックレスとルビーと真珠のイヤリングに見る者全てが驚きを隠せないでいた。


「ソフィア様お綺麗ですわ、ドレスもなんて美しいのかしら」


「グラシア様の髪と瞳に合わせたお色のドレスだなんて素敵ですわ」


「ソフィア様のネックレスは貴重な真珠の三連ですわ、なんて豪華なんでしょう」


「グラシア侯が羨ましい、あんなに美しい方と結ばれるとは」


「私が先に出会いたかった…」



ソフィアを見た令息達はルイスを羨ましがり、悔しがった。

令嬢達は真紅の似合うソフィアのドレス姿を見て比べられるのを恐れ、新年の舞踏会以降赤いドレスを身に纏う者が減るのであった。



ルイスとソフィアが貴族達の列に並び、公爵、王族が入場しガルシア王の新年の挨拶を経て舞踏会が始まった。


貴族達の王族への挨拶が始まる 前、ガルシア王が壇上の上に立つと、宰相がルイスとオルティスを呼び寄せる。


ルイスとオルティスはガルシア王の元へ急ぎ片膝を付き頭を下げる。


「昨年末の北の国との戦争で特に貴殿ら二名は活躍し早期に戦争を終わらせることができた。これにより先日の叙爵式で二人はグラシア伯爵は侯爵に、オルティス子爵は伯爵となった。

あらためて今宵集まった皆に知ってもらいたかった。

わしから貴殿ら二人に賛辞を贈ろう」


「「ありがたき幸せ、これからも国の為に精進いたします」」


「うむ、期待しているぞ。それでだ、貴殿らは近々結婚すると聞いたのだが」


「私、ルイス・グラシアは昨年末に英雄様の長女ソフィア嬢と婚姻しました。春には式を挙げる予定でございます」


「私、ラウル・オルティスはサンチェス侯爵家次女アマリア嬢と初夏に婚姻し結婚式を挙げる予定でございます」


「そうか、ならばわしから褒美として貴殿らにこの城内にある教会で結婚式を挙げようではないか」


「あ、ありがたき幸せでございます」


「ありがたき幸せ、謹んで受け取らせて頂きます」


王族と公爵家のみが許される教会で、結婚式を挙げることになってしまったルイスとオルティスは複雑な思いで褒美を受け取るのだった。




貴族達からガルシア王への挨拶が終わり、音楽団の演奏が始まった。


王族達のダンスが終わり、ルイスとソフィアも手を取り合いホールの中央へと進み踊りだす。


「ソフィアは相変わらずダンスが上手だな」


「ルイスだって他の誰よりも上手よ」


「ソフィアのお陰だ」


「今日からは二曲以上踊ってもいいのよね?」


「ああ、踊ってもいいが…俺以外の男とは踊って欲しくない」


「そうね、ルイスとレイお兄様以外の男性は嫌だわ」


「レイナルド王太子殿下はしかたないか」


「なんかごめんね」


「それ以外はソフィアに近づけさせないから、もう前みたいにソフィアから離れたりしないから」


「うん、ありがとう」


ルイスとソフィアは楽しく続けて二曲踊り終えた。

その後、ソフィアと踊りたい男性達に囲まれたのだがレイナルド王太子がソフィアにダンスを申し込み、他の男性達は泣く泣く引き下がった。


次こそはと男性達から狙われたソフィアだったが、レイナルド王太子がそのままソフィアを王族達の元へと連れて行ってしまい、結局今回の舞踏会では他の男性と踊らずに済んだのだった。









「私達の可愛いソフィアと踊るだなんて許すはずないだろう、セラフィナもそう思うだろう?」


「ええ、もちろんだわ」













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