表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/109

第97話

戦後の処理が終わり、第三騎士団の食堂では祝勝会が始まろうとしていた。


「皆の働きもあって戦争中街では何事もなかったことを喜ばしく思う。祝勝会での料理はうちの料理人と隣のまんぷく亭のソフィア嬢とレティシア嬢が共同で作ってくれた」


ルイスとロベルトの間で恥ずかしそうにソフィアとレティシアが立っている。


「皆、今日は食べて飲んで楽しんでくれ!乾杯!!」


「「「「乾杯ーーーーーーー!!!!」」」」」


「因みに飲みすぎて潰れたり、悪絡みした人は1ヶ月トイレ掃除ですので節度を持って楽しん下さいね」


「「「「「はい!!!」」」」」







ルイスは祝勝会が始まって早々、ある人物に声を掛けた。


「コルテス。戦時中の第三騎士団の指揮、ご苦労であった。良く皆をまとめてくれた」


副団長補佐のフィデル・コルテスはルイスとロベルトが竜騎士として出陣していた間、第三騎士団をまとめていた。

今まで、副団長補佐という役職は存在していなかったのだが、団長と副団長のルイスとロベルトが竜騎士に選ばれた影響で二人揃って第三騎士団を留守にする機会が増えてしまった為、最近出来たのであった。


「ありがとうございます!ルイス団長の竜騎士団でのご活躍をお聞きしました。侯爵への叙爵おめでとうございます」


「あぁ、ありがとう」


ルイスはコルテスと共に騎士達へスープを渡しているソフィアとレティシアの元へと向かった。


「コルテス、紹介する。婚約者のソフィアと妹君のレティシア嬢だ。レティシア嬢はロベルト副団長の婚約者でもある」


「フィデル・コルテスと申します。御婚約おめでとうございます。」


「ありがとうございます、コルテス様」


他の団員にスープを渡していたレティシアは遅れてコルテスに挨拶をした。


「レティシアです…あのもしかしてコルテス様って」


レティシアはコルテスの顔を見てはっとする。


「お店で私を庇って下さった方ですよね?あの時助けて下さったのにお礼が言えてなくて、ずっとお会いしたかったんです」


「えっ、あ…あの時の事ですか、そんなお礼を言って貰えるほどの事ではないのですが。……あの御令嬢の言い方が余りにもこの国の理念に反していたので」


「いいえ、コルテス様のおかげで妹のレティシアが助かったのです。本当にありがとうございました。私からもお礼を申し上げます」


ソフィアとレティシアは深々と腰を折り、コルテスに改めてお礼を告げた。


「コルテス様、今日は姉と一緒に色々と作ったので沢山食べて下さいね。…まぁほとんど姉が作ったのですけど」


「今日は我々の為にありがとうございました」


「今日のメニューは冬野菜とコッコのミルクスープと黒豚さんのスペアリブのグリル、ドードーのガーリック増し増し唐揚げと照り焼きチキン、ミートボール入りトマトスパゲッティーと黒牛さんとガーリックの芽のガーリックオイルスパゲッティーです。

あと、こちらの料理人の方が黒牛さんのステーキを注文式で焼いてくれています」


「どれも美味しそうですね、少しづつ全種類頂いてもいいですか?」


「はい、もちろんです!少々お待ち下さいね」


レティシアとソフィアはテキパキと料理をよそうとコルテスに渡す。


「お待たせしました」


「ありがとうございます」


コルテスは嬉しそうに受け取り、他の団員達の席に混ざっていった。


「ソフィア、レティシア、お疲れ様。後は料理人達に任せて一緒に食べよう」


「そうね」


「はーい」


ルイスとソフィア、ロベルトとレティシアはそれぞれ好きな料理をトレーに乗せ席に着いた。


「「戦争勝利おめでとうございます」」


「「ありがとう」」


「「「「乾杯」」」」


戦争が終わった事を四人は心から喜びを分かち合った。












数日後




戦争の被害も無く、街は直ぐに前の様な活気が溢れだしていた。


まんぷく亭は久しぶりの開店を前に慌ただしく準備に追われていた。


「寒ー、今日は一段と寒いね。お姉ちゃん店の掃除終わったよ、こっちは準備完了ー」


「了解、こっちも料理の準備が終わったわ。さぁお店を開けましょうか、よろしくねレティ」


「はーい」


レティシアは元気よく扉を開けてすでに並んで待っていた客を次々と案内していく。


「いらっしゃいませー」


「レティシアちゃん久しぶりー、お店が再開するのを楽しみに待ってたんだ。今日のランチは何?」


「お二人ともお久しぶりです、ご来店ありがとうございます!今日のランチはビッグホーンブルのスジ煮込みかオーク肉のガーリック醤油焼きです。今日のスープはオーク肉とジャガイモと玉ねぎの味噌汁です」


常連達は戦争中まんぷく亭の料理が食べられず、開店を今か今かと待っていた。


各自注文を済ませ、レティシアが料理を持ってくるのをそわそわしながら待っている。


「お待たせしましたー」


「「やったー」」


「ごゆっくりお召し上がりくださいね」


「「いただきます!!」」


フォークを片手にスジ煮込みを頬張る。


「はぁー美味しい、幸せ〜。スジがとろとろに煮込まれて口の中で蕩けてなくなる…。それに味が染みたこんにゃくと大根が最高」


ガツガツとスジ煮込みとご飯を交互にかきこんでは味噌汁を流しこむ。


「俺の頼んだガーリック醤油焼きだって美味いぞ。オーク肉が柔らかくて香ばしくて、タレが絡みついた肉を頬張れば肉汁が口の中に広がるんだ。肉一切れでご飯が何杯も入りそうだ。またこのタレがキャベツの千切りに絡んでマヨネーズと一緒に混ぜて食べるのがたまらないんだ」


「へー。俺、これ食べ終わったらそっちのランチ頼もうかな」


「俺もそう思った」


「あははははっ」


レティシアがふと店内を見渡すと楽しそうな笑い声と嬉しそうに食べる客の顔が目に映り、戦争前の賑やかさが戻ってきたことを実感したのだった。


「ごちそうさまー」


「ありがとうございました、また来て下さいね」


レティシアが店内最後の客を見送るとランチの営業時間はあと少しで終わるところだった。


「もうお客さんはこないかな?」


レティシアがテーブルを片付けている時、扉が開き店内にドアベルの音が鳴り響く。


「もう終わりかな?二人なんだが大丈夫か?」


レティシアが振り向くと旅の格好をした赤茶の長い髪をひと括りに纏め丸眼鏡を掛けた男と暗緑色の短髪で切れ長の目をした男が入ってきた。


「あっ、いらっしゃいませー!大丈夫ですよ、こちらにどうぞー」


「ああ」


「すみません、普段は2種類のランチメニューがあるのですが、あいにく今日はもう1種類しか残ってなくて。オーク肉のガーリック醤油焼きとライスとオーク肉とジャガイモと玉ねぎの味噌汁のランチなんですがそれでもいいですか?」


丸眼鏡の男は少し驚いた表情を浮かべると短髪の男の耳元で何かをささやいた。

短髪の男はレティシアに返事を返す。


「ああ、それでかまわない。それを二つ頼む」


「はーい、ランチお二つですね、ライスにしますか?パンにしますか?」


「二つとも…ライスで…」


「はい、ライスですね。少々お待ちください」


レティシアは厨房のソフィアに注文を通すと二人の客の前にお冷とお絞りを置いた。

二人はレティシアがお冷とお絞りを置いたことにも気がつかず小声でひそひそと話をしている。


レティシアは少し気になったがソフィアに呼ばれて注文の料理を取りに向かった。


「お待たせしましたー、ご注文のオーク肉のガーリック醤油焼きです、熱いのでお気をつけてお召し上がりください」


二人は料理を凝視したかと思うと素早く懐から銀色の箸を取り出し、「「いただきます」」と一言言ったあと夢中になって食べ始める


「こっ、これは!まさか…」


時折聞こえてくる丸眼鏡の男の声だけが店内に響く。


食べ終わったのか、短髪の男がレティシアを呼んだ。


「とても美味かった。少し聞きたいことがあるのだが、料理人と話がしたい、呼んでくれるか?」


「は、はい。少々お待ちください」


レティシアが厨房へ行きソフィアを呼んだ。


「お姉ちゃん、お客さんが聞きたいことがあるんだって」


「えぇ、わかったわ。今行くね」


パタパタと小走りでソフィアは二人の客の元へと急いだ。


「いらっしゃいませ、ここの料理人のソフィアといいます。御用件はなんでしょうか?」


「君が!?」


「…はい。それで、あの…」


「あっ、す、すまない。街の食堂の料理人だからもっと年配の方だと勝手に想像していた。

今俺達が食べた料理がとても美味しくて、この料理は君が考えたのか?」


「いえ、これは母から教わったんです。うちの料理は父と母から教わったものばかりです」


「そうなんですか…あの、ご両親に会って話を聞くことは出来ませんか?」


「すみません。父と母は忙しくていつ帰ってくるかわからないんです」


見知らぬ客に両親が城に居るとなど言えるわけがないとソフィアは咄嗟に嘘をついた。


「そうですか、残念です。あの、良ければご両親の名前を聞いても?」


ソフィアの両親の名前などガルシア王国では誰でも知っているので嘘を言ってもしかたがないと思い本当の名前を告げた。


「父の名前はアルセニオ、母はヴァレンティナです」


「そ、その名前は!?すみませんございました…英雄様にご息女がいらっしゃったとは知りませんでした。ではこちらは英雄様のお店なのですか?」


「いえ、ここは私と妹のお店なんです。(この人達旅人の格好してるけど言葉の端々が貴族ぽいな。でもこの国の人じゃないよね?)」


「失礼しました。こんなにも美味しい方達がお店をされてるなんて思わなかったので(醤油と味噌は英雄様が知ってそうだな…会ってみたいが…)」


「XX…時間が」と短髪の男が丸眼鏡の言葉を遮る。


「ムッ…しかたない、今日は帰るとしよう。ソフィアさん、妹さん、今日はごちそうさまでした。本当に美味しかったです、また寄らせてもらいます」


丸眼鏡の男はソフィアとの会話を諦め、二人はまんぷく亭を後にした。







まんぷく亭から離れ、裏路地に入りこむと二人は辺りをキョロキョロと見回し人気がないことを確認する。


「おい、醤油と味噌だぞ!何十年ぶりだよ。絶対に手に入れたい!!あぁ牛丼食べたいー」


「もちろんだ!カギは英雄様達だ、絶対に会って醤油と味噌のことを聞くんだ、そしてラーメンを再現するぞっ。醤油の焦げた香ばしい香りの炒飯もなっ」


「ただ英雄様とどうやって会えるか…だな」


「なかなか難しいな」


「う〜ん…ってか俺達が醤油と味噌を手に入れてもラーメンは無理だと思うぞ」


「あっ、やっぱりそう思う?ラーメンの再現は無理かな〜パンケーキ再現出来たのが奇跡だよな」


「パンケーキは死ぬ前にテレビで作り方をたまたま見たのが記憶に残ってたから再現できたけど、他の料理はからっきしだからな」


「俺も料理なんてしたことないからな〜。基本コンビニ弁当だったわ」


「ブラック企業だったからな、まさか俺ら同時期にぽっくり逝って同じ場所に転生するとは思わなかったな」


「とりあえず前世の美味い食事をできる限り再現したいな」


「そうだな、頑張るぞ!」


「「おー!!」」










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ