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第96話

予定より人が集まってしまった為、応接室へと移動した。


そしてアルセニオ達はガルシア王から改めてソフィアとルイスが何故予定より早く籍を入れる事になったのかの説明を受けた。


「…と言う訳だ。同意してくれるだろ、アルセニオ」


「ああ、ようやく冷静になれた。

教会自体は悪くないのだが、キューちゃん……白い狐の存在を知ればその主であるソフィアを聖女に担ぎ上げるだろう。

聖女に成れば教会から滅多に表に出れず、結婚もできない」


「あぁ」


「聖女は未婚の女性と決まっているから結婚していれば教会もソフィアを聖女にしようとはしないはず」


「そうだ、だから式を挙げるのを待たずに籍だけでも入れてしまおうと言うわけだ。

それに、聖女にするのが無理だとしても教会は神の使いである白い狐を欲しがる可能性が高い。その時ソフィアが貴族夫人であれば王である私が守ってやりやすい」


「そうか……そうだな。

ソフィアの安全第一だもんな。

ブラウリオ、ソフィアの為にも頼む。この場で婚姻を受理してくれ」


「あぁ、任せろ」


ガルシア王は胸を張りドンと拳で胸を叩いた。


ソフィアはアルセニオとガルシア王の会話を聞いて、反対されなくて良かったと安堵する。


エレノア王妃を始めとした皆も驚きはあったものの、ソフィアを教会から守る為ならと早まった婚姻に納得するしかなかった。


王族、リカルド、ソフィアの両親とレティシア、レティシアの婚約者のロベルトの前でルイスとソフィアは婚姻届にサインをし、誓いの口づけをすると一斉に拍手され、二人は次から次へと祝辞を述べられたのだった。


「おめでとうソフィア、グラシア伯爵、二人で幸せにね」


「「はい、ありがとうございます」」


姉の様に慕うセラフィナ王太子妃に抱きつかれたソフィアは感極まりポロリと一筋の涙を零した。


「あらあらソフィア」


「ごめんなさい、私嬉しくて」


「本番では笑顔でね、ソフィアのウェディングドレス姿楽しみにしてるわね」


セラフィナが涙をハンカチでそっと拭うとソフィアは笑顔で返事を返した。


「ありがとうございます、セラお姉様」


「ふふ、ソフィアは笑顔が一番綺麗ね」


「も、もう揶揄わないで下さい」



皆が和気あいあいと会話をしている中、ガルシア王が大きな声を発した。


「では行ってくる」


ガルシア王は婚姻届を取りに来る従者を待ってられないとばかりに自ら婚姻届を片手に持ち走って部屋を出て行ってしまった。


ソフィアは自分の為に走って行ってしまったガルシア王へ感謝で心が一杯になった。


半刻も経たずにガルシア王が息を切らして部屋へと戻ってきた。


ガルシア王は満身の笑みを浮かべる

「ソフィアとグラシア伯爵との婚姻は無事に受理された、これで二人は今日から夫婦だ。

改めておめでとう。グラシア伯爵、ソフィア」


「「ありがとうございます」」


ガルシア王のおかげで早く願いが叶ったソフィアにとって忘れられない大切な記念日になったのだった。


「だけど!!!!二人で住むのは式を挙げてからだからね!!それまでは絶対にノー!!」


「もう、お父さんたら」 









戦争の処理が粗方済み、ルイスがようやく休みが取れた日の午後、ルイスとソフィア、ソフィアの母ヴァレンティナとレティシアはルナ・ルースの店に来店していた。


高級感溢れる扉を開くと数人の従業員と中央に立つオレンジレッドの長髪の美人が深々と腰を折り四人に挨拶をしてきた。


「いらっしゃいませ、ルナ・ルースのお店にようこそおいでくださいました。グラシア侯爵様、ソフィア様ご婚約おめでとうございます。ヴァレンティナ様、レティシア様お久しぶりでございます」


「あ、ああ…(あれ?ゴンサロ今何て言った?)」


いつもと違ったルナ・ルースの対応にルイスは戸惑うのだが、理由を聞こうにも側に義母がいるのでいつものようには話しかけられず、もやもやしたまま応接室へと向かった。



応接室に入り、全員がソファーに座るとルナ・ルースが口を開く。


「本日は、どの様なお召し物をお考えですか?」


「今日はソフィアちゃんの婚礼のドレスと私とレティシアの参列するドレスをお願いしたいの」


ヴァレンティの言葉にルナ・ルースは良い笑顔で頷き、これからの予定を告げる。


「かしこまりました。では採寸を済ませて頂いた後、ドレスのデザインと生地をご相談させて頂きます。

申し訳ございませんが採寸は別室にて女性スタッフいたしますので、移動をお願いいたします」


「えぇ」「はい」「はーい」


「ルイス行ってきますね」


「ああ」


ソフィアは嬉しそうに笑顔でルイスに小さく手を振った。


ルイスはそれに応えるように恥ずかしそうに手を振り返した。


ヴァレンティナとソフィアとレティシアは女性スタッフに案内され応接室から退室して行った。




一人残されたルイスはルナ・ルースに先程思った疑問を聞くことにした。


「なあルナ・ルース、なんで俺が侯爵になったこと知っているんだ?まだ一部の人しか知らないはずなんだが?」


「ふふっ、先程オルティス様が来店されてたの。あの方からルイスの事を聞いたのよ。あの方も昔から変わらずイケメンよねーお優しい所も変わらないわー」


「お前、オルティス殿と知り合いだったのか?」


「ええ、騎士の学校の時に知り合ったのぉ。私って1年生の時は皆より丸かったじゃない、それでクラスの一部の人達からいろいろと揶揄われていて、廊下の隅で囲まれてる所に当時副生徒会長のオルティス様が通りかかってね、その人達から庇って頂いたのよぉー」


「そんなことがあったのか…。そういえば初めは多少丸かった気がするが、数カ月であっという間に筋肉ムキムキになったよな」


「いや〜ん、もうその姿は忘れてよぉー」


(いや、それは無理だろう、俺よりごっつかったのに…あの姿は一生忘れないと思うぞ)

ルイスは言いそうになったが言葉を飲み込んだ。



「ルイス、改めて言わせて。叙爵おめでとう、これからはグラシア侯爵ね。ソフィアちゃんとの結婚式は春なんでしょ、おめでたいことが続いて私も嬉しいわ、私も式に呼んでくれるでしょ?」


「ああ、もちろんだ。ただ…ドレス姿で来てもいいがほどほどにな…」


「はーい、気をつけるわ〜」



二人が雑談に花を咲かせていると採寸を済ませた三人が応接室に戻ってきた。


「おかえりなさいませ、では休憩を挟んでドレスのデザインと生地を決めさせて頂きたいと思います。ドレスを決めてから生地を選びますか?生地を選んでからイメージを膨らませてドレスの型を決めますか?」


ソフィアがルナ・ルースの提案に悩んでいると隣のソファーに座っていたレティシアが挙手をした。


「はい、はーい!ルナ・ルースさん私、お姉ちゃんのドレスに合いそうな生地を持ってきたんです、見てもらってもいいですか?」


そう言いながらレティシアはインベントリからドサドサっと白い生地を取り出した。


「えっ?あっ…あらっ、これってもしかして幻の…」


「クリスタルタランティスの糸で織った生地です、お姉ちゃんの結婚式のドレスに使って欲しくて持ってきました」


ルナ・ルースが慌てふためき、目を見開き固まったのも無理はない。

レティシアが出したこの幻の生地はどんな生地よりも美しく輝き、肌触りもしなやかで、ごくまれにしか市場に出回らないものだ。

もし出回ったとしても各国の王侯貴族がそごって金を出すので民間人は見る事すら叶わない品である。

そんな生地が目の前にドサドサと積まれた状態に思わずルナ・ルースは固まった後、思いっきり頬をつねった。


「痛っ!!?ゆ、夢じゃない!?。レ、レティシアちゃんこれってどうやって手に入れたの!!!!?」


「これですか?これは私の従魔契約したクリスタルタランティスのキラリちゃんが作ってくれました」


「…………レティシアちゃん、クリスタルタランティスを従魔にしたの?」


「はい、もーすっごく可愛いんです。私の作ったお菓子が大好きで…あっ、これもー」


レティシアは思い出し、再びインベントリから生地を取り出した。


「これは食べられる青い花を入れたお菓子を食べさせてあげたら次の日から青い生地が出来上がってきて、びっくりしました」


「クリスタルタランティスの青い生地なんて見たことも聞いたこともないわ…染めにくいって聞いたことあったけどそうやって色をつけるのね…なんだかいろいろと驚きすぎて目眩がするわ」


「えへへっ。ルナ・ルースさん、お姉ちゃんのウェディングドレスはお姉ちゃんの希望なので白でお願いします。私はこの青で作って下さい」


「かしこまりました。ではヴァレンティナ様のドレスの生地はいかがいたしましょうか?」


レティシアの隣でヴァレンティナは少し拗ねている。


「レティちゃん、ママのは?」


「あっ、ごめんねっ。ママに好きな色を聞き忘れてたからまだ作ってないの。帰ったら直ぐにキラリちゃんに作ってもらうね」


やばい忘れてたとレティシアは内心思いながら冷や汗をかいて言い訳を述べる。


「そうなのね。良かった、楽しみにしてるわ」


「ママは何色が良い?」


「そうね…私は濃いめのローズピンクが良いかしら」


「了解でーす、じゃあ帰りに薔薇を買って帰ろうね」


「あら、買わなくてもいいわ。後でお城に行ってエレノアから貰ってくるから」


「エリーおば様の薔薇園綺麗だから良いの有りそうだよね」


「エレノアに薔薇の使い道聞かれそうだけど、この生地のこと話しても良いかしら?」


「良いよー、なんならエリーおば様やセラお姉様、シャロちゃんの生地も作って貰えるようにキラリちゃんにお願いしてみる」


「OK!皆に欲しい色聞いてくるわ、それにあった花も貰ってくるわね」


「りょ〜かい。キラリちゃんに作って貰えるように美味しいお菓子沢山作らないと!」


「それなら、私も手伝うわ」


「お母さんありがとう!」


ソフィアはレティシアが用意してくれたクリスタルタランティスの生地を撫でては目をキラキラ輝かせ、ドレスのデザイン画を嬉しそうに交互に見ている。


「レティが用意してくれた生地で作られたウェディングドレスを着て結婚式が挙げられるなんて……嬉しいわ」


そんなソフィアを見て、ルイスは春の挙式を想像していた。


(ソフィアのウェディングドレス姿か…とても綺麗だろうな…あぁ、他の男に見せたくない……)


ルイスが想像し終わり、気づいた時には親子三人のドレスの型は決まってしまっていた。

ルナ・ルースからソフィアのドレス姿は当日までのお楽しみと言われ、ルイスは肩をがっくり落としたのだった。





     












✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻





1週間後、レティシアはルナ・ルースのお店を訪れていた。


「あら〜、レティシアちゃん!いらっしゃ〜い」


「ルナ・ルースさん、こんにちはー。あっ、口調が元に戻ってる、この前お店に来た時いつもと違うから不思議に思ってたんです」


「先日はヴァレンティナ様がいらしたから〜、こんな私でもヴァレンティナ様の前では緊張するのよっ」


「えっ、そうなんですか?」


「そうよ〜、ヴァレンティナ様は私の憧れの女性No.Ⅰなんですもの〜♡」


「そうなんですね、それを知ったら母は喜ぶと思います。あっ、母のドレスの生地持ってきました、これでお願いします」


「まぁ〜これも綺麗ねぇ。ねぇねぇレティシアちゃんお願いがあるんだけど〜」


「?」


「クリスタルタランティスの生地、余ったら譲って欲しいのよ〜」


「良いですよ、でも足りますか?」


「ありがと〜レティシアちゃん、嬉しいわ〜」


「足りなかったら言って下さいね」


「も〜レティシアちゃんたら優しいんだからっ、惚れちゃうわっ」


「私には愛するロベルトさんがいるので遠慮しまーす」


「もうっ、冗談よ〜」


「あはは、ルナ・ルースさんたらー」








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