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第93話

ガルシア王に促され、ソフィアはルイスに付き添ってもらい部屋へと戻ることになった。


部屋に入り、ソフィアがソファに座ろうとした時、ルイスはソフィアを引き寄せ膝に乗せて包み込む様に抱きしめた。


「あっ」


「暫くこのままで…ソフィアの温もりを感じさせて欲しい」


「……ルイス」


少し落ち着いたのかルイスは顔を上げ大きく息を吐いた。


「……ソフィア、ありがとう。

貴女が来てくれなかったら俺もオルティス殿も生きては帰れなかっただろう。

ソフィアを抱きしめて、無事に帰って来れたと実感がわいてきた」


ルイスは抱きしめたソフィアへの腕に力が入る。


「ルイス、おかえりなさい。貴方が無事で本当に良かった」


「ああ、ただいま」


ソフィアはルイスの胸に頬を寄せ、ルイスの温もりと微かに聞こえる鼓動を感じていた。


「ソフィア、口づけても良いだろうか?」


ルイスは抱きしめていた腕を解き、ソフィアの顎を武骨な指で優しく持ち上げる。


「うん、いっぱいして」


「ソフィア」


「っ、ん…」


ルイスの顔が近づきソフィアは目を閉じて受け入れると柔らかいが少し乾いた唇が重ねられた。

徐々に深くなっていく口づけに、ソフィアは縋り付くようにルイスの背に腕を回した。


「っ…」


「すまない、歯止めがかからなかった」


「もう!」


ソフィアは再びルイスの胸にもたれかかり、ルイスの大胸筋に手を添えた。


「早くルイスのお嫁さんになりたいわ」


「ああ、春になるのが待ち遠しいな」


「春まで長く感じるわね」


「結婚式までいろいろすることがあると聞いている、忙しくてあっという間に春になるだろう」


「準備!貴族の結婚ってやることいっぱいで大変そうね」


「ソフィアなら大丈夫だろう。まずは次の休みにソフィアのウェディングドレスを作る為にルナ・ルースの店へ行くとしよう」


「はい。ふふっ、今から楽しみ」


「二人だけで行くのも良いが、俺にはわからないこともあるだろう、ヴァレンティナ様に一緒に行ってもらった方が良いと思うのだがどうだ?」


「ええ、そうね。母にも来てもらった方が良いかも、私だけじゃドレスの型を選ぶだけで1日終わりそう」


「俺だと、ソフィアならどれも似合うと言って余計に悩ませてしまうだろうしな」


柔らかなソフィアの髪を優しく梳きながらルイスは色々なウェディングドレスを身にまとい微笑む彼女を想像し、きっと自分では決めきれないと確信した。


「じゃあ後で母に頼んでみますね」


「ああ、頼んだ」


ソフィアとルイスは軽く口づけを交わした後、お互いの温もりを感じながら抱きしめあった。

ソフィアは安心したのか、いつの間にかルイスの腕の中ですやすやと寝息をたてて眠ってしまった。


ルイスはそっと自分からソフィアを離すと、ソフィアをベッドへ移動させ「おやすみソフィア」と言いソフィアの頬に口づけ、ルイスは部屋を後にした。







ソフィアが眠りについた頃、王城に帰ってきた竜騎士達が訓練場に集まり片付けをしていた。

その中にはロベルトと青い竜のラピスの姿があった。


「ラピス、お疲れさまです。疲れたでしょう、片付けが終わったら直ぐにマッサージしてあげますね」


「ギャウー」


いつもは大人しいラピスが何やらそわそわと空を見上げていたのでロベルトも空を見上げると一体の見慣れぬ竜がこちらに向かって下降してきた。


「ベリー?いや違う…別の竜のようですね」


ベリーよりも濃い色のピンクの竜に一瞬警戒したが、それ以上に竜の背中から降りる人影にロベルトは驚き目を見開いた。


「あれはレティ!?何故!!?」


ロベルトがレティシアに駆け寄ろうとするが、それより先に隣で大人しくしていたラピスが突然濃いピンク色の竜へ向かって突進しだした。


「ラピス!?」


「ギャウー」


地鳴りと共にラピスが突進してきた事にレティシアは驚いたが、ローズはラピスを見るなりローズもラピスへと走り出した。


「えっ?ローズちゃん!?」


ラピスとローズは近づくとお互い体を揺らしあい「キュルルー」「キュルルー」と求愛行動をとり始める。


擦り擦りと愛おしそうに頬を寄せ、二人(二体)の世界に入っていた。

地鳴りに驚いて集まってきた騎士達だったが、竜騎士以外の騎士達は目の前で何が起きているのかわからず固まっていた。


レティシアは微笑ましく二体を見守っていた。


「レティ!」


「あっ、ロベルトさん!おかえりなさーい、早かったですね」


「ああ、ただいま。ところでレティ、この状況はもしかして」


「うん、これは竜の求愛行動です!前にベリーちゃんとアンデがしてましたもんね」


「やはりそうですよね、ラピスにも番が出来ましたね」


ロベルトはラピスに番ができた事を驚きながらも喜んだ。

だがこの番の竜はいったい何処から来たのだろうとロベルトが不思議に思って二体を見ていた。

その隣ではレティシアが満面の笑みで拍手しながら喜んでいた。


「良かったね〜、ラピス、ローズちゃん」


「ローズちゃん?」


「あっ、うん、この竜はローズちゃん。私の新しい従魔で、ベリーちゃんの妹ちゃんです!ベリーちゃんとお姉ちゃんが北の森から帰ってくる時付いてきちゃったんですよ。ローズちゃんが私と従魔契約したいって言うから契約したの」


「……」


ロベルトは驚く事が多すぎて何も言えなくなってしまった。


「あっ、そうだ、お姉ちゃんにローズちゃんがラピスと番になったこと言わなくちゃ、あとリオ叔父様にも!」


「私もアルバ隊長に報告しなければいけませんね。

昼過ぎにアルバ隊長が王へ今回の戦争の件を報告すると仰っていたので、それが終わりしだい竜たちの事を伝えに行きましょう」


「うん。みんな驚くかな?」


「そうですね、きっと驚きますよ」


腰を抜かさないか心配だと、ロベルトは心の中で呟く。




ロベルトとレティシアはとりあえずラピスとローズを竜舎へと連れて行き、二人は昼食を取りに食堂へと向かった。

昼時だというのに二人が歩く廊下は誰もいなくて静かだ。


「レティ、さっきローズから降りてくる姿を見たのですが、まさか鞍も着けずにローズに乗って空を飛んだのですか?」


「うん」


何か問題があるの?と言うようにレティシアはこてんと首を傾けた。

レティシアの返事にロベルトは大きくため息をついた。


「レティ…お願いだから無茶しないで下さい。いくらレティの運動神経が良くても万が一のことがあったら…。

乗るなとは言わないので、せめて鞍を着けて安全帯を着けてからにして欲しいです」


「そんなに心配しなくても…」


落ちても風魔法で衝撃を和らげるから死にはしないとレティシアは言おうとしたが、ロベルトの表情が真剣だったので慌てて口を紡いだが時すでに遅し。


レティシアはロベルトに廊下の柱の影に隠れるように腕を引き寄せられ、彼の暖かな胸の中に抱き締められた。


「ロ、ロベルトさん!?」


「しっ…静かにしないと人が来てしまいますよ」


突然抱き締められた恥ずかしさでジタバタと慌てるレティシアにロベルトは逃さないとばかりに深い口づけを落とす。


「っん、どうして、ねぇっ…ふぅ、ん…」


「レティ、私の為にもお願い聞いてくれますよね?」


懇願しているようで、『はい』以外の返事は聞かないとばかりにロベルトはレティシアの唇を優しく食んだ。


「ふっ…───んんっ!」


レティシアはロベルトから与えられる口づけに翻弄されて息が上がり、呼吸をする為に開けた口は口づけを深くする要因にしかならなかった。


後頭部と腰に回されたロベルトの腕の力はいつも以上に強く、レティシアは身動きが一切取れない。


「ロベ…ル…んっ」


「ね、レティ。お願いを聞いてくれないと、私は不安でレティの側から片時も離れそうにありません」


「わ、かった…から。だから、ねぇ…許してぇ」


「駄目です。レティが私の心配を分かってくれるまで、ね」


意地悪な黒い笑みを浮かべたロベルトは目に涙を溜めて許しをこうレティシアの柔らかい唇にまた齧りついた。


この後もロベルトの気が済むまで貪られたレティシアは腰が抜け、食堂へ行くことを諦めてロベルトにお姫様抱っこされ部屋へと戻ることになったのだった。










後日。


「ロベルトさんは怒らせては駄目って分かったよ」


涙目で顔を真っ赤にしたレティシアがシャルロットのお茶会でそう愚痴ったそうだ。


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