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パートナーX  作者: 蓮浦 氷華
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現実

比較的静かだが、微かに物音がする。

私の頬に誰かの手が触れる。

温かい。

思考が少しずつ戻ってくる。

何か夢を見ていた気がするが深くは思い出せない。

一体どんな夢だったのだろうか。

そうだ、そろそろ起きないと学校が……。

「おはよう」

だ、誰……?

目を覚まして真っ先に目があったのは見知らぬ人だというのだから、驚くしかない。

スラリとした身体と、ショートカットヘアーの似合う人。

だが、私にはこの人には心当たりがない。

「ど、どちら様ですか?」

「戸張 唯衣です。よろしく」

「よ、よろしくお願いいたします」

ほ、ホントに誰……?

「なんかピンと来てないって、顔してるね」

図星……。

「図星だって、顔に変わった」

エ、エスパーかな……?

「エスパーじゃないよ。そんな特殊能力は持ち合わせてないなぁ」

「思考でも読めるんですか……?」

「読めるのかも。凄いでしょ、私」

ニヤニヤと笑う彼女の姿を見つめる。

しかし、その真意は依然として不明のままだ。

「そうだ、まださっきのこと謝ってなかったね」

そう言った途端、彼女は急に姿勢を正した。

「本当に、ごめんなさい。あまりにもデリカシーに欠ける行動だったと反省してる。本当に、ごめんなさい……」

と、突然の謝罪に驚きが隠せなかった。

だが、同時に先程までの記憶が甦ってきた。

自らの最大級の秘密を解き明かされたこと。

そしてそれは、私達にとっての全てを賭しての秘密であるということ。

「……。反省、してるんですよね?」

「はい。本当に、反省しています」

……。

例え、反省していようが、いまいが、最大級の秘密を解き明かされたことには変わらない。

だけど……なんか前と雰囲気が違う気がするのは何故だろう……。

「なら、この事は、絶対に秘密にしてくれると、約束してくれますか」

「はい」

「……。分かりました」

ここで、強気に出て暴露されるリスクを負うより、この選択の方がリスクを減らせるかもしれない。

そして、この話を長く続ければ続けるほど、私の立場は悪くなってしまう可能性がある。

彼女に、『秘密』という切り札がある以上、私の立場はこれ以上に上げようがない。

「この話は、ここで終わりにしましょう」

彼女は少し目を見開いた。

私の反応が、想定外だったのかも知れない。

「あと……ここ、どこですか?」

「……今言うの、それ……」

「えへへ……」

他のことばかり考えて、肝心なここがどこかは、さっぱり考えていなかった。

「ここは、私の部屋」

「……。戸張さんの部屋ですか?」

「そうだけど……?」

「ということは、ここは私の家の隣ですか?」

「そうなるね」

案外近いとこで安心した。

もし遠いところだったらどうしようか、とヒヤヒヤした。

今日って……!

あっ、土曜日か。

学校が休みの日であることを思い出し安堵する。

しかし次の瞬間、この部屋に対する違和感がハッキリとした。

時計がない。

そして、カレンダーの類いもない。

携帯がその機能を果たすため、彼女には必要ないのかも知れない。

「あの……」

「あっ、はい。何ですか」

思考の海から引きずり出される形で、意識が目の前に持ってこられる。

「もう、八時なんですけど……そろそろ家に送り届けないと問題だと思って……。」

「もしかして、午後の?」

「午後八時です」

カーテンが締まっているのも、部屋が若干暗かったのも、時間が遅かったからなのか。

「大丈夫ですよ。隣ですし」

「親御さんへの説明とか……」

「帰って来てませんし」

私が中学二年生となってから、帰ってくる回数はめっきりと減った。

感覚的には、三日に一回だったのが、一週間から二週間に一回になった。

「そ、それは重ね重ね失礼しました」

彼女は縮こまり頭を下げる。

「いえ。事実なので。特に困ることも……いや、食事には困りますけど……」

たまに、人知れず帰ってきては、お金を置いて、また知らぬ間にどこかへ行ってしまう。

問題なのが、食費だとしても、一日二食分しか買えないことなのだが。

「食事?」

しまった!

余計なことを言ってしまったかも知れない。

「一日三食食べてる……?」

「二食です……」

「あの……食べていきませんか?食事、作りますから」

……。

食欲か、警戒心か……。

「頂きます……」

理性より食欲の方が勝った瞬間だった。

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