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パートナーX  作者: 蓮浦 氷華
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パートナーX

時は過ぎて、私も高校二年生になった。

志望していた新里大付属に入学し、一年が経った。

私は、特待生制度の学費免除のお陰でなんとか持っているという感じだ。

大きく変わったことがあるとするならば……。



「あの……大事な話って」

今朝、戸張さんに大事な話があるから、と言われて身構えてからおよそ半日後のことだった。

最近バタバタしていたし、それがなにか関係しているのかもしれない。

背筋をピンと伸ばし、気を張る。

「ああ。そんなに緊張しなくてもいいよ。別に追い出したりはしないから」

「そうですか。安心しました」

ホッと胸を撫で下ろす。

「安心したところで、本題に移ろうと思うけど良い?」

「はい、どうぞ」

追い出されるという話でないならば、一体大事な話とは……?

想像のつかない結末を予想し続ける。

「私はね、今日は女性なんだ」

「……?そうなんですか?」

唐突な話に、ピンと来ない私を見かねた戸張さんは話を続けた。

「ああ。でも、明日は男性かも知れない。もしかしたら、それは一時間後かも知れないし、一週間後から知れない」

「えっと……つまり……?」

話の展開が急で、全体像が掴めないでいると、戸張さんは結論を出した。

「つまり、私はね『Xジェンダー』と呼ばれる内の不定性という分類に一番近い性自認ということを話しておこうと思って」

「なるほど……。不定性って言うのは……どんなことですか?」

「日によって、自分がどんな性自認を持つか、というのが揺れ動くことね」

「なるほど……。あっ!だから……」

ようやく分かった。

今までの疑問が解けた気がした。

「だから、語尾が日によって違ったり、抑揚も変化し続けているんですね」

「……!よく気付いたね」

「戸張さんの教えの成果ですよ」

「確かに、昔したアドバイスにそう言ったことがあったね」

「日々成長です!」

「そう。それは良かった。それで、話を戻すけど……私としても日によって、声を変えたり、化粧や服装を変えたりすることでバランスを取ってたという訳」

「確かに、服装は傾向が違うものが多く揃ってますからね。クローゼットを見せて貰った時の服の数に驚いたことは忘れませんよ」

「まぁ、確かに。部屋の大半をクローゼットが占めているという空間だからね、ここは。さて、ここで君に一つ聞いたみたいことがあるんだ。私についてどう思う?」

「どう?というと……全体的にですか?」

「そう。全体的に見て」

「そうですね……。まず、驚くほどお人好しで、豪胆なように見えて繊細で、面倒見がよくて、私にとっては恩人のような人です」

「そ、そう」

顔を真っ赤にして俯く戸張さんの姿は、新鮮でもしかすると初めて見たかもしれない。

「わ、私の『個性』について、なにか思うところってある?」

戸張さんの質問は、最後の方は声が小さくなっていた。

「私達が持ってる個性って、その実自分達ですらその全てを解き明かせてないと思うんです。だから、私は……戸張唯衣さんという人をもっと知りたいと思います」

「……!」

「個性にもたくさんあって、性格も、人格も、性別も、その全てが複雑に絡み合ってその人と個性を作り上げているんだと思うんです。だから、私達は複雑なまでに優れていて、他人の優れている所に嫉妬するんだと思うんですよ」

例えば、性格。

例えば、人格。

例えば、性別。

みんなどこかしら違っていて、決して二つで分けられるようなものではないということは、最近になって少しずつ知れ渡って来ているが、制度も、人も変わらない。

過去のものに依存し続けていると言うよりも、他人の良さを理解する以前に、認めることが出来ないことが大きいのかもしれない。

理解までいかずとも、認めてくれるだけでどれだけ救われるかは、私もよく知っている。

目の前にいる人のお陰で。

「そうか……。良かった。私が出会えたのがあなたで良かった」

号泣した戸張さんの涙を拭っていると、涙声で戸張さんは告げた。

「あなたさえ良ければ、私を保護者にして貰えませんか」

「えっ……?それってどういう……」

「この前、あなたの親に会ってきてね。あなたの成長する姿をこれ以上見届ける気がないのなら、私に見届けさせてくれませんか?ってお願いしてきたの」

「そ、それで……」

「うん。許可して貰って、最近はその手続きを済ませてた訳。最後はあなたの気持ち次第だから、それを聞いておこうと思って……」

「私を……。私の方こそ、末長くよろしくお願いいたします」

「私の方こそ、末長くよろしくお願いいたします」

人生のパートナーとは、結婚相手だけとは限らないのだと、改めて実感した一日だった。

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