秘密
衝撃の事実が発覚した翌日、私は彼のもとへ向かった。
「蓮見君、今日の放課後、時間ある?」
「今日?部活があるけど……大事な話なら休んでくるが」
その表情からは困惑が伺える。
「とても大事な話。私にとっても……蓮見君にとっても」
彼も私の雰囲気を悟ったのか、彼も静かに頷いた。
二人は沈黙を保ったまま、家に向かった。
かつては蓮見君が住んでいた場所、今は私が住んでいる場所へ。
「大事な話って、なんだ」
「君の……産みの親で、今は私の親のこと」
その言葉を聞いた瞬間に、彼の顔つきが変わった。
「それが……どうかしたのか」
その表情は、どこか覚悟をしているように見えた。
「居なくなったの。一ヶ月前から」
「居なくなったのか……。なら、生活は?食事は?提出書類なんかは……、どうしていたんだ」
彼の表情からは、大きな動揺は見えなかった。
まるで……想定していたかのように。
「生活は……まぁ、見ての通り自分でやってたこともあるからなんとかなったよ。最初は失敗だらけだったんだけどね。提出書類とかは、自分で書いてた。筆跡の癖をわざと変えて、印鑑は自分で押してたよ」
「……食事は?」
「それは……」
「まさか……ほとんど食べてないのか!」
半ば涙目で、私の肩を掴む彼の形相は、今まで見ていた彼の姿からは想像がつかなかった。
ゆったりと彼の手を振りほどいた後、私は今までの経緯を語った。
最初の内は、二・三日に一回帰ってくる程度で、食事代も無い訳ではなかったこと。
次第に帰ってくる頻度は下がり、次第に食費も減っていたこと。
そして、つい先月。
なんの音沙汰もなく、姿を消してしまったこと。
私に残されたのは、私に関するものだけで、親に関する書類や証明書、通帳なども残されていなかったこと。
「……。じゃあ……食事は摂っていなかったのか?」
「ううん。その……」
彼が息を飲む音が聞こえる。
「食べさせて貰ってました……」
思わず敬語になった上に、最後の部分はか細く今にも消えてしまいそうな声だった。
「だ、誰に……?」
彼の声も震えていて、その声に滲んでいる感情は複雑で読み取れそうにない。
「隣の人」
彼は怪訝そうな顔をして、私に聞いた。
「本当に……?冗談じゃなくて……?」
「うん」
「そうか、本当に迷惑をかけた」
「えっ?いや、君はなにも……」
「幼い時に交わしたあの約束。君は後悔していないか?」
「……」
「俺は……。本当に、最初の頃は本気で考えていたんだ。最初の頃『は』な……」
そうして、彼の静かな懺悔が始まった。




