#陰盲創作120分一本勝負
心緒より、フィデニュイで髪の話。本編とは繋がってるようで繋がってない。#陰盲創作120分一本勝負より、お題:髪。主催者様:陰盲創作120分一本勝負(@inm2art)。
ああ、なんてことを。ニュイは思わずそう叫んでしまった。
フィデーリタースの、長く綺麗な銀髪が切られてしまった。首元から、ばっさりと切られてしまい、顔には傷ができている。
この髪は、ニュイが手入れをするように命じていた。綺麗な髪だった。黒いだけの自分の髪とは違い、日に当たると光を発して、誰もがフィデーリタースの髪を見ると息を呑んだ。そのくらい、綺麗な髪だった。それなのに、その面影もなく、銀髪はフィデーリタース自身の血と、埃で汚れてしまっている。
「なんで俺を庇った? 庇うなと言っただろう」
フィデーリタースは何も言わない。ただ黙って、ニュイの目を見つめている。
フィデーリタースの髪の毛を切ったのはグレーゼだ。グレーゼはもともとニュイに対して暴力を振るうつもりだった。だが、フィデーリタースが割って入り、ニュイを庇った。グレーゼは標的を変えた。自分が見下し、差別する人種であるフィデーリタースのことを、グレーゼはニュイに与えた暴力以上のものを与えた。ニュイは泣き叫んだ。フィデーリタースのことを何よりも大切にしていることを知った上で、グレーゼは顔を傷つけ、髪の毛を切り裂いた。
やめてくれ、ニュイがそう叫ぶとグレーゼは喜び、在らん限りの暴力をフィデーリタースに加えた。
解放されたのはついさっき。ニュイが泣くだけになったのがつまらなかったようで、フィデーリタースの頭を踏みつけ、煙草の火を押し付けると地下室から出ていった。
「……申し訳ありません」
この国に戻ってきてから、フィデーリタースが変わってしまった気がする。前みたいに、命令を遵守せず、まるで感情が芽生え、自らの意思で行動を取り始めた気がする。
「……もう二度と勝手な真似をしないでくれ。お前が傷つくのは見たくないんだ」
自分のせいで誰かが傷つく。もう、そんなことは起こってほしくない。
「……わかりました」
フィデーリタースは、静かにそう言った。




