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小噺詰め合わせ  作者: 宮田カヨ
9/21

#陰盲創作120分一本勝負

心緒より、フィデニュイで髪の話。本編とは繋がってるようで繋がってない。#陰盲創作120分一本勝負より、お題:髪。主催者様:陰盲創作120分一本勝負(@inm2art)。

 ああ、なんてことを。ニュイは思わずそう叫んでしまった。

 フィデーリタースの、長く綺麗な銀髪が切られてしまった。首元から、ばっさりと切られてしまい、顔には傷ができている。

 この髪は、ニュイが手入れをするように命じていた。綺麗な髪だった。黒いだけの自分の髪とは違い、日に当たると光を発して、誰もがフィデーリタースの髪を見ると息を呑んだ。そのくらい、綺麗な髪だった。それなのに、その面影もなく、銀髪はフィデーリタース自身の血と、埃で汚れてしまっている。

「なんで俺を庇った? 庇うなと言っただろう」

 フィデーリタースは何も言わない。ただ黙って、ニュイの目を見つめている。

 フィデーリタースの髪の毛を切ったのはグレーゼだ。グレーゼはもともとニュイに対して暴力を振るうつもりだった。だが、フィデーリタースが割って入り、ニュイを庇った。グレーゼは標的を変えた。自分が見下し、差別する人種であるフィデーリタースのことを、グレーゼはニュイに与えた暴力以上のものを与えた。ニュイは泣き叫んだ。フィデーリタースのことを何よりも大切にしていることを知った上で、グレーゼは顔を傷つけ、髪の毛を切り裂いた。

 やめてくれ、ニュイがそう叫ぶとグレーゼは喜び、在らん限りの暴力をフィデーリタースに加えた。

 解放されたのはついさっき。ニュイが泣くだけになったのがつまらなかったようで、フィデーリタースの頭を踏みつけ、煙草の火を押し付けると地下室から出ていった。

「……申し訳ありません」

 この国に戻ってきてから、フィデーリタースが変わってしまった気がする。前みたいに、命令を遵守せず、まるで感情が芽生え、自らの意思で行動を取り始めた気がする。

「……もう二度と勝手な真似をしないでくれ。お前が傷つくのは見たくないんだ」

 自分のせいで誰かが傷つく。もう、そんなことは起こってほしくない。

「……わかりました」

 フィデーリタースは、静かにそう言った。

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