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小噺詰め合わせ  作者: 宮田カヨ
12/21

ご飯(シュティイノ)

シュティレとイノセンスの話。後でpixivにも同じの投稿します。

「ほら、口開けて」

 少しだけオニオンスープを掬ったスプーンを口元まで持っていくと、イノセンスは小さく口を開けた。その口にスプーンをねじ込み、スープを流し込む。そうすると、イノセンスは嬉しそうに笑うのだ。

 自分で言うのもなんだけど、俺の飯絶対美味くないよ。シュティレは自分が作った料理をそう評価している。玉ねぎは炒めすぎたせいで所々焦げているし、鍋にくっついていたものだってある。スープは味が薄いのか濃いのかわからない。何度作ってもそうなってしまう。元は自分だけ食べていけたらいいと思って気にしていなかったが、イノセンスがいるとなると話が違う。それなりのものを食わせてやりたいし、何よりまずい飯を作る人間だと思われたくない。

 本を読んだり、ベレッタに教わったりしたのだが、どうも美味くできない。

 けれど、イノセンスは嬉しそうに食べるのだ。

「……どうしたの?」

 口を開けなくなった。腹が満たされるにはまだ食べていないのに、どこか具合でも悪いのだろうか。

「あ、う」

 目線の先には、切ったパンが置いてある。ああ、とシュティレはスプーンを置いてパンを取る。

「ほら」

 白い部分をちぎり、イノセンスの口まで持っていく。

 イノセンスは自分で食事をすることができない。一度、もう自分で食べられるだろうと一人でオニオンスープを食べさせようとしたとき、イノセンスは右手でスプーンを持って、左手をまだ熱いスープの中に突っ込もうとした。見ていたからよかったものの、もし気付くのが遅れていたら火傷していた。

「何してるの! 火傷するよ! スプーン使わなきゃダメでしょ!」

 手を掴み、叱責する。すると、イノセンスは声を抑えながら泣き出した。

失敗したら殴られ、蹴られる。泣いてもまた同じ。ついこの間まで声を出すこともせず、泣くのを我慢しながら震えていた。そう考えたら、泣いてくれるのは心を開いてくれている方なのだろうか。

「……ああもう、泣かないでよ」

 抱き締めて、イノセンスが落ち着くのを待つ。イノセンスはおずおずといった感じで、背に腕を回してくる。

 まだ自力で食べられないのは誤算だった。スプーンは持ちたがるくせに、食べるときは手で食べる。赤ん坊そのものだ。

 それから、イノセンスの食事はシュティレが行っている。食べる練習はさせているが、食べさせてもらいたいのか、口を開けて待っていることの方が多い。

「あ、ちょっと指まで食べないでよ」

 シュティレがそう言うと、イノセンスは嬉しそうに笑った。



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