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小噺詰め合わせ  作者: 宮田カヨ
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グレナトで暴力の話

心緒より、シュメル・グレーゼ×ナハト・ジェニングス。男リョナ注意。

 施設の地下には、コンクリートで四方が埋め尽くされた部屋がいくつもある。階級の低い者がストレスの吐口に非人を連れ込んで暴行するためにここを使用する、尋問官が捕虜や罪人を拷問するために使用する、監禁のために使用など、用途は様々だ。己は、その中のとある一室にいた。

 己がジェニングスの顔を殴りつけると、あいつの体は床に崩れ落ちた。ジェニングスは声を堪え、血だらけになりながらワラジムシのように丸くなって身を守り、己が満足するのを待っている。

 己はそれがつまらないと思った。あの時みたく、抵抗されている方が面白いし、何よりジェニングスの泣いている顔を見たかった。

 ジェニングスは今まで殴ってきた誰よりも、こいつが一番殴り甲斐のある奴だった。

 倒れているジェニングスの鳩尾向かってに爪先を練り込む。それには耐え切れなかったようだ。致命傷を負った蛙のような声をあげ、胃の中身を吐き出した。それは己のブーツにもかかった。血の混じったそれは、異様な匂いを発している。

「ジェニングス、そんなものを吐くな」

 己がそう言えば、ジェニングスは己を睨んだ。その目で射抜かれた瞬間、己は心臓が早鐘のように打つのを感じた。目には己への嫌悪と憎悪、一方的に暴力を振るわれていることへの屈辱感、どこに隠していたのか、涙が浮かんでいた。

 己はジェニングスの髪を掴む。

「泣け、ジェニングス」

 こいつが力で抵抗したら、きっと己は死ぬ。けれど、そうしないのはあの時の恐怖があるからだろう。己としては、あの時のように泣いて名前を呼んで欲しかった。

 口端と鼻から血を流して、頬と目元は己が殴ったせいで赤黒く腫れている。

 ジェニングスは目を閉じる。次に目を開けたとき、涙はどこかへと行ってしまった。

「……くたばれ、グレーゼ」

 それが、ジェニングスにできるであろう、小さな抵抗だった。

 頭を思い切りコンクリートの壁に叩きつけた。壁にはシミのように血がついている。ジェニングスの髪の隙間から、赤いものが垂れた。

「なんだ。頭が割れたのか」

 髪を離せば、力なくその場に倒れ込む。拍子に髪も何本か抜けたようだ。脳震盪でも起こしているのだろうか。意識はあるようだが、起き上がる気配がない。

「起きろ、己はまだ満足してない」

 ジェニングスの背を踏みつける。

 己は骨を痛めつける踏み方が一番好きだ。骨を踏みつけて砕く感触が、固まった砂利を潰すあの感覚に似ているからだ。

 ジェニングスは短く、汚い声をあげた。けれど、涙だけは決して流さなかった。

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