表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵は自分を探して旅をする  作者: 黒乃瀬 綾斗
1章 西の魔女編
13/25

12話

 その日、私は研究材料を集めるために少し遠出をしていたの。

 昼前には研究材料が十分に集まったんだけど、このまま帰るには早すぎて勿体ないと思った私は他にも研究に使える材料はないかを探すことにしたの。

 暫くして余りいい材料が見つからなかった私は家に帰ろうとしたのだけど、気が付いたら夕暮れ時を過ぎてたらしく、このまま家に帰るのは危ないことを考えて近くの街に1日泊まることにしたわ。

 少しして一番近い街に着いたのだけど、街の入口に着いた時、その街に血鬼病という病気が蔓延していたことに私は気づいたわ。


 血鬼病は体内の血液が魔素によって穢されていく病気で初期症状は軽い風邪だけなのだけど、症状がステージ2へ移行すると体の一部が腐ってアンデッドになる恐ろしい病気。

 1万人に1人の確率で掛かると言われているのだけれど、ノーマンにしか掛からないのと大半の人は初期症状の軽い風邪で治るため、あまり知られておらず薬も開発されていない病気よ。


 私が着いた時は住民全員がこの血鬼病に掛かっていた訳ではなくて、大半の人が健康状態、掛かっていたとしてもステージ1の人だけでステージ2の人は一人も居なかったわ。

 先に答えを言っとくと、君が居た街は住民全員が血鬼病のステージ2に掛かった街の成れの果て。そして、君の言ったマロンが吸血鬼になっていたのは血鬼病の中でも珍しいステージ3に進行していたのが原因ね。


 さて話を戻すけど、街についた私はまず何処まで血鬼病が進行しているか確かめることにしたの。

 別に助ける義理も無いし助ける為じゃないけど、流石に1万人に1人と言われている血鬼病に感染してる人が多すぎたから、なにか原因があるのかもと気になって調べ始めたの。


 まず私は調べるにあたって街のドップの町長が住む館を調べることにしたわ。街に関する情報なら大体は揃っているし、もしかしたら血鬼病に関わる何かを裏でしている可能性もあったからね。


 腐っていても私は魔女だから侵入自体は上手くいったわ。でも幾ら調べても血鬼病に関する情報は出てこなかった。だから私は、街の上層部が裏で血鬼病に関わる何かをしてるという事は無いと決めつけたの。

 町長の館を調べるのに1日を使った私は宿に泊まると、翌日は冒険者組合、翌々日は大きな商会と色々と調べたわ。


 調べ始めて5日たった頃、朝起きると通りで騒ぎが起きていることに気づいたわ。宿の主人に話を聞くと、どうやら街の上層部がアンデッドになったらしいの。真実を確かめるために私は急いで準備をするとその足で1日目に行った町長の館に向かったわ。


 館の門の前に居た門兵はアンデッドになっていたわ。音や匂いなどに敏感になっていることを考えて細心の注意を払いながら館の中へ侵入すると、町長の部屋へと向かったわ。

 町長の部屋の中は荒れ果てていて、誰かと揉み合った後のように見えたわ。だけど、部屋の中に町長は居なかった。私は町長の部屋を調べることにしたわ。


 部屋を調べると先日侵入した時には無かった資料を見つけたの。資料の名前は住民兵士化プロジェクト。数十ページにも渡る資料を一枚一枚捲って見ていくと、そこには血鬼病に関する情報とそれを使って住民を強化するための計画が書いてあったの。

 私はそれを見て、やられたと思うとともに町長は計画が失敗したために逃亡したものだと考えたわ。


 資料を持って町長の部屋から出た私は街の人達と連携を取るためにこの資料を渡そうと考えたの。

 だけど、私が館から出た時には全てが遅かったわ。街の住民がステージ2へと進行してアンデッドになっていたの。

 一人だけならまだなんとかなったかもしれない。でも、私が館から戻った時には既に半数以上の人がステージ2へと進行、残りの人もステージ2へと進行途中でステージ1の人は誰ひとりとしてもう居なかった。


 私は諦めたわ。この街はもうどうしようもないってね。

 だから、資料を燃やして住民を楽にしてあげようと思った私は浄化魔法「アセンション」を使おうとしたのだけど、その時1人の女性が私を糾弾したの。


 その女性の名は「マロン」。彼女は私がこの街に来たから皆アンデッドになったと糾弾した後、持っていたナイフで私に襲いかかってきたわ。

 私はそれを躱すと犯人は私じゃないと言って資料を見せたんだけど、彼女はそれを信じずに、元の平穏な日常を返せ!と言ってきたの。


 私は悩んだ。ここでアンデッドになった者を「アセンション」すればこのマロンという女性の誤解を解くことが出来ないと。だからといってアンデッドを浄化しなければ他の街や旅人に迷惑が掛かる。


 どうしようか悩んでいたら、ふと思ったことがあったの。何故、このマロンという女性は未だ正常で居られるのかと。

 不思議に思った私は彼女をよく観察してみることにしたわ。そしたら彼女がステージ2を越えてステージ3へと進行していることに気づいたの。だから、私は条件を付けることでアンデッドを浄化しないことに決めたわ。


 その条件は、彼女を監視役として街に置いておくこと。もし、アンデッドが暴走して街から溢れるようならば、彼女が責任を持ってとどめを刺すことを条件に私は、アンデッドとなった住民にある魔法をかけたわ。

 その魔法は、自分たちがアンデッドになったことを忘れて、アンデッドになったことを認識出来ないようにする魔法。

 流石に魔女の私でも街の住民全員にこの魔法をかけるのはキツかったから、一時的に街からアンデッドになった者が消える魔法を付与することでなんとか負担を軽くして成し遂げたわ。


 私はその魔法をかけた後、彼女に彼女自身が吸血鬼になっている事を伝えて、近くのダンジョンに篭ったの。このダンジョンに篭ったのは、魔法を掛けたことによって永続的に魔力を消費するから、家に戻れないのが理由ね。


 ●○●○●


 魔女イルスは持っていたコップの中身を一気に飲み干すと、それをコースターの上に置くと「まだ続きはあるんだけど……それは私の個人的な恨みになるから要らないかな?」と聞いてくる。

 味が無いのを気づいてないのか気になるがそれよりも聞きたいことがある。


「ああ、個人的な恨みの話なら要らない。それよりも一つ聞いたいことがある」

「何かな?」


 この資料なんだがと言って、俺は背負い袋から怪死報告の資料を出す。


「これは俺が町長の館に行った時に見つけた怪死事件の報告なんだが、これにはジャックス=デールナのサインが入っていた。魔女イルス、お前が街に入った時点でマロンが吸血鬼になっていたという可能性はあるか?」

「どれどれ、少し見せてもらうね。あと、魔女イルスって一々言うの面倒くさいでしょ。イルスでいいわよ。だから君の名前も教えてくれないかな?」

「ルーラ=ディンドだ」


 イルスは「教えてくれてありがとう」と言うと、資料を見ていく。


 さて、俺はこの間にしっかりと考えなくてはならない。どちらが真実を言ってどちらが嘘を言っているのか。正直マロンを信じたい気持ちがある。でも、イルスが言っている話も嘘だとは思えない。


 うーん難しい。もし俺に真実や嘘を判断する能力があれば簡単に分かったのかもしれない……いや、この場合はどちらも嘘をついてないのかもしれないな。イルスが言っている情報は嘘ではないし、マロンが言った情報も嘘ではない。自分がそれを真実だと思っていればそれは嘘ではないということだ。

 もしそうならば、マロンが嘘を真実だと思っている可能性の方が高くなる。イルスにはあの街の住民をアンデッドにするメリッドなどないからな。


 そうこうしている内にイルスは資料を一通り見終わったらしく「あくまでも私の予想でよければ」と言って話し始める。


「私が街に着いた時点でマロンが吸血鬼になっていた可能性は0ではないわね。でもそうすると、この時点でマロンは自分が吸血鬼なっていたことに気づいてなかったことになるわ」

「そもそも、ステージ2を越えてステージ3になるようなものなんだろ?だったら気付かないのも仕方が無いんじゃないか?」


 俺は最もであろう疑問を口にする。しかし、イルスは「問題はそこじゃないの」と言って、続きを話し始める。


「もし、マロンが吸血鬼になったことに気づいてなかった場合、血を吸っていたのは無意識ということになるわ。そして、吸血鬼が血を吸う行為は空腹を満たすのと同時に吸血した人を魅了する効果があるの」

「それはつまり……」

「ええ、もし彼女がアンデッドと化した街の住民を吸血してた場合、その住民はマロンの味方ということになるわ」


 その言葉は、マロンを敵に回した時の恐ろしさを表していた。

次回26日予定!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ