異世界婚約破棄っ!? 本当の愛を探すためにドS執事と一緒に結婚相手を探して来ますっ!
まず、自己紹介から行っておこうか。
僕は西にある王国の第一皇子で、23歳。病気がちな親父である国王は残り数週間の命ときてやがる。親父が死んだらそのままスライドで国王ってこと。おわかり?
さて、本題はここからだ。
親父が死ぬ前に家臣達が口を揃えて言うのは『皇子も身を固める準備をした方が良い』と言うことだ。まぁ、確かに? 王国に姫っていうのは付き物だし? それに一度くらいは結婚とかして見たいもんじゃん。
それに、王様になるっていうんだから奥さん持っておかないと国民の信用っていうのがねぇ....
すんません。正直言って、単純に童○捨てたいだけっす。見栄張りました。
とまぁ、そんなわけで家臣達の進める通りに僕は妻を娶ることにした。顔はできれば可愛いほうがいいなぁ。あと、巨乳が好きだし。
年はそうだなぁ....自分より若い子がいい。身長がちっちゃかったら尚いいっ! おいそこ、ロリコンとか言うんじゃない。
とまぁ、家臣達は頑張った。大いに頑張った。
それで、相手の顔を見ることないまま結婚式の準備はどんどん進んでゆく。聞いた話によれば、東の国のお姫様なんだとか聞いた。なんだか、そのお姫様の絵も送られてきたけど、正直言ってドストライクっ!
はぁ、早く会いたいなぁ。なんて考えていたらあっという間に結婚式の日はやってきた。
行われる会場は自国の一番大きな教会で、一番高明な坊主を呼んで、一番立派な仕立て屋を呼んで、一番金をかけた結婚式になった。
「坊っちゃま、手筈通り。お願いしますぞ」
「わかってるわかってるって、楽しみだなぁ〜」
この教会の真ん中を通る、とっても広いバージンロードの祭壇の前で自分の長年ともに過ごしてきた執事から耳打ちを受ける。特に、こう言った場では常に執事のサポートが不可欠だ。
ま、自分が何もできないんだけどね。
その時、教会の扉が大きく開かれる。
入り込んだ風が教会の中に入り込んでシャンデリアやおかれた色とりどりの花が一斉に舞い飛ぶ。そして、その入り口には逆光に照らされ純白に彩られたドレスがとても輝いて見た。
白いベールに包まれた彼女の表情はわからない。
だが、
その今にもこぼれそうな胸元。そして、その愛らしい身長。
全てがパーフェクトぅなプロポーションだった。
隣に来た彼女はとてもいい香りがする。もはや坊主の読んでいる聖典の内容なんか一切耳に入ってない。
やばい。
やばいよ、どうしよう。
え? こんな女の子と、初夜迎えんの? ヤベェよ、さいっこうじゃん。親父死んでくれて本当にありがとうっ!
はぁヤベェわ。語彙力なくなてるのがわかるくらいヤベェわ。
「ソレデハ、チカイノキスヲ」
坊主が本日のメインイベントの『誓いのキス』を宣言した。
二人が互いに向き合い、お互いの顔を見つめる。彼女の顔はベールに包まれていてまだわからない。というか、お互いの顔すらまだ見たことない女の子とキスってハードル高くね?
いや、高いっしょ。
けれども、もう俺の奥さんになる人なんだよな。
そうなんだよなっ! やっちゃっていいんだよなっ!?
ええいっ、ままよっ!
震える手を必死に動かして彼女の顔にかかったベールを持ち上げてゆく。自然と息が荒くなっているのを感じて、少し唾を飲み込む。
さて、そのベールの下.....は?
教会の椅子に座っている大勢の国関連のお偉いさん達が固唾を飲んでその光景を見ている。記念すべき瞬間だ、であるにも関わらず目の前の新郎新婦は互いのその動きを止めている。
そして、今か今かと互いの唇が触れるその瞬間を見守っている。
だが、教会に響いた音は互いの唇が触れる音ではなかった。
「すみません、チェンジで」
新郎のその一言が、大きな爆弾となって教会に降り注いだ。
あとはもう早かった。急遽結婚式は中止、婚約なんぞ当然破棄。国に返された東の国のお姫様は即刻この事態に対しての返答をこちらに求めて来たが、そんなもの決まってるだろう。
あんたが単純にブスだったんだよっ!
この事態を引き起こした家臣は即刻クビにしてやった。そして、返答しようにもしようがないこの事態に無言でいたら今度は戦争を起こす事態になった。
いや、だって考えても見ろよ。ベール開けた瞬間、目が離れてるわ、エラ貼ってるわ、歯並び最悪だわ、エラ張ってるわ、化粧が無駄に濃いわ、ともかく表現しようにも言葉が見当たらないようなブスだぞ?
いくらプロポーションが好みったってあんまりだろっ!
とまぁ、うちの国にだってしっかりと兵士やら軍だわ色々あったよ。だが東の国はそもそもが軍事国家というやつで、そんな脳筋がバリバリいるような国とは違ってこっちは戦争とかそんなものを捨ててやって来た国なんだ。
あっという間に国に攻め込まれて、完全に乗っ取られてしまった。
僕はこの戦争で普通に逃げた。
何でって、それは見つかったら即刻死ぬに決まってるじゃん。首刎ねられるじゃん。というわけで、
国も、
富も、
名誉も、
名声も、
国民も、
家臣も、
全部捨てて、逃げて来ました。
「坊っちゃま。正直に言わせてもよろしいでしょうか?」
「....何だよ」
「馬鹿でございますか?」
クソ真面目な顔で、白髭の長年一緒にいた執事がそんなことをぼやく。確かに、馬鹿だった。
僕の家臣がな。
「だって、俺悪くねぇもん」
「ですが....」
あいつらがもっとまともな女を連れて来たら....
と言っても、あの一言でまさかここまでになるなんてなぁ。そんなことを思いながら煙と炎の上がる自分の国を山の頂上から見下ろしている。
「これからどうなさいますか?」
「どうって言っても....お前こそどうするんだよ。給料は払えそうにないぞ?」
「私は、主人の行く末を見守ることにしましょう。父上様からあなたを私の命尽きるまで見守るようにと命じられておりますので」
「そう、んで。本音は?」
「世間知らずの坊っちゃまがドタバタするのを見るのが楽しそうなので」
この執事、長年一緒に過ごして分かっている唯一のことは。こいつは絶対に執事というよりかは、ドSの化身だということだ。
「それで、どこに行かれるので?」
「そうだなぁ。とりあえず....っと」
ここまで逃げる中で唯一持ってこれた国の宝とも言える剣を軽く空へと放り投げる。すると、大きく弧を描いた剣は地面にガシャりと大きな音を立てて剣先が山の向こう側へと向いて落っこちた。
「よし、こっちに行こうか」
「はぁ....やっぱり坊っちゃまは馬鹿でございますね」
「うるさいなぁ。ほら行くぞっ!」
「わかりましたわかりましたとも。どこへなりともこのご老体を引きずって行きなさいな」
森の中へと消えてゆく二つの影。その先にあるのは一体なんだろうか。
続きが聞きたいって?
ま、それはまた別の機会に。
はい、今回のジャンルは『異世界婚約破棄』でした。いかかでしょう?
この通り、プロローグしか書きません。もちろん、作者の頭の中にはこの先の展開から、結末まで入っております。続きが読みたいという方は感想を送るなり評価するなりして、作者のやる気をあげてください。
気が向いたら書くかもしれません。
それではまた会いましょう。