第四話
今回いつもの半分くらいしかありませんがお許しください
「セナ、待たせてごめん……ちょっと、セナ大丈夫?!」
「ん……あ、お帰りセイン」
ギルドにある酒場のテーブルに突っ伏して寝ていたセナ。セインに声をかけられて起きると、寝ぼけた様子で目をこする……ただでさ薄くなっていた体が、今にも消えそうになりながら。
「いや、そんなのんきにしてる場合じゃ……あれ?」
セナに伝えようとしたところ、段々ともとに戻っていく。
「どうした? さっきからなんか変だぞ?」
「えっと……ごめん、なんでも……ない?」
セインの言葉に首を傾げるが、「まあいいか」とセナは流す。
「それで、これからどうすんの?」
「ああ、そうだ。アレーナさんに会えたんだ。それで、これから一緒に旅をすることになった」
「そっか、会えたんだ……え、一緒に旅するの? あたしの知らない間に何があったの?」
「誘われたんだ、アレーナさんに」
「え、アレーナさんから誘われたの? そっかあ……」
「それで、これからの事を話すから今から宿に……どうしたのセナ?」
セナは何やら落ち込んだ様子だった。
「なんでもない……宿に行くんだよね? あんまり待たせちゃ悪いよ。早く行こう」
「う、うん。そうだね……」
セナの様子が気になったものの、セインは先を行く彼女を追いかける。
*
セナを連れて宿に来たセインは、先に来ていたアレーナに声をかける。
「戻ってきたか……セナ殿は居ないのか?」
「そっか、アレーナさんにも見えないのかあ……」
「どういうことだ?」
アレーナの言葉に落ち込んでしまったセナをなだめつつ、アレーナへ事情を話す。
「そうか……では、私には見えていないだけで、セナ殿はそこに居るのだな」
「うん。まあ証明する方法がないから、信じてもらうことしか出来ないんだけど」
「信じるさ。あなたが嘘を吐くような人には見えない」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」
「うむ、ではここで立ち話という訳にもいかない。部屋をとろう。えっと、あなたたちの分は二人用の部屋をとった方がいいのだろうか?」
セインはセナの方を見ると、彼女は首を横に振る。
「あたしは眠くならないし、セイン一人の分だけでいいよ」
「え? でもさっき……」
「さっき?」
なんのことか分からない、というようにセナは首を傾げる。
(眠ってたことに、気づいてない?)
「なんのことか分かんないけど、セインの部屋だけとればいいよ。アレーナさんにそう伝えて?」
「う、うん。分かった……えっと、一人用で大丈夫です」
「そうか。少し待っていてくれ。今手続きをしてくる」
アレーナが受付に行っている間、セインはセナにギルドでの事を話す。
「え、あたしが寝てたの? しかも消えそうなくらいまで薄くなってたの?」
「うん。僕が居ない間に何かあったの?」
「よく覚えてないなあ。セインを見送ってからなんだか疲れちゃって……あれ?」
「もしかして、僕に何か使ったから?」
「うーん、どうなんだろう……?」
二人が考え込んでいると、受付を済ませてきたアレーナが戻ってくる。
「待たせたな……どうかしたのか?」
「えっと、それがね……」
「ふむ、セナ殿が使ったのは支援魔法の類だろう。魔法を使うには魔力が必要だ。魔力は命が造りだす力……もしかすると、肉体の無いセナ殿は、魔力で存在を維持しているのかもしれない」
「てことは、セナは魔法を使うと危ないって事?」
「確証はないが、恐らく」
「うーん、じゃあセナは魔法使わない方がいいね」
それを聞いたセナは、驚きの声を上げる。
「待ってよ。それじゃ、あたしが付いてきた意味ないじゃん! あたしただのお荷物じゃん!」
「空人はかつて勇士と共に戦ったというのだ、きっとセナ殿が共に旅をする事にも意味がある」
「勇士? なんでそれが今出てくるの? あれ、ていうかアレーナさんあたしの声が聞こえたの?」
セナはアレーナに期待の眼差しを向けるが、彼女はそれに気づいた様子はない。
「えっと、アレーナさん今セナの声が聞こえたの?」
「聞こえたというか、なんとなくセナ殿の気持ちが伝わってきた……ような? 私にも分かったのはさっきの一度だけで……」
「そうなんだ! よかったねセナ、アレーナさんも全部じゃないけどセナの事分かるみたいだよ」
セナも嬉しそうに頷いている。
「ねえアレーナさん、それで勇士って言うのはどういう事?」
「そのことは、これから話そう。今から私の部屋に来てくれ、これからの旅に関わることだ」
「うん、分かった」
「ああそうだ……一つ言っておかなくてはいけないことがある」
部屋へ向かうアレーナは、足を止めてセインの方へ振り向く。
「これからは共に旅をする仲間同士なのだ、私のことはアレーナでいい」
「分かったよアレーナ。じゃあ、僕のことはセインでいいよ」
「ああ、改めてよろしく頼む。セイン」
「あの……あたしの事は、セナでいいからね? 聞こえて……ないか」
*
アレーナと共に旅をする事になったセインとセナ。
二人はアレーナの話を聞くため、宿屋で彼女の泊まる部屋に来ていた。
「えっと、ずっと前に封印された邪悪なる者って奴が居て、その封印が今解けそうなんだね?」
「そうだ。そして再び封印するため、伝承に伝えられている神器を探して各地の遺跡を巡っていたのだ」
「それで、次はどこへ行くの?」
アレーナは自分の荷物の中から地図を取り出し、テーブルに広げる。
「私たちが居るのはここ……ライトと言う街」
ライトと言う街を指さし、そこから地図をなぞって別の街を指さす。
「そして、私たちがこれから向かう場所はここ『フラマ』という街だ。そして、この街にも古代の遺跡がある」
「そこには何があるの?」
「私たちは、この遺跡に眠る勇士の剣を手に入れる」