序章
英雄。それは、救世主。苦しむ人々を救う存在。
英雄。それは、人々を惹き付ける者。彼の周りには常に優秀な人の姿が絶えない。
英雄。それは、憧れの存在。多くの者がその存在になることを望む。
英雄。それは――。
「先に断っておきます。これは夢ではありません。お告げです。本当ですよ?」
目の前に立っている巫女服に身を包んだ女性が言った。
この女性誌ついて説明すると、彼女は突然俺の前に現れた。
遠くから走ってきたとか、横から滑り込んできたとかではなく、ろうそくに火が灯るように突然だ。
それにしても、やたらと念を押すな、この人。
「直正。あなたに頼みがあります」
女性は俺に頼みたいことがあると言った。
話の展開的に頼みたいことと言うのは――。
「今、この月輪はあるモノたちによって滅亡の時を迎えようとしています。貴方にはそれを阻止していただきたいのです」
ほらきた。国、または世界を救ってください。
何でいつもしがない凡人にこんな一大事を頼むのだろうね。
しかし、これが本当にお告げならついに来たのかな。
俺の時代ってやつがさ。
「『龍の社』で待っています。この月輪を救うにはあなたの力が必要なのです。最後に……本当に来てくださいね?」
次の瞬間目に写ったのは小窓から差し込むお天道さまの光だった。