クエストNo.1 雷鳥サンダーバード討伐②
動けなくなった莢を安全なところまで連れてったところで、さぁ、戦闘開始だ。
まずは宙に浮いているサンダーバードを引きずり下ろさなければ戦闘を優位に持っていくことは難しいだろう。
俺の能力、黒騎士がいくらSランクといえ、まだ特性を使うための頼りになる武器はまだない。何かの木の棒とかあれば現実世界での武道の経験を活かせるため、まだなんとかなるのだが、いかんせん何もない。
ここでの頼りは莢の風の力となるわけだが、莢はまだ腰が抜けている。どうしたものか。
「キシャアアアアオオオオオオオオ」
大地が震えるんじゃないかというほどの大音量の荒々しい声でサンダーバードが吠えた。きっと威嚇だろう。だが、そんなものでビビる俺じゃない。
「さーてどうすっかなぁ」
考えてもひとまずダメージを与えなければ倒せない。仕方ない。
拳を握り物理攻撃を行うべく、陸上に降り立ち、空中にいなくても倒せると挑発をしているかのように見えるサンダーバードに向かって駆ける。
「キシャアアアアオオオオオオオオ」
俺の攻撃を阻止しようとするかのようにサンダーバードがクチバシを開いた。クチバシからバチバチと音がしたかと思えば、クチバシ内で雷らしきものが球状にとどまっていた。
そして、それが放たれる。すぐさまその謎の雷玉っぽいものの軌道から外れる。放たれた雷はらせん状に回転し、俺の横を通り過ぎ、先程までいた岩壁にぶち当たる。
その威力に驚かされ、俺は攻撃をすることが出来なかった。
ふと、視界の右下にヒットポイントが表示されているのを確認した。難易度☆3のサンダーバードはヒットポイント3000。
「HP3000!?…マジかよ…しかも雷吐き出すとかモン●ンに出てくる猿じゃんか。食らったら一発で死にそうで怖いし」
まぁ、ゲームだしなんでもありなんだよな。よしっ! 若干ビビったけど今度はこっちの番だ。
再び、ギュッと握った拳を構えて、サンダーバードの間合いに入るべく駆けていく。
サンダーバードは至近距離に来られると攻撃する手段として考えうる限り雷の翼で払うしかない。
さぁ、その雷の翼ではらってこいっ!
サンダーバードが翼を動かし攻撃を阻止しようとする。だが、持ち前の武道の経験で難なくそれをかわしサンダーバードの懐へ一発パンチを決めた。
サンダーバードのヒットポイントがどのくらい減ったのか。表示されているヒットポイントバーで確認する。わずかしかバーが減っていない。ほとんどダメージを与えていなかった。
「全然効いてないじゃん。こりゃあ、マジでヤバイかもな」
「風の矢」
俺の目の前で何かがサンダーバードに突き刺さった。しかも、目の前で砂塵が巻き起こりそれが何か判断できない。
「逃げるよ!」
そう言って誰かが俺の服の袖をつかんで引っ張る。抵抗することなく俺はそれについて行った。
「はぁはぁ、ここに隠れていれば、しばらく大丈夫だね」
連れて行かれた場所は近辺の洞窟だった。何者か知らないが助かった。あのままいても大して攻撃も通らず耐久戦となり死んでいたかもしれない。
「あの、誰か知らないけど、助けてくれてありがと」
「私を忘れたの? 天音。さっきまでずぅーーーっと一緒にいたのに?」
この声聞き覚えがある。ずぅーーーっと一緒にいた? といえば思い当たる人物は一人しかいない。てか、ここに来て一人しか話していない。さっき腰を抜かしてへたり込んでいた天沢莢だ。
「わ、忘れるわけないだろ。俺の命の恩人。そして同じパーティの莢の事を」
「正解! 助けに現れたのは私。天沢莢でした」
やったぁ! 当たった。などと現を抜かしている場合ではない。これからどうやってあのサンダーバードを討伐するか作戦を練らなければならないのだ。
「サンダーバードを倒す作戦だが、まず先行して莢が奴を引きつけておいて欲しい。その間に俺がそこら辺の木々から武器になりそうなものを探す。そして、莢の風で弱った所を俺の黒騎士で倒す」
「私が囮か…分かった。どれだけ引きつけていられるか分からないけど。やれるだけやってみる」
「危険な作戦だけど、頼む」
「うん! 任せといて」
その後も地形の利を活かして戦う方法や位置関係など。綿密に打ち合わせをした。
さぁ、第二ラウンドだ。サンダーバードよ!