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笑わない男の、左手  作者: 柚木
Kと友情
13/19

夢と記憶のあいだ

 それは、何度もみた夢だった。


 夢の中の彼は作り物のように綺麗な顔で眠っていた。月明かりに浮かび上がるその表情は、少し困ったように微笑んでいる。


 キーラは、いや、キーラの体は彼に縋り付いていたが、「キーラ」はそれを少し離れて見ているのだった。


 夢の中で「キーラ」は、これは夢だ、と認識していた。


 夢と、忘れていたい現実との相違にも、いちいち気づいてしまった。

 初めてその夢を見た後、本当に作り物であったら良かったのに、と嘆いた記憶が蘇る。


 ――本当は、彼の顔がもっとずっと歪んでいたことまで。

 ――本当は、あまりに恐ろしくて、彼に縋り付くどころか指一本触れられなかったことまで、はっきりと覚えている。

 

 ――本当は、彼が死んだのは――




「あんたが、アレン?」

 キーラは目の前に現れた少年を見て、訝しんだ。彼女が呼び出したのは、「最も凶悪な殺し屋」と評判の男のはずだ。

「何歳なの?」

「十五だ」

「あたしより一つ若いじゃない。本当に、ひとごろし、なの?」

「ああ」

 簡潔な返答だった。

「依頼は?」

「友達が……、死んだんだよ」

 彼は黙ったまま、先を促すように頷いた。

「……殺された、みたいなの」

「誰に?」

「そんなのわからない」

「依頼は復讐か? だったら標的の情報を持ってくるのは当然だろう」

 常識だと言わんばかりの彼に、キーラは苛立った。

「そ、そんなこと言われたって……」

「持ってこられないなら、依頼は受けられない」

「でも……」

「もういいか? 俺は暇じゃない」

 ぶっきらぼうな言い方だった――まあ、それが彼の普段の喋り方であることに、キーラはすぐ気づかされるのだが、この時は気に食わない奴だと思った。

「ちょっと、待ってよ!」

 帰ろうとする後ろ姿に叫ぶ。

「……調べれば、やってくれるのね?」

 彼は首だけで振り返って、キーラを見つめた。


「さあな」


「え? どういうこと?」

 慌てて聞き返すも、アレンは踵を返し、去っていった。

 それが、二人の最初の接触であった。


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