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笑わない男の、左手  作者: 柚木
序幕
1/19

Is this a prologue, or……

 山間の村の朝は冷え込みが厳しく、温暖な街からやってきた彼女には辛い。

 朝もやの中、見えるのは木立ばかり。聞こえるのは、これから眠りにつくのであろう小動物達の足音だ。姿が見えず、林をがさがさと歩き回る音だけが聞こえるのでは、例え音の主が小動物であろうと、愛らしいとは思えない。


 ここへ来てすぐの頃、怯える彼女に、あれはリスとか、可愛らしい生き物の足音だよ、怖くなんかないよ、と諭してくれた子供がいた。それこそ小動物みたいな、くりくりした眼の可愛い子だった。


 彼女は簡素な服に着替えた。やはり寒いので、ストールを羽織る。自室の扉を開けると、途端に強い風にさらされ、彼女はストールを強く体に巻き付けた。白い息を吐きながら祈りの間へと向かうと、既に修道女達が揃っていた。

「リア」

 咎めるような声色で呼ばれた名に、彼女はまだ慣れない。修道院長は厳めしい顔で追い打ちをかけるように告げる。

「遅刻ですね」

 彼女は黙ったまま俯いた。

「早くしなさい」

 小さく頷いた時には、修道院長はもう彼女に背を向けていた。


――ここは、つめたいところ。

――神様がいらっしゃるのに?

――かみさまなんて、いないよ。


――どこにも、いなかったんだ。ずっと。


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