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アル・スカイ

予告編のようなものです。本編は後日に掲載します。

 さようなら。


 ただ名残惜しく遠ざかっていく青い星を見送るしかない。役目を果たし、傷つき、幸運と悲運をまとめて背負って旅立たなければならないことを悔やむ。


 明日をもしれぬ長い旅の始まりは一つの戦いから目を背けることから始まった。だからこそ、あなたはともに立ち向かって小さな役割を果たしたの。


 何もできなくてごめんなさい。


 戦いに傷つくのは知っていた。多くの人を守るために、それが報われないとわかっていても残された手段はあまりにすくなかった。だから共に戦って、傷ついた。その傷を癒すには、もう操縦者の手では不可能ね。青い大空を舞う姿を、もう一度見たかった。


 だから、あなたを託す。


 きっとこの宇宙の果てを目指す旅は多くの不安を抱えることでしょう。その時はもう一度立ち上がってほしい。その鎧を磨き、四肢を鍛えて、飛び立ってほしい。あなたを任せる人はとても優秀な方だから、きっと強くなれる。


 あなたはかつての英雄の系統を受け継ぐ〔アル・スカイ〕なのだから。


 しばらく一緒にいられるけど、私たちはいつかお別れしなくちゃいけない。


 ずっと先になるけど、さようなら。




 そこは格納庫。壁際から延びるマジックハンドと体に張り付く修理用ロボットがまとわりついて、あちこちで火花を散らせる。


 巨人は脇をかかえられるようにして胴体を固定されて、なすがままに修理を急がされていた。


 外では戦争が起きいたらしい。何度も何度も移転して、ようやくこの場所に落ち着いた。そうして何年たったかもわからないが。まだ千切れた脚部や腕部が放置されたままだった。


 (ただ)れた装甲や粉砕されてしまった内部フレームを取り替えて、電装系や駆動系、さらには動力までも一新することになり、もはや別物に近い改良を施されている。


 いつまでこうしていればいいのか、思考を持たない巨人にはわからない。


 ただ、機械だらけの整備状況の中にぽつんとある人影には改造の見通しができているようで、うんうんと満足そうにうなずいている。


 いつ飛び立てるのか、わからない。もしかしたら、永久に動けないのかもしれない。


 何も言えない、何も思わない巨人には出会いなど訪れるはずもなく、こうして無意味な改造が延々と続くのではないか、と考えていてもおかしくない。


 だが、整備を急がせる人影は不敵にほほ笑んで、巨人の四つの角をはやした白兜、四つの瞳を見つめる。


「近々、生活可能な惑星に漂着するらしい。そうなれば、いよいよ出番かもしれない。いい操縦者もいる。もっとも、その子は君と同じように眠り続けているがね」


 不思議な人である。


 語りかける口調は自信に満ち溢れて、巨人が動き出すことを疑わない。修理を請け負っているからではなく、もっと根底に別の意志らしいものが垣間見える。


 そして人影は悪戯な笑みを浮かべると、手元の端末を操作した。


 すると、巨人のデータベースに一枚の画像が送信された。電装系を整備するロボットから転送されたようだった。


「すぐに消える。余計なデータを詰めるほど余裕はないだろ?」


 人影は悪戯に言って、無意味なことをする。ただの享楽なのだろう。


 画像は、冷凍睡眠(コールドスリープ)にかけられた幼女だった。標本のようにどこかの博物館に飾られて、剥製のように多くの来館者に見られている。


 彼女は純白であった。肌の色も髪の色も真っ白な雪を思わせる冷たいもの。だから芸術品のように扱われているのだろうか。


 すると、整備を請け負っている人影は言った。


「いつかこの子とともに空を駆ける時が来る。おそらく、ね」


 巨人と少女が出会うのはあと数年を要する。


 しかし、この時から少女と巨大な機械の物語は動き始めていた。


 旅路の果てに人類が新たに見つけた希望の星へ飛び立つために。

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