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ウェストニア書史  作者: 熊海苔
第1章:学園編
6/7

入学準備なので我慢しましょう。――無理です。

はい。遅れました。すいません

 月日が流れるのは早く、現在入学式の前日である。そして場所はルナメリア邸のルナシアの部屋である。そこで、大河ティルは手首を紐で括られイスに座らされていた。足はイスの足に縛られており口にも布が巻かれていた。


「ン~!」

「すいませんね。ティルさん」


 そう言いながら、口元の布を取り去る。


「ルナシア!何のつもりだ!?」

「なんのつもりって……こういうつもりですよ?」


 ルナシアは大河の鼻を摘みクリスタルのグラスに入っていた液体を無理矢理飲ませた。全てを飲まされた大河はむせ返り、キッとルナシアを睨みつけた。


「そんな怖い顔をしないでください」

「こんな事をされたらなるのは当然だろうが。何を飲ませた?」

「すぐに分かるはずですよ」


 なんともないような微笑みを浮かべ大河を見る。すると、大河の心臓が跳ね上がった。全身が熱くなり玉の汗が額に浮かび始める。


「…魔法薬……それもうんと強力な呪い・・がかけられた物」

「ご明察です。期限は三年間」

「要するに学校へ入り卒業するまで…どうする気だ?」

「学校は女子校ですよ?」

「女子校…だと?」

「はい。女子校です」

「もしかして、この魔法薬って…」


 恐る恐る聞く大河にルナシアは満面の笑みで答えた。


「はい。女の子にする物です♪」

「やば…意識が……」

「ふふふっ、楽しみですね」


――――


 その後、二時間ほど気絶していた大河がゆっくりと重たげに瞼を開く。周りの状況を確認する。

 部屋――ルナメリアの部屋

 態勢――イスに縛り付けられたまま

 容姿――不明だが女


「目が覚めましたか?ティルさん」

「ああ、最悪な目覚めだ」


 甘ったるく高い声、すでに大河は現在の状態を把握しつつあった。視界の端に映る髪は金に近い茶色、身長も縮んでいる。


「ティルさん、可愛らしくなりましたね。先ほどまでは精悍な顔つきでしたのに」

「それを言われても俺は嬉しくねぇよ」

「あら?性格も変わってしまいましたか?」

「元からだ。そろそろ縄を解いて欲しいんだが?」

「そうですね。どうぞ?」


 縄を解かれ縛られていた所を軽く擦る。雪の様に白く細い腕を見て嘆息、視線を下へ向ければ盛り上がっている胸元、元々履いていたズボンがズリ落ちないようにベルトで縛る。


「鏡は?」

「こちらです。可愛いですね~、食べちゃいたいくらい」

「そっちの気だったんだな。お前」

「そうですよ?」


 鏡の前に着き鏡を睨みつけるように見る。が、見た瞬間ポカーンと呆けた。見た目の年齢は13ほど、赤い吊り目に対照的な白い肌。


「これが俺?まさか…冗談だろ?」

「冗談じゃないですよ。ティルさんです」

「まさか本当に女になってるのか?幻想とかでなく?」

「はい。本物です」

「絶望したぁああああああ!!」

「そうですか?十分可愛らしいと思いますが?」

「論点がちげぇんだよ!女になったことに対してのリアクション!」

「可愛いは正義です」

「もういいです……」


 溜息を吐いて部屋から出ていくとドアの前にベルとライが立っていた。気まずい空気に三人が静まりかえっている所にルナシアがころころと笑いながら現れた。


「ティルさんはお兄さんからお姉さんになりましたよ♪」

(♪じゃねぇ……)

「本当に兄さん?」

「非常に残念ながらな…」


 物凄く嘆息しながら大河は答えた。ベルとライも苦笑いを返すことしか出来ず、本気で笑ってるのはルナシアだけである。本人は別段なにも思っていなく、ただ大河をどのように愛でようかとしか考えていないあたりはもう末期なのだろう。もうこいつ放置でよくね?などともう半場諦めムードを漂わせた大河にルナシアはにっこりと微笑み近づいて行った。


「な、なんだかいやな予感しかしないんだが……」

「制服のサイズ調整をしようかと思いまして」

「遠慮します。マジで近づかないで!」


 大河はルナシアがジリジリと近づいてくるのを見て引き攣った笑みを浮かべて後ずさりをしていく。背中に固い感触――壁、逃げ場はない。


「お着換えですよー!!」

「ぎやぁああああああ!!?」


 その日、ルナメリア邸に甲高い悲鳴が響き渡った。

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