BLACK&WHITE/世界の裏
少し文章が変わっています。主に会話文の間スペースです。
冒険者ギルドで登録をした後、ティルはあるダンジョンへ向かっていた。
ギルドのあった帝都を現在北上中である。因みに、この大陸ウェストニアの広さは大体オーストラリアと同じくらいの広さがあり、大陸内には大小合わせて十二ヵ国ほどの国が存在している。
今現在、ティルが居る国は一番大きな国であるシロディールである。発達した国ではあるのだが、他の国と違い自然は溢れているため林業や牧畜、農業などが盛んで近郊の山では他の山では取れない鉱物が採掘されるため、様々な装備が作られている一方ガイアドラゴンなどの鉱物を主食とするモンスターは他の国に生息する物よりも強い個体が多く存在している。
「今日は平和だな。魔術師くずれも襲ってこない」
何も襲いかかってこない街道を途中で購入したパンをかじりながらダンジョンへ向かう。ティルはただ何となく空を見上げる。眩しく輝く太陽に視線を向けてから道に目を向ける。
(何を黄昏かけているんだか)
「兄ちゃん、この先は危険だぜ?」
「そうか。忠告ありがとう」
「何言ってんだ。俺達が山賊に決まってるだろ。金目の物置いてけ」
ティルは少し考え込んだ後、左腕の漆黒のブレスレットに触れた。そして呟く。
手に握るナイフを見て山賊達はニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「やるのか?こっちは四人だぜ?」
山賊に何も返事を返さず漆黒のブレスレットがナイフになった瞬間、山賊の一人の背後へ現れた。何も言わず一人の喉を切り裂く。そして、腰のポーチからダガーナイフを取り出しもう一人の胸へ投げつける。
「あと二人だろ?」
「くっ」
「お、親方!例のを呼んじゃってください!」
「おお、そ、そうだな。来い!死鬼」
山賊の頭がそう叫ぶと、頭の背後の空間に亀裂が入り何かがこじ開けて出てくる。頭部から角を生やした甲冑で鎌を持ち目の場所が赤く光っている。亀裂から出てきた瞬間ティルに向かって鎌を振った。
「召喚獣ね…でも下級じゃ俺を倒すのは無理だぜ?」
振りかざされた鎌を両手剣にしたリベリオンで弾くと死鬼が大きくバランスを崩した。胴の鎧の隙間からリベリオンを突き刺し真横へ切り裂く。
切り裂いた瞬間、死鬼は金属が砕けるような悲鳴と共に闇の中へ沈んでいった。
「それで?どうするよ山賊の頭さん」
「くっ、逃げるぞ!」
山賊達が逃げた後ティルは特に関心もなさそうに見送って首をパキポキと鳴らす。ダンジョンの方向をじっと見つめる事しばしば向きをクルリと方向転換して帝都へと向かい始めた。
だが、少し歩いた所で行きには見なかった遺跡が目に止まった。そのままじーっと見つめ続けている。と言うよりも目が離せない状況だった。
「はぁ…行くしかないか」
とぼとぼと、遺跡の中へ入って行ったティルだったがこの遺跡は少々曲者だった。何故かと言うと階層が二階までしかないわりに何と言うか厄介だった。
「……頭に響く」
『きゃははははははは!』
『うふふふふふふふふ!』
『ぐへへへへへへへへ!』
『ふぉっふおっふぉっ!』
ただひたすら笑い声の響くダンジョン、老若男女問わず全ての方向から軽く拷問だ。あまりの笑い声にティルは眉間に手を当てて溜息をついた。そして笑い声の音源らしい物を切ってみたが全く笑い声は治まらなかった。
「どこかに黙らせる方法はないのか?」
『ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!』
「(イライラ)」
『いひひひひひひひひひひ』
「(プチン)……来い。アル・ブレイヴ」
呼ばれると同時にティルの肩付近の空間に亀裂が走った。そして、中からひょいっと身を翻して金の瞳の黒猫が出てきた。ティルの肩の上で毛繕いをすると床へ飛び降りてティルを見上げた。
「ヘッドホンになってくれないか?」
「にゃっ」
『わはははははははははははははは』
黒猫――アルはティルの頭に飛び乗る。猫の形は消えティルは黒いヘッドホンをしていた。
笑い声を気にせず遺跡内を探査し始める。すると、奥の方を漁っているとスイッチの様な物を発見した。興味本意で押すと笑い声が消えた、その代わりに落とし戸が上へと持ち上がり階段が現れた。
(さあ、何が出る?武器か、宝物か……)
階段を降りていくと共にティル自身が忘れていた物も取り戻していっていた。感情である。未だに半眼のままではあるがこれまでとは違い光は戻ってきている。奥で発見したのはこれまでとまったく違う造りの扉だった。若干これまでと性格の変わったティルは扉を蹴り開けた。そこには少女が二人眠っていた。
「黒髪と白髪の女の子?アル、運び出すぞ」
「にゃぅ」
猫に戻っていたアルの足元から甲冑に包まれた腕が出てきてアルを掴み亀裂内へ引き込んだ。今度は二本の腕が亀裂をこじ開け始める。中から出てきたのは白銀の甲冑を着込んだ騎士、しかし手には何も持っていない。歯車が擦れ合う様な咆哮を上げ二人の少女を持ち上げ、そして出口へと歩みを進めたのだった。
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「以上が今回の報告です。彼女達との接触で感情が戻ってしまったのは予想していませんで居たが」
「そうか。例の件は頼めそうか?」
「はい。そこは問題ないです。暗殺能力・身体能力・召喚獣の能力ともに任せるに値します」
「そこで問題となってくるのは感情が戻ってしまった事か…記憶が戻らなければよいが」
そういうとチュニカとトガ(神話等で神が身に着けている物)を着た人物は溜め息とともにもう一人に命令を下した。
「1週間以内にヤツに例の件を伝えろ。分かったな」
「分かりました。1週間以内ですね」
女は了承すると背中から翼を出し羽ばたいた。
――――
「しかしこれで良かったのだろうか?これは我々の問題であり下界の人間には関係ない」
「今更何を言ってるんだ?メタトロン、関係ない訳ないだろう。彼らが私達天使と結ばれてネフィリムが生み出された時点で行動を起こさないとあっちの世界と同じ結果になる」
「分かってはいるんだ。私だって洪水を起こさなければダメな状況は望んでいない」
男の一言にチェニカとトガを着た人物――メタトロンは頭を振る。男はその様子に溜息を吐き近づいた。
「この世界にエノクは居ないんだ。ならば、エノクに代わる人物にやらせるしかないだろう?例えむこうの世界生まれであっても、そこら辺は上にも話は通してあるから」
「分かった。だが、手は貸すぞ」
「分かっているよ。お前は言い出したらやめようとしないからな。あと、人の話も聞かない」
「昔の事だろ?」
「まあいい。私もこの世界は気に入っていてね。滅ぼしたくないんだ」
「だからこそ、グリゴリ達は野放しには出来ない。彼ならやってくれるさ」
「向こうで彼女に血を入れられて人じゃなくなってしまったからね」
二人はうなずき合うと掌の上から消えた。
こんにちわ。熊海苔です。
春休みなので更新が早めになっているので学校が始まってから大変そうです。
それでは恒例の設定などなどの紹介です。
召喚について書こうと思います。
この世界では誰でも召喚魔法を使う事は可能です。そもそも生まれた時から個人に召喚獣が存在しています。が、全員が全員召喚する事が出来ると言う訳ではありません。もちろんのこと、召喚には魔力を使います。その魔力がネックとなるわけです。
弱いと言うよりも戦闘向けではない召喚獣の場合は訓練をしないでも召喚する事が出来ます。主にペットなどとして扱われる種類ですが…そして、戦闘可能な物――姿形は基本甲冑などを着ているものが大半です。そして、強い物となると更に召喚に魔力が必要となりますが一人につき一体の召喚獣が生まれた時から存在するのですから、それ以外の物は呼べません。
このような事から戦闘可能な召喚獣を呼ぶ事が出来るのは訓練を受け尚且つ魔力量が多い者と、ただ単に魔力量が多い者に限定されるためその国の貴重な戦力となり戦争などで活躍する事が多いです。
また、魔力量の関係から王族などは英才教育もされる為、殆どの場合召喚は可能です。そしてこの世界での召喚獣を呼べる値は世界を100とする場合、およそ36で男女比が6:4
さらに男の場合の戦闘可能な物が7割、女の場合は9割方がペット用である。
今回もこれくらいで終わろうと思います。
質問・感想、お待ちしております。m(_ _)m