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兎の世界にとりっぷ!  作者: 汐井サラサ
番外編:クリスマスプレゼント
56/59

(5)

 つぅっと指先が頬を撫で、顎の先まで来ると大きな手が頬を包み込む。親指の先がゆっくりと唇の上をなぞる。

 薄く塗っていた口紅が、ルイさんの指先を薄っすら紅色に染める。


「―― ……っあ」


 その指先を、躊躇なく口に含んだあとぺろりと舐め取る。

 ぽわんっと見上げていた私と目があうと、口角が少しだけ上がる。お腹の裏側あたりがきゅうっと絞まり、鼓動が早くなる。


「もっと、甘いかと思いましたが……ケーキもまだ食べていなかったんですね?」


 ふわふわと上がってくる熱に、一瞬にしてどうして良いか分からなくなって答えそこね逡巡すれば、顎に手が掛かる。

 そのまま、ぐぃと無理矢理顔を引き戻され覆い被さるように抱き締められ口付けられた。


 今度はさっきのような可愛らしいものではなくて、深く濃く、官能的な口付けだ。

 口内を容赦なく這い吐息さえも奪っていくように、強く吸い込まれる。


「……んっ、……んぅ」


 角度を変えられ尚必要に迫られれば、膝が震え、かくんっと崩れそうになるのを、しっかりと抱きとめられ逃げることを許されない。


「ん、ちょ……ルイ、さ、ん」

「……はぃ?」


 艶っぽく返ってきた声色に、やめる気はないことを直ぐに悟った。

 続ける言葉を失えば、異議はないと判断されたのか


「―― ……っ、あ……」


 するするとたくし上げられたスカートの中へ手のひらが進んでくる。

 吸い付くように内腿を撫でられて、甘い声が漏れてしまう。


 視界の隅では庭が賑わっている明かりがちらちらと射し込み、みんなの楽しそうな声が届く。

 いつもなら、ここまでの無茶はしないと思う(多分)


 本気で、今、直ぐにでも欲しいと思ってくれたのだろう。本当に急な話しだけど、どこで、火をつけてしまったのか今更探りようがない。


「っは、ぁ……あの、じ、時間が取れるなら、みんな、の」

「嫌です。僕の時間はユーナに差し上げたもので、あっちじゃない。そして、ユーナの時間も僕が貰っているわけだから、何も問題ないでしょう?」


 喉元に唇を寄せられ、甘く食みながら声を出すから、その振動までが肌に伝わり鼓動が早くなる。

 自分では分からないけれど、もう、直ぐにみんなのところへいけるほどまともな顔をして居ないと思う。


「……んっ!」


 ゆっくりと内腿を撫でていた手のひらが、最奥に触れるとびくりと身体を強張らせてしまった。

 必死に崩れて落ちそうになるのを堪え、ルイさんの肩にしがみついて哀願する。


「せめて、寝室……に……」


 扉も見えている直ぐそこなのに……。


「見られそうで、聞こえそうで恐いんですか?」


 熱い吐息とともに耳の中に注ぎ込まれる。

 私はこくこくと何度も首肯した。


 多分大丈夫だと思う。

 上から下は見えるけど下からは無理だと思うし、声も、我慢するし、それに下も騒がしいから……きっと、多分……でも、絶対じゃない。


「―― ……あぁ、何人かがこちらを気にしていますね……」

「っえ!!」

「多分、気のせいです」


 多分って、多分って、そ、そんなの嫌だ、もし、本当に見られてたら……。


「ひぁっ」

「見られているかもと思うと感じるんですか? 凄く濡れていますよ」


 くちゅりと、私にも聞こえるようにワザと音を立てる。意地が悪いにも程がある、程があると、思うのに、


「……ん、んんっ」


 続けて与えられる快楽に漏れる声を押しとめるので精一杯で、抗議の声すら出すことが出来なかった。



 ***



 結局、私は庭に戻ることが出来なくて、ルイさんだけが様子を見てくると、一度下に降りていった。

 残されたのはもちろんベッドの上。


 一度だけあの場で逝かされてしまったけれど、それだけじゃ納まらなくて、ぶつぶつ文句をいわれつつ、寝室へと流れ込んでしまった。


 ぼんやりと納まらない身体の熱を抱えて丸くなり寝返りを打つ。

 私が眠っている間に、ルイさんは起き出して、仕事を開始していた。ずれ込んだのだから仕方ない。手伝おうとしたら、邪魔になるから部屋に戻っているようにいわれてしまった。

 酷い。


「―― ……何これ」


 そして、戻った私が目にしたのは……プレゼントの山だった。

 大小、ぱっと見では数え切れない量が積まれている。


「なるほどー、クリスマスが有事だったのか」


 唖然と立ち尽くしている私の背後に突然現れたロナさんの言葉に、びくりと肩を強張らせた。

 慌てて振り返れば「ケーキ食べ損ねただろう?」と可愛らしく美味しそうなケーキを山と持ってきてくれていた……朝から無理です。とはいえずに、ありがとうございます。と受け取る。


「有事ってなんですか?」

「へ? ああ、どっか行くたんびに、あれもこれも、って買うからさ。貢いでるなっていったらさ、凄い怒られた。理由もなく贈り物をしたら、本当に贈りたいときに価値が下がるもんなんだってさ。だから、何かのときに……」

「……溜め込んでたんですねぇ……」

「だよなぁ……」


 はーっと二人して、プレゼントの山を前にそれぞれ意味の違う溜息を零した。


 ―― ……貴方の望むものをなんでも用意しましょう。


 確かにこれだけあれば一つくらいクリーンヒットする品も出てくるだろうというものだ……。

 あの自信はここから来てたんだなぁと妙に納得すると同時に、私が今回プレゼントを悩んだのと同じように、あれもこれもと手にしていたルイさんの姿を思うと、何でも許せそうになってしまう。


 ―― うちのサンタさんは思った以上に気前が良いようです ――

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