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落人色々

※猫の世界にとりっぷ! 小話:りんのおねだり2(拍手お礼にリンクしています)※

「お帰りなさい、ルイさん……って顔が悪いですよ?」

「―― ……」


 いつもなら「顔色が、ですか?」と射殺されそうなのに今日は大人しい。

 ちょっと睨まれたけど。

 変だ。


「変な汗出てますけど?」


 ごそごそとポケットからハンカチを取り出して、帰る早々、ソファに深く腰掛けて嘆息するルイさんの額を拭いてあげる。お茶でも淹れましょうか? と声を掛けると無言で首を振る。


「そうですか?」


 いってそのまま手を引こうとしたら、その手を掴れて、ぐぃっと引っ張られた。

 もちろんそんな力に対抗出来るだけの踏ん張りはないので、素直に抱きすくめられるのだけど……。


「……何か、ルイさん怯えてます?」


 訝しげに見つめる私にルイさんは、鼻で笑って「まさか」というけれど、認めてるような気がする。

 頭頂部に、ひょこーんっと飛び出た耳が恐怖にぺったり頭に張り付いてますけど。


「別に、怯えてはいませんけどね……なんというか、落人にも色々いらっしゃるというか……ユーナの世界は危険だということが」

「……えーっと、別にここと変わりないくらい平和ですけどね?」

「危険です。あんなところで平然と暮らしていける貴方方はおかしい」

「はぁ……そうですか」


 確か今日の予定も丸一日埋まっていたはずなのに、猫の国から戻ってここで震えていて良いのだろうか?

 つか、何があったんだろう。

 ルイさんをこんな面白状態に出来ることがあるなら是非ともご教授いただきたいものだ。


「落ち着きました?」


 どうしても項垂れている耳に視線が集中してしまう私の視線が気に入らないのか、私の視界を遮り、人の頭を抱えて頭頂部に顎を乗っけて一休み。

 そこ、休むところではないのだと、いっても無駄だよね。

 やれやれと、嘆息しつつ間を見て声を掛ける。


「落ち着いています、最初から……」


 それなら、それで、構いませんが……何も私がいわなければ、ルイさんは、ふと思いついたように腕の力を解く。

 私が、緩くなった腕の間からルイさんを見上げると……ついさっきまで、ぺたんこになっていた耳が好奇に天をさす。物凄く良いことを思いついたらしい。

 きっとろくでもないだろうけれど。

 はあ、と私が嘆息したことにも気がつくことなく、ルイさんは、くぃっと中指で眼鏡の位置を直すと口角を引き上げた。


「折角ですし、ラヴィッシュ様には何かお礼を考えなくては……」


 良い顔してますね。薄ら寒いです。


「―― ……やめてあげたらどうですか?」

「嫌です」


 ……この人も、相当子どもみたいなところのある人だった……。せめて


「りんちゃんには……」

「しませんよ。落人は貴重ですし、大体女性に何かは酷いでしょう」


 実はフェミニストなのか……というよりも……


「―― ……どの口がそんなこというんですか?」

「ユーナは僕がどこから声を出しているか分からないんですか? 確かめてみます?」


 つぃっと頬を寄せられて、鼻先で向き合うように促され、ひっ! と息を呑む。


「けけけ、結構です!!」

「そうですか? 残念ですね……ではそろそろ重いので退いて下さい」


 だから誰が膝に座らせたんだよっ!

 怒りたくなるのを堪えて立ち上がれば、ルイさんも、すっとソファから腰を上げる。


「それに、あの様子ではかなり寵愛されてるようですからね。厄介ごとはごめんです」

「それなら最初から……」

「何か?」

「いーえ!」


 ぷぃっと顔を逸らせば、くすくすと笑われる。面白くない……。面白くないけれど。


「留守を頼みます」


 いって、ちゅっと髪に唇を寄せられる。

 ふわぁっと頬が熱を持ち居た堪れない。苦々しく顔を上げれば、ひらひらと後ろ手に手を振られて静かに扉は閉められた。


 分かってると思いますが、私にはあのうさぎを止めることは出来ませんので、許してあげてください。


 ……ぺこり……。


※りんちゃん小話を読んで勢いで、書いちゃいました。つい、本当に、勢いで……あっぷを押してくださった夕花子さん。どうもありがとうございました※

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