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兎の世界にとりっぷ!  作者: 汐井サラサ
兎の世界に囚われて
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第三話

 私たちは、そんな噛み合っているのか噛み合っていないのか、分からないような不毛な会話をしながら屋敷の中心にある塔へと進んだ。

 この塔には、たくさんの扉がついていて各国に行くことが出来る便利なものだ。獣が人型をとる世界だ。私は何も驚かない。


 このどれかの扉が、元の世界に繋がっているんじゃないか? とか、勝手なことを思ったのだけど、あっさり「そんなものないです」といい切られた。


 でも彼は最初私たちの世界に居たのだ。

 間違いなく。

 

 そして、人攫いをしたのだ。間違って普通過ぎる私を。絶対に何か隠しているに違いない。私はそう思っているのに……。


 扉の鍵は全てルイさんが管理している。私は絶対に触らせてはもらえない。


「貴方がもう少し何かの役に立つような落人だったら良かったのに、僕の見る目が悪かったとはいえ……」


 また、この愚痴。

 この人、最初本気で私を売りさばくつもりだった。この落人ブーム? にのっとって、絶対受けると思ったらしい。


 それも間違いだ。


 大体、他の落人仲間に聞いたところによれば、世界的に客人として受け入れられるはずなのに……みんなそんな感じだった話を聞かせてもらったのに、ここだけ治外法権だった。自分の運のなさに泣ける。


 私だって、落ちたのが、いや攫われた(こっちが正解)のがここじゃなかったら、幸せに暮らしていたかもしれないというのに。

 私だって普通に動物が好きだ。ふわふわでつやつやでぽふっと毛皮に顔を埋めたくなるくらいに好きだ。好きだけど……。


 ちらりと前の人を見る。


 初見以来ルイさんはうさぎには戻らない。耳はしょっちゅうでてるけど。歩幅が全然違うから不便ならしい。それは分からなくもないが……。


「憂鬱な気分になるので溜息を吐かないで下さい」


 誰のせいだと思っているんだ。

 私はワザとらしく溜息を重ねた。




「今日はね、リナさんに会ったの。見目麗しく素敵な女王様っぷりだったのよ。それにね、館主様も素敵な方でね」


 上司の不満の捌け口は私かもしれないが、私の不満の捌け口は明日の社員を育成するこの一角だった。ここでは今十二人(匹)のチビうさちゃんたちが人型になる練習をしていたり勉強をしている。

 拙い変身振りが物凄く可愛らしいのだ。時々人面犬ならぬ、人面兎になるのはどうかと思うけど愛嬌ということで。良しだ。


「大体、ルイさんは鬼なんだよ。私をなんだと思ってるの? 勝手に攫った上にこき使ってさ、そりゃ、私は目新しいような特技も趣味もないよ? 各国でもいらないっていわれたよ? ていうか、誰も要らないってどういうこと?」


 私はいっていくあてのない愚痴を、ちびっ子たちの世話役に宛てられているフィズにうだうだと膝を抱えて愚痴る。

 フィズは日々子どもたちの相手をしていることもあってか、とても優しくて可愛くて私にも良くしてくれる。毛足の長い茶色の垂れた長い耳の根元にはピンクのリボンを飾ってツインテールに見えるし、ふわりとしたメイド服も良く似合っている。


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