第八話
翌日、私は早くから支度を整えて町に出た。
結局どうであったとしても、私はあの屋敷を出てしまった身だし―― 帰る方法は私には分からないし、あのうさぎが迎えに来るとは思わない。来て欲しいわけじゃないけど。うん ――いつまでもレヴィアン様のお屋敷に邪魔をしているわけにも行かない。とりあえずは住み込みで出来る職探しをしなくては。
日が傾くくらいまで、足が棒のように感じるくらいまでは頑張ったけれど一日くらいで成果は出なくて私はがっくりと屋敷に戻った。
口利きをしてくれるという話を無碍にするんじゃなかったかなと少し思ったものの、屋敷に滞在させてもらっているだけでも贅沢なのに、そんな我侭まではやはり無理だ。
一応今日の報告をさせてもらったほうが良いかとレヴィアン様の部屋を目指すと扉の両脇にルゥさんとライさんが立っていた。ということは誰かが来ているということだろう。来客中ならあとにしますと踵を返そうとするとルゥさんに首根っこを掴まれた。
私の首根っこって掴みやすくできているのだろうか?
なんですか? と仰ぎ見ると小声で「陰険うさぎ」と扉を示しながら口にした。私はその言葉に身体を強張らせたあとじたばたと暴れる。
―― ……逃げなくては!
本能的にそう思ったのだ。それなのに、ルゥさんは放してはくれなくて、こともあろうかライさんは部屋をノックして扉を開けると「ユーナさんが戻りました」と告げやがった。
こうなっては後に引けないので、私は「只今戻りました」と頭を下げおずおずと室内に入って、怖くて見れないので訪問客は見ないようにして壁沿いに、奥側に座っていたレヴィアン様とななさんのほうへと逃げた。
今まで扉の外側に居たルゥさんとライさんも室内に入り内側に立った。
「お帰り。仕事は見付かったかな?」
穏やかで明るい調子のレヴィアン様の声に私は首を振った。膝が緊張と疲れで少し笑ってしまっている。
「今、ルイ殿とお話をしていたのだが」
そう振られて私は恐る恐る顔を上げた。
―― ……ひぃ!
怒ってる怒ってるよあれは確実に怒ってるよ。
どうしよう、どの辺に怒ってるんだろう? やっぱり、鍵を勝手に使ったことかな?
そうだよね。そのあとほったらかしにしちゃったし……いや、でもあれは、もとはルイさんが落としていたのが悪いのであって、私が悪いんじゃ、決して
「レヴィアン様。出来ればユーナと二人で話をさせていただきたいのですが」
―― やーめーてー!
悲鳴を上げそうな私の声が聞こえたのかどうか分からないがレヴィアン様の答えはノーだった。